別れは突然に… 5 | 気紛れな心の声

気紛れな心の声

気がついたこと 不意に感じたこと とりあえず残してみようって^^…最近は小説化しているけれど、私の書き方が上手くなるように感想くださいね

(これまでの『別突』は…)

裁判所からの呼び出しが届いた謙也は、恋人…不倫相手に連絡を取ってみることにするが繋がらない。

失業手当を目的に出して貰った離職票の解雇は実質上の物として扱われ、次に行く予定になっていた会社からも縁がなかったことにとされる現実が、謙哉を困惑の渦に押し込んでいく。


scene5

謙也はベッドに寝転ぶと溜息を吐いた。

どうやら全てのことは悪い方に向かって流れている。それだけは判った。

勝村涼子と出会ったのは訪問先だった。得に意図したわけでもなく、割り当てられた訪問地区の一軒に勝村の家があっただけだった。

十軒声を掛けて四軒顔を出してくれたら充分。後は話術で敷地内に招き入れてもらうだけだった。

売る物はソーラーパネル。使う用途は色々だが、発電と湯沸しが有名な処だ。そこに付帯するモノを付けて金額を上げるのが常套手段だが、謙也はあえて付帯するモノはつけないようにしていた。発電の為のパネルよりも、湯沸しのパネルを薦めたりするのは、他の営業マンがあまりしないからだった。

独自の目線、それが売り文句でもあった。エコといわれる時代において興味を誘うにはそういう手法も必要だった。それだけだった。


いつもと同じ。玄関先でチャイムを押す。

ピンポン♪

誰も出てこない。だからと言って落ち込むようなことは無い。それが当たり前だ。

留守かもしれないし、拒否されているのかもしれない。そんな事をいちいち考えていたら訪販などやっていられるわけもない。

(次に…)

「何か?」

振り返った謙也に女が声を掛けた。何処となく気の強そうな目線にタジロきながら、謙也はぺこりと頭を下げた。

「いえ、太陽光発電とかの営業回りです」

「…そうなんだ。一応付いていないのを確認して回っているの?」

「まぁ、一応。便利なことに屋根が見えればわかりますからね」

「ふぅ~ん、暇つぶし程度でよかったら話を訊くけど?」

「よろしいんですか?」

「まぁ、ひまだから」

涼子は、そう言ってクスクスと笑いながら門を開け、謙也を家の中に招き入れた。

あっけらかんとした感じで、何処にも警戒感を見せずに、当たり前のように玄関ドアを開けた。

「話、訊かなくていいのなら、帰ってね」

「あっ、いえ、少しだけでも」

「じゃあ、どうぞ」

涼子はそう言って笑い、謙也をリビングへと案内してくれた。

中流家庭といったところだろうか。それほど新しい家ではないが綺麗に整理がされている。真新しいのはキッチン周りくらいだろう。いわゆるリフォーム物件だろう。

謙也はテーブルの席を薦められると座り、部屋の中を物色するように見渡した。

キッチンで夜間にお茶を入れる涼子と目が合った。

リビングに隣接する部屋にはベビーベッドが置かれ、朝の戦争のあとがそこにはあった。

「どうぞ」

「あっ、気をつかわずに」

「まぁ、あたしも飲むしね」

「これ資料ですが」と謙也はパンフレットをテーブルの上に置くようにして涼子に差し出した。

「あんまりわかんないんだよね」

「一応説明させていただいて、いいかな?って思っていただいたら旦那様に口添えをしていただけたらご説明には伺いますので」

「……それって、金は妻、機械関係の判断は旦那?という事?」

「いえ、そう言うわけでは」

「間違えていないけどね。契約は私でもできるよ。そんな事で怒る人でもないしね」

「旦那さん、優しいんだ」

「どうかな、それとは違うと思うけど。ただ、大きな買物は勝手にすると夫婦喧嘩の火種になるから」

「それはそうですね…(落せたら行けるか?)」

そんな思いが謙也の頭に過った。

「そうだ、もう少し時間ありますか?」

「えっ?」

「副業で、化粧品も扱っているんだけど」

「必要かな?」

「そうだね、俺的には好みだけど…あっ」

「えっ?」

「いや、失礼。若さに任せて手入れを手を抜くと後で後悔するから」

謙也は、そう言って立ち上がると「車から荷物をとってくるよ」と声をかけた。