Runner 66 | 気紛れな心の声

気紛れな心の声

気がついたこと 不意に感じたこと とりあえず残してみようって^^…最近は小説化しているけれど、私の書き方が上手くなるように感想くださいね

結崎は、非常な行動を他人には見せない。それは、旗から見ればクリーンなイメージになるのかもしれない。その右腕だった男が常にダーティな決断を下してきたが、それが結崎の影武者である事を知る者は少ない。

もしも、結崎だったのならば、裕樹たちが、この倉庫に足を踏み入れた刹那、吹き飛ばしているだろう。自分の部下の命などコマに過ぎない。全ては、秩序という名の暴力の下で統治せざるをえない世界なのだから。

結崎だったのなら、工藤は、ただのコマだろう。中心におけば、対立グループの幾つかは勘違いをして、トップを繰り出してくるだろう。相手のトップがそこにいる。狙撃程度の事は視野に入れても爆破するような事ないだろう。トップを裏切ったところで組織がついてくる保証は何処にもない。組織を引き連れるだけのバイタリティがあれば、別の組織を組み上げることができるのだから。

たぶんただの小遣い稼ぎだったはずだ。いつの間にか引かれたレールの上で、与えられた力の下で、自分の立場を錯覚してきた。組織のトップとして、相手に会い、相手を見定めて、相手を飲み込む。その程度の計画だったのかもしれない。簡単なことだった。絶対的な人数の違い、与える事のできる仕事、それだけで人は転がる予定だった。それで、部下達は見直すだろう。

だが、工藤は知らない。結崎が残したものは、仕事のマニュアル以外にも存在する事を。

(ようやくひとつの借りが返せる)と、裕樹は、そう思いながら、足を進めた。

先に倉庫内に入っていることで工藤にはゆとりがある。たぶん、数え切れないほどの部下が隠れているだろう。金を渡して、物を持って逃げられることを避けるためにも。

「時間通りに来て、文句を言われると思わなかった、な…」

裕樹は、周囲の視線を確認しながら工藤に近付いた。

「で、ブツは…」

「要求は、2つだったな…(穴だらけか…素人もいいところだな…)」

「ああ…」

裕樹は、工藤に微笑みかけると、首をかしげ、自分が入ってきた扉が見えるようにした。そこには夕凪が立っていた。

「もうひとつは、それか…」

「ああ…」と、裕樹は、アタッシュケースを翳した。

「本物という保障は?」

「(そして、本物のお飾りか……)……ないな…」

「何?」

「交渉は決裂か…」と、溜息をつく。

裕樹は、ランナーではあるが、交渉人としても動く事がある。ランナーをメインにしている関係であまり知られていないが、駆け引きに関しては、素人に毛が生えた程度の玄人には劣らない。と、言うよりも、交渉人として発言するよりも、逃がし屋としての発言に過ぎない。つまりは、隙を作り出し、自分達の安全を作り出すための交渉に過ぎない。

「……まて…」

「商談するのか?」

「ああ…」

「現金だけ……そういう約束だったな…」

「ああ…2億だ…」

工藤は、アタッシュケースを開け、中の現金を見せた。本来は、別の仲間が、真贋をするのだが、今回はそんなメンバーが揃っていない。偽者であろうと、罠であろうと、これを受け取って下がるしかなかった。

「そこにおいて、5メートルほど下がれ…」

「……ちっ」

工藤は、言われるままにアタッシュケースを置くと下がった。全てが終わったら、遠慮なく殺してやる。その思いが滲みでているような怒りの視線が裕樹に向けられていた。


第1話へ

http://hikarinoguchi.ameblo.jp/entry-6b0fb58af32e2be88913b48b10f563ae.html