愛「...さて、聞かせてもらおうか!」
平「...っ、なんだよ。この人数は!」
愛佳だけだと思っていたのに、何故か友香と梨加ちゃんと若月先輩と橋本先輩までいる。
今、食堂の外に居る。
天気も良くて、暖かい。
愛「まーまー...とりあえず、話せ」
平「...」
茜「...友梨奈?」
平「大丈夫だよ、茜」
茜が心配してくれたのか、机に下で手を握ってくれた。それを握り返す。
茜「う、うん」
平「...家出した」
愛「え」
若「えっ...ねるちゃんは?」
平「...もう、どうでもいい」
本当の事だ。全てを壊したんだから。
橋「あんなに、好きだったのに...」
平「おかしいと感じ始めたのは、半年前。ねるは私に「好き」も言ってくれないし、求めてくれなくなった」
茜「...」
菅「半年間...ずっと?」
平「そう...、半年も私は我慢した。ねるの偽善者ぶる姿に嘘に耐えて付き合ってきた。それでも...好きだったんだ。外の世界に連れ出してくれてさ、バスケが出来るようになったのも、ねるのおかげ...」
愛「てち...」
平「その全てを壊したのは、ねるなんだ。もう、私はねるの事は好きじゃない」
なんでだろう。凄く気持ちが楽になった気がする。今まで溜めてきた事を吐き出したからかな。
若「...うん、それで正解だよ」
橋「私もてちの立場だったら、そう選択するよ。だって...浮気されて、それでも自分の愛人ぶるんでしょ?そんなの耐えられっこないよ」
梨「...友梨奈ちゃんは今はどんな気持ち?」
平「私は...、もう誰にも渡したくないし、離したくないぐらい、好きな人がいる」
菅「...ふふ、やっと答えを見つけ出したんだね」
愛「で?で?好きな人は誰?!」
平「っ...言わねーよ!」
橋「...あっ...なるほどね。頑張ってよ」
てちの目が前よりもねるの時よりも優しい。
凄く、キラキラしている。
もう、一目瞭然。
茜ちゃんだな。
平「...痛っ、飛鳥先輩のお迎えですか?」
私の背中をぶっ叩いて、食堂の中に入る橋本先輩。きっと、彼女のお迎えだろうと思った。
橋「そーだよ、じゃ」
平「...」
若「さて...私も玲香の所行ってくるわー」
菅「教室に戻るね!」
愛「じゃあ、私達は教室に戻るわ」
平「一気に消えたし」
と、次々に聞くだけ聞いた人たちは中に入った。
本当に、自由な奴らだなぁ...。
それでも、大好きな...仲間だけど。
茜「...友梨奈、本当に...大丈夫?」
平「心配性だな、茜は」
茜「だって...」
平「もう、大丈夫だよ。何故大丈夫かわかる?」
茜「分かんない」
平「それはね...」
人目がつかない所に茜を連れていく。そして、私は茜の腕を自分の方に引っ張って、抱き寄せる。
平「茜が...好きだから」
茜「え...」
平「茜が私を拾ってくれたから...一緒に居るだけで、今までにない暖かさを感じるんだ」
茜「...っ」
平「くしゃっと笑った顔、負けず嫌い、誰よりも頑張っている所...子供っぽい所...全部含めて、私は...茜が大好き...好きすぎるんだ」
自分から離して、頬に優しく触れる。
手に冷たい水が流れてきたと思うと、茜は泣いていた。意外と泣き虫だな...。
茜「...嘘っ...」
平「嘘な訳ねーだろ...、私にはもう茜しか見えない...」
茜「...本当に?」
平「本当の本当...」
茜「私も...友梨奈と暮らし始めてから、ずっと好きだった。恋人と別れて、1年経って...でも、まだ恋愛したくないって思ってたのに!友梨奈のせいだからねっ...!」
平「...私のせいなんだ(笑)」
茜「本当に私でいいの...?ねるのことは?」
平「茜じゃなきゃダメ。それに、ねるの事はもうとっくの前に好きじゃなくなってる」
不安そうに揺れている瞳。
余計...守りたくなる。
茜「信じていい?」
平「これで信じて...」
茜の唇を少し強引に奪う。
茜「っ...」
平「私の...彼女になってくれませんか?」
茜「..はいっ」
平「うわっ...」
茜が思いっきり抱きついてきて、強く抱き締められてる。あー...好きだな。可愛いなー。
平「茜、私の傍から離れないで...」
もう、あんな思いはしたくない。
茜「離れないよ...何があっても...ずっと、傍に居るから、だから安心して?」
平「っ...、うん」
やばい。泣きそう。でも...、泣かない。
今は、まだ...序盤なんだから。
まだ、やることはたくさんある。
茜「...あのさっ...」
平「ん?」
茜「指輪買いたい...」
平「...うん、買おう」
茜「やったー!」
平「ぷっ...嬉しそうじゃん(笑)」
茜「憧れてたもん!ペアリングとか!」
平「じゃあ、このままサボっちゃおう」
茜「え...ダメだよ!もうすぐテストだし...」
平「まぁーね?でも、なんとかなる」
茜「えー...」
平「ふふ、案外楽しいよ?サボるの」
茜「もう!今日だけだよ?」
平「よし!じゃあ...行くかっ!」
茜の手を強く優しく...離れないように握る。
平「...っ」
なーんか...顔が体が熱い。気のせいか...。
教室に戻って、荷物を取るついでに。
平「チャラ王、茜とデートしてくるわ」
愛「え!?待って...え?!デート?!」
菅「付き合ってるの?!」
平「そう(笑)」
二人ともナイスリアクション。
愛「いつから?」
平「んー...教えなーい!」
菅「でも...」
愛・菅「「めっちゃーお似合い!!」」
平「でしょ?茜は私の嫁だから」
茜「ちょっ...///」
愛「うわ、どこで...そんな言葉を(笑)」
菅「めっちゃ好きじゃん」
平「うん、じゃ...行ってくるわー」
愛「おー、楽しんでこい!」
茜「...公開しまくるじゃん!」
平「いたっ!」
駐車場まで歩いていると、脇腹に軽いパンチをされた。いや、痛くはないけども...。
平「ダメなの?」
茜「...それは...でもっ、恥ずかしいじゃん」
平「ぷっ...(笑)」
茜「なんで笑うの!」
平「ごめんごめん、可愛いなーって(笑)」
茜「バカっ...」
平「うん、彼女バカですから(ニヤッ)」
茜「っ!!///早く行こっ!」
本当っ、色んな表情するから心臓が休む暇もないよ。
平「はい」
平日の午後は、あまり人が多くない。
だから、結構回れる。
茜「友梨奈っ!んっ!」
平「ん?」
いきなり手を差し出してきた。
茜「...もういいもんっ!」
平「...ん?...あ、ごめん。はい」
茜「...」
平「アイス奢るから、拗ねんなよー」
頭をぐしゃぐしゃに撫でてやると、「やめてー」とか言いながらもめっちゃ嬉しそうな顔。
平「さっ、行こっか!」
茜「うん!」
109に入り、色んな店を回って満喫した二人はようやくアクセサリー店へ。
平「...指輪、選ぶか」
やばい、今までにないぐらい緊張する。
茜「う...うん」
どうしよう...指輪なんて、初めてだからっ...。
あぁ、心臓の音...静まれぇー!
平「んー...」
どれもいいんだよなー。
別に、値段は気にしないけどー。
んーー...、茜か。
平「...あ」
私の目に止まったのは、捻れがあって黒と白にシルバーの色が入った指輪だった。
黒が私で白が茜。
茜「?」
平「茜、これ...どうかな?」
茜「...うん、めっちゃ綺麗!」
平「じゃあ...これにする?」
目がキラキラしてる(笑)
茜「うん!」
平「...刻印は...お互いに向けた言葉にしない?」
茜「...じゃあ、嵌めるまで内緒ね?」
平「うん」
店員さんに刻印を伝えて、待っている間に夕食を済ませて、指輪を受け取り会計を済ませる。
店員さんに箱だけ貰って、ポケットに入れる。
どこで、渡そうか。
平「...」
どうしよう。どこで渡す?
え...うーん...。
けやき坂...イルミネーション...。
平「茜、ちょっと行きたい所ある!」
茜「え?!」
平「捕まってろよ!」
バイクを飛ばして、けやき坂に向かう。
茜「ちょ!!」
平「...」
きっと、これが私の最後の告...じゃないか(笑)
来年から同性でも結婚できるようになったし...。
でも、想いを伝えるのなら...この場所しかねぇ。
平「着いた」
茜「...もう、どこにっ...って...」
平「綺麗でしょ?私のお気に入りでもあるんだ」
その絶景に目を奪われた茜を見ると、私は逆に茜に目を奪われた。横顔、綺麗だなぁ...。
まつ毛長いし...肌綺麗...。
柴犬みたいな顔立ちだけど、美人なんだよな。
って、私なに考えてんだ。バカやろう。
よし、行くぞ!平手友梨奈!
平「あ...茜」
茜「なぁに?」
平「そのさ、私を拾ってくれてありがとう」
こんな事を言うのが恥ずかしくて、目をキョロキョロしてしまう友梨奈。
茜「え?」
平「まぁ...さっきと同じような事言うかもしんねーけど、茜なしの人生なんて無理。茜に出会えて、私の世界がカラフルに色付いた気がするし...その負けず嫌いな所がちょっと伝染したかもしんない(笑)」
茜「...っ」
平「まぁ、その...私は茜の事が好きです」
手をぎゅっと握って、顔を伺うと...ほら(笑)
また泣いてるよ。
平「...茜は?私の事、好き?」
茜「...そんなの、大好きに決まってんじゃん」
平「ふふっ、そっか...。じゃあ...嵌めていい?」
茜「うんっ...」
平「...」
やばい。手が震える。ちょ、やべぇ(笑)
落ち着け、私。
平「...ふぅ...できたぁ」
茜「震えすぎ(笑)」
平「うるせー!...緊張するんだよっ」
茜「じゃあ、私ね?」
平「...うん」
茜「...ほ、本当だ」
平「だろー?(笑)」
私より、めっちゃ震えていたよ。
でも、必死に嵌めようとする姿も愛しい。
私、重症すぎる...。
平「茜、っ...」
茜の顎をくいっと持ち上げて、唇を奪う。
茜「...っな!」
いきなり、唇を奪われて目の前には意地悪な顔でニヤッと笑って...。
平「へへっ、これで私のもんだな?」
茜を抱きしめて、首筋に顔を埋める。
茜「バカ///」
本当にバカ!これじゃあ、私が持たないよ!
茜「友梨奈」
友梨奈の顔を両手で挟んで、目を合わせる。
ふふ、可愛いなぁ。
平「へ?」
茜「私はずっと、傍に居るよ。離れたりなんかしない。誰よりも愛している自信あるし!」
平「っ...、ここで負けず嫌いを発揮されてもなぁー?(笑)」
茜「うるさいなぁ!///」
平「...ねぇ、茜。いつかは...ちゃんと本当の告白をするからさ...今は恋人として、よろしくな?」
茜「うん、よろしくお願いします」
平「さぁ、帰ろう」
私は、幸せになっていいんだって...茜が教えてくれた。きっと、茜が私の真の運命の人なんだ。
どこまでも二人で乗り越えられる気がする。
私は私でいられる。
強くなれる気がする。
高校2年の時までは、喧嘩とかもしてたし...授業もよくサボってた。母さんも父さんも私を愛してくれていないから、喧嘩で感情を押し殺していた。
けど、その必要はもうない。
私は、茜のために全身全霊を尽くす。
この命を捧げることだって、できる。
今は、片付けなければならないことがある。
それまでは、茜を守らないといけない。
少し...少しだけ胸騒ぎがするんだ。
続く。