放課後の呼び出しはいつになっても、止まらない。ありがたき迷惑だよね。本当に。

『あの…』

平「なに」

『好きです』

平「ありがと...」

『彼女いるんですよね...?』

平「いるけど」

『キスで諦めていいですか?』

平「はっ?っ...」

『気持ち、聞いてくれてありがとうこざいます』


いつもこれ。キスで全員済ませる。
所詮それだけの気持ちなんだよ。キスで忘れる。
本当に好きだったら、こんなことしねーよ。

キスされた唇に触れる。

どんなに可愛くてもドキドキしねーし...。
それに相手に対しても無感情だから。

私への好意が無くなればそれでいい。

とその時は思っていた...。

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教室に帰ると理佐が待っててくれていた。
理佐の顔を見るとわかる。

拗ねてるし、なんか怒ってんだけど。

平「理佐?怒ってんの?」

顔を除けば、顔を逸らされた。

理「...帰るよ」

平「やっぱ怒ってんじゃん」

理「毎日呼び出されて、待たされる私の気持ちぐらい分かってよバカ」

平「...ごめん、でもそうしないと諦めてくれないから。てか、顔に出すぎだから笑」


ちょっと可愛くて、理佐の頭を優しく撫でる。
やめてーなんて言うけど、嬉しそうな顔してる。

顔は素直なんだよね。

理「好きだから仕方ないでしょ」

平「...明日雨かな」

今日はやたらと口も素直。

理「もう!帰るよ!!」

平「はいはい」

いつのものように2人で仲良く帰って、過ごせるかと思ってたら大間違いだった。私が油断していたせいで、大変な事になってしまった。

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今日は昼休みからの呼び出し...。

呼び出された場所は音楽室。
吹奏楽部の子かな?少し待っていると、清楚な女の子がきた。告白か。まぁ、断るけど。

『...キスで忘れさせてください』

平「いや、もうそれはやめて欲しい」

もう、はっきり言おう。
こんなことしてたら私がただの最悪な人だ。
理佐に黙ってこんなことするのはダメだ。

『噂で流れてますよ?平手先輩に告白したら断られるけどキスはさせてくれるって』

平「は?そんな噂流れてんの?」

『はい。だから、』

平「待っ...、」

相手からいつも無理矢理キスしてくる。
だから、今までそうやってきたから、意味のわからない噂が流れたのかな。
自分からは絶対しないし、浮気じゃない。

勝手にキスして勝手に音楽室から出て行った女の子を見もせずに、ピアノのイスに座る。

なんだか落ち着かなくてとりあえず、ピアノを弾いていると扉が開いた。

そこには...。

平「...あかねん」

茜「てっちゃん、顔が険しいよ?」

平「...ちょっとね」

菅「ピアノの音がしたから来てみれば、てちだったのね。また、告白?」

平「まぁ...そんなとこ」

あかねんとゆっかーは高校に入ってからずっと同じクラスで仲がいい。

あかねんはテニス部でもエースで学年でも足が速いけど、体育祭となると軍曹。

ゆっかーは副会長で趣味は乗馬。いつでもどこでも、馬のグッズを身につけてて、ある意味面白い人。っていうか、ポンコツなお嬢様。

この2人は有名なカップルでもある。

茜「理佐と付き合ってるの知ってて、なんで告白するんだろうね?」

菅「考えたくないけど、キス目当て?」

平「分かんないけど...、みんなそんなんで自分の気持ちを忘れようとしているから、キス目当てでもおかしくない」

茜「流されるのも程々にしなさい、バカ」

茜が一発友梨奈にデコピンする。

平「いたっ!」

茜「理佐にはバレてないの?」

平「バレてない...」

菅「バレたらめんどくさい事になるよ?」

平「でも1回だけヤキモチ妬かせたかったけど、それはさすがにやり過ぎかなーって」

茜「てっちゃんらしいけど、結局どーするの?」

平「でも理佐だって、私に何も言わずに告白されている事を他の人から聞くんだよね」

菅「え?そうなの?」

平「だから...」

それでもダメよ。と茜は友梨奈に言った。
子供を叱るかのように...。

茜「理佐の事は本当に好きなの?」

平「いきなり...、なんだよ」

茜がいきなり、声も顔も真面目になった。
一体何を言っているんだよ...。

茜「もー、今回は本気だと思ったんだけどね。今までは何股もしてたからさ、今回は珍しく付き合ってるのは理佐だけでしょ?」

平「うん...」

言わてみれば、一人の人を好きでいるのは初めてだった。こんなに長く好きでいるのを...。

菅「てち、まだ自分の気持ちとちゃんと向き合ってないんだと思うよ?だから理佐をこれからも好きでいられるかどうか、ちゃんと考えてね」

平「...」

ゆっかーの言葉が何故か心に響いた。

茜「もうー世話が焼ける赤ちゃんね!!」

菅「いつでも私達に相談していいからね」

とお姉さん的存在の2人は友梨奈の頭を撫でたり、抱きしめてあげてたりした。

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家に帰宅し、ベッドに仰向けになる。

あの二人に言われたことを振り返る。

平「好きでいれるかどうか...か」

今まで何人ものの人と付き合ってきたけど、それでも恋っていうものがわからなかった。

でも、理佐に出会えて付き合うようになって、何故か二股を平気でするような自分が理佐だけを好きでいれてここまで付き合っているのは初めてだった。だから、きっと私は...。


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イケメンで可愛くてちょっとチャラくてダンスと歌が上手いので有名なてちと付き合って、1ヶ月が経った。体育祭の紅白選抜リレーで一緒のチームになって、仲良くなった。
ダニやふーちゃんにやめときなって付き合うことをすごい反対されたけど、てちの優しさやくしゃっと笑う笑顔に惹かれて付き合うことになった。

それから、てちはオダナナとふーちゃんとかと今では物凄く仲良くてよく遊んでいるらしい。

それにてちから告白されたけど、今思い出せばちょっと可愛いかったなー笑

━━━━━━━ 回想 ━━━━━━━━

平「理佐ー」

理「なに?」

平「好き」

理「...いきなり、何を言い出すのっ...」

平「ね、付き合って。私じゃダメ?」

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うん...チャラいけど可愛いかった。
最初は、この人すぐ浮気するんじゃないかなって思ってたし警戒してたけど、そんな事は全然なくて私に優しくしてくれるし、2人の時間も作ってくれるし、そんなてちに惹かれていった。

昼休み、トイレに行って帰ると、ダニとふーちゃんがコソコソ話していた。
2人に近づくと、焦るように話を終わらした。

理「えっ、どうしたの?」

織「いや...なんでもない!」

冬「あ、アイス、食べたいなって話してて」

理「怪しい、何か隠してるでしょ!!」



2人のおどおどした感じを見ると、私に言いたくないことなのはわかるけど、それでも問い詰めると...。

冬「噂なんだけど...てち、モテるじゃん?」

理「うん」

冬「告白されて、断ってるみたいなんだけど...キスされてるらしいの」

理「えっ...」

ふーちゃんとダニは「ごめん、理佐に聞かせたくなかったんだけど...」って言ってて...。
大丈夫って答えたけど。

胸が痛くて...苦しかった。

ズキズキするような痛みで勝手に涙が出る。

なんで...、こんなにも苦しいの?

冬「理佐」

理「...な、に?」

背中をよしよししてくれるふーちゃんが、更に私の心を締め付けた。

冬「てちはやめたほうがいい。理佐にはいっぱい愛される恋愛をしてほしい。私が見てる限りではてちは本気になってるとは思えない」

理「...でもっ」

ダニ「てちは今でも、大好きな友達だよ?でも、うちら的にはてちと付き合うより友達の方がいい気がするんだ...こういう言い方でごめんね」

理「...ううん、二人ともありがと」

放課後、てちに話したいことがあったから教室で待っていたんだけどなかなか来なくて学校内を探して見る。

すると、空き部屋に女の子が居て告白された後、キスをされていた。

やっぱ本当なんだね。

でも、なんで拒否しないの?

胸の痛みに我慢できなくて教室まで走って荷物を取りに行き、そのまま家へ帰った。


次の日の昼休み。
ダニとふーちゃんとお弁当を食べているとてちが教室に来た。

周りの子たちは、やっぱかっこいいねとか遊ばれてもいいとか...適当なことを言っている。

平「理佐...、昨日なんで...」

理「...」

昨日話してないだけなのに、何故か長い間話してない感じがして、涙が出てきそう...。

平「理佐...」

きっと私が何かをしたに違いない。
だって、目を合わせてくれないんだ...。

理「キスって浮気じゃないの?」

平「...え」

理「てちの浮気ってどこからなの...?」

思い切って、言ってみた。
てちの顔を見てみるとやっぱり苦しそうだった。

ねぇ...、やだよ。そんな顔しないで。

平「理佐...、なんでっ...」

理「ちょっと2人で話そう...」


てちの腕をひいて屋上に向かう。
段差に座りてちを見ると、なにか言いたそうな顔で私の目を見ずに、地面だけを見ている。

平「理佐、言いたいことがあるなら言って」

理「昨日の放課後てちが帰ってくるの遅いから校内をうろうろしてたら、キスしてたとこを見た」

平「それは...、向こうから」

理「...浮気じゃないの?」

平「私からはしてない」

理「そうかもしれない。けど...、私は嫌だった!!噂、聞いたけど...、1回じゃないでしょ」

平「...」

全部正論だよ。何も言い返せない。

理「私は、愛されたいし愛したいの。だからさ...、別れよう...、てち」

平「っ...」

理「今までありがとう...」

自分から告げた別れ。やっぱり止めてくれなかった。屋上から教室に戻る。

ダニとふーちゃんが心配そうに駆け寄って来てくれたけど、でも...やっぱ。

織「理佐、大丈夫?」

理「ふふっ...、別れた!だから大丈夫!」

そんなの嘘。

冬「無理して笑って誤魔化さないで。もう、私達の前ぐらい泣いたっていいんだから」

てちが言うように顔は素直なんだよね。

理「...っ、別れたくないっ...」

ふーちゃんがぎゅーって抱きしめてくれる。
今考えたら、付き合ってるのに片思いのような恋だった。


でも...本当に大好きだった。


別れようって言ったのは自分のくせに、なんか胸が苦しくて...、涙が止まらなかった。