これも恋物語… 第3幕 62 | 気紛れな心の声

気紛れな心の声

気がついたこと 不意に感じたこと とりあえず残してみようって^^…最近は小説化しているけれど、私の書き方が上手くなるように感想くださいね

第21話

亮太は、ダブルデートの行き先が墓地と聞いて少々引き気味になっていた。が、店から一真が向かう墓地までは徒歩5分程度の距離にあり、道々ウインドウショッピングを展開する女性人にとっては比較的早々と辿り着く距離にあったが為に「やっぱり遠慮します」の一言がいえないままに4人は墓地へと着いた。

「誰のお墓ですか?」

「そこで待っていていいぜ…すぐだし」

一真は、墓地入り口にあるテラスのような場所を指差しながら亮太に言った。全く無関係の人の墓参りをするのは、するほうも少なからずの抵抗があるだろうという配慮のつもりだった。

「ここまで来て?」

「…俺の…追いかけてきた存在さ…」

一真は、そう言うと墓地へと進んだ。高台と言えるかどうかは別にして、見晴らしのいい場所に目的のお墓はあった。

(!…来ていたのか)

一真は、3人が手を合わせいるお墓に足を向けた。

「どんな女性だったの?」

栞は、一真の顔を覗き込みながら聞いた。つれてくる以上は、それなりに伝える事があって連れてきてくれているのだろう。できれば気持ちよく挨拶をしたいし、という思いから栞は、一真に尋ねた。一真にとってそれなりに意味がある存在、その事を知っておくのは、これから一緒に過ごす時の中で必要不可欠なのだろう。その女性が、一真の心のどれだけを占めているのかは解らないが、それを受け入れる勇気くらいは持ち合わせている。少なくとも、いまは、自分が一真の女なのだから。

「男だよ…」

「えっ?」

「もっと先で色々と話をする事があるかもしれない…でも、俺の活きかたに最も影響を与えてくれた人の一人がここにいる…命は、消えた瞬間から意味がなくなるのかもしれない…でも、記憶は、関わった人が忘れない限り、思い出し続けるかぎり、その人を消し去ったりはしない…他の誰かが、ではなくて…俺自身がこの人の事を忘れない…少なくとも、この日だけは忘れる事はない…他の日にあまり思いださなくてもさ」

「……素敵な人だった?」

「どうかな…全てを知る事はできないからさ…俺の知っている一面は、凄い人だった…」

「凄い人か…憧れ?」

「憧れもあるかな…」

一真は、不意に足を止め、墓石に向かっていた女性に会釈をした。

「一真…来てくれたんだ…」

(あれ…あれは…)

由美の横で顔を上げたのは、一真も知っている人物だった。如月涼子。

「一真くん」

「あれ?どうして…」

「兄の墓なの」

「みなぎさんの?」

「?」

涼子は、慌てて由美を見た。

「涼子と一真は知り合い?」

「えっ…ん、大学の後輩で、主人の部下」

「そうなんだ…狭いよね…世間って」

「ですね…」

一真は、栞の肩を抱き寄せながら歩を進めた。

「そちらは?」

「みなぎさんに報告しようと思った恋人」

「そう…安藤由美です…よろしくね」

由美は、嬉しそうに微笑みながら会釈をした。それにつられるように未来も立ち上がり、栞に頭を下げた。

「あっ、上条栞です」