Runner 63 | 気紛れな心の声

気紛れな心の声

気がついたこと 不意に感じたこと とりあえず残してみようって^^…最近は小説化しているけれど、私の書き方が上手くなるように感想くださいね

ホテルを後にするなり、尾行を始める車が数台。どれも黒塗りの高級車だった。ご丁寧に誰もが似たような格好をしてサングラスをかけている。

「たくっ……お早い登場だこと…(これは……)」

裕樹は、ルームミラーで後ろの様子を確認すると、アクセルを踏み込んだ。多分、与えられた時間は、一杯一杯というところだろう。少しのミスが予定外の時間を作り出すことになる。

「まるで、群青のプランだな…」

「えっ?」

「いや…昔やられた方法に似ているなと思ってさ…」

「そうなんだ…」

「ああ…」

「で、ここにいるって言う事は…勝ったんだよね」

「勝ち負けじゃないけどな」

「でも…」

「……そうか…結崎さんの…で、群青か…」

裕樹は、チッと舌鼓を打つとアクセルを踏み込んだ。心成しか、表情にゆとりがでてきていた。つまるところ、この状況なら問題なく処理ができる。と、言う事だった。どんな綿密に計画された作戦であっても、その流れが読めれば大した問題では無い。

あの時と同じように罠が仕掛けられている。

出る答えはそれほど変わらないだろう。

裕樹は、執拗に迫る黒服の手段をかわしながらGTOを埠頭の外れに止めると、夕凪の手を引くようにして倉庫のひとつに飛び込んだ。できる事はひとつしかない。全ての交渉が終わるまでの間、身の安全を確保するしかなかった。

(それにしても…悪乗りが過ぎるな)

追っ手は、いつの間にか、服装を統一している。黒のスーツ。まるで、テレビの一齣のようにも感じられる。ただ、違うのは、実弾が飛び交っている事くらいだろう。それも明らかに殺傷する為の道具として。

「ねぇ、こんなところにはいって大丈夫なの?」

「あまり大丈夫では無いな…」

「だったら……」

「…市街地で、車の調達が簡単にできるのは、一昔前までだぜ……いまは、そんなに簡単には行かないものさ」

「…そんな事を行っているんじゃンなくて…」

「騒ぐな……答えはすぐに出るさ…」

「えっ?」

「それまで、できれば、体力を温存しておきたい…」

裕樹は、交渉が決裂する事を考えていた。どう考えても、どのカードを見たところでも、自分達に不利であることは変わらない。法治国家そのものが、裏世界との取引に応じるのにはそれ相応のメリットが必要だ。そのメリットの内容で交渉がどちら側に優位に働くかが決まってくる。

「……もう、駄目って事?」

「駄目だと思えば全てが終わる……本当に駄目なのは、自分を諦める事さ」

裕樹は、そう言うと微笑み、夕凪の頭をクシャクシャと撫でた。

「この先に……」

「?」

「工藤が来ている…無論、呼び出したんだけどね」

「えっ…」

「交渉するには、カードが出揃ってこそ……何の因果で、表も裏も引っ張られたのかは知らないけれど…正義という仮面の陰で、『何事も起きなかった』という力も暗躍するものだ…、その上で、俺達がするのは、赤字を出さない為の事……」

「えっ?」

「俺達は、プロだからね…それなりの対価が必要になる…」

(友達だから……助けてくれたんじゃなくて…商売になるから)

夕凪は、自分の浅はかさを呪った。どう考えてもこの倉庫から飛び出して逃げられる状況ではない。だったら、ただの知人の女の為に仲間ごと危険に晒す事なんてない。恋人ならいざ知らず。


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