あゆみ 5 | 気紛れな心の声

気紛れな心の声

気がついたこと 不意に感じたこと とりあえず残してみようって^^…最近は小説化しているけれど、私の書き方が上手くなるように感想くださいね

「おいしい?」

麻奈は、屈託の無い笑みを向けて尋ねた。返ってくる答えはわかっている。でも、聞いた。そこにどんな意図があるのかは健太には解らない。たぶん、理由を言われても解らないだろう。

子供気持ちを理解する。そんな次元ではない。人と人、そんな位でも無い。ただ、ものの見方、感じ方、考え方がずれている。男と女、大人と子供、親と子…相容れる感じ方とそうでは無い感じ方。出される答えは、ひとつでは無い。その出てくる答えの全てを、ひとつひとつ丁寧に解きほぐす作業を、いま、この瞬間にできるかといえば、そうではない。

答えは、何処までも深遠の深みの中にある。

その深遠が、何を示すのかは、きっとその時にならなければならないだろう。だいたい、大人の勝手な思考ほど、子供は難しく考えていないだろう。

「苦い」

「だよね…」

「解っていて聞いたのか」と、健太は苦笑しながら、こげたトーストを口に入れた。

「ん~なんとなく……でもね…」

「?」

「言いたい事は言った方が良いと思うの…」

「…どうして?」

「一緒に暮らすから…」

「……大人の真似事…」

「えっ?」

「ごめんね…」

「?」

「無理しすぎだよね…俺達」

「…?」

「一緒に…って言ったばかりなのに……出来ていないよな」

「?」

麻奈は、健太の顔を覗き込んだ。健太は何を言っているのだろう。何を聞けば良いのかも解らない。何をつたたらいいのだろう。何を話しをすれば良いのだろう。

この人は、本当に味方だろうか。

麻奈は、健太の心の奥を覗き込むかのように真直ぐな目で健太を見つめた。

弥生が死んだ時、会った事もない、叔父や叔母が現れた。お爺さんやお婆さんがなくなった時にも見たことの無い叔父や叔母を退けたのは、一緒に暮らしてきた杉村早苗だった。

その早苗が教えてくれた。「パパ」という存在を。弥生がよく口にした「パパ」という人が存在しているという事を。そして、彼だけが本当の身内だという事を…。他の事は解らない。ただ、事実だけは、かわらない。だから、自分で感じて判断しなさい、と早苗は言った。

「俺には、よく解らない…」

「?」

「弥生が、麻奈に何を見ていたのか…俺に何を求めているのか…きっと、いつまでたっても解らないだろう」

「?」

「一緒に考えていってくれるかな?」

「ん~?…うん」

「一緒に、色々な事を見て、話をして、俺達は、本当の家族になれるかな…?」

「うん」

「そっか…」

屈託の無い笑顔で麻奈は応えてくれた。これ以上無い答えだ。正解はいまはわからない。何処かで、答えに辿り着くだろう。何処かで、答えを見つけるだろう。それでいい。決まった答えは無い。答えは、時の流れの中で変わっていく。それで良いような気がした。


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