Runner 9 | 気紛れな心の声

気紛れな心の声

気がついたこと 不意に感じたこと とりあえず残してみようって^^…最近は小説化しているけれど、私の書き方が上手くなるように感想くださいね

あれは、高校生の頃。確か、3年の春だった。夕凪が通っている高校は、何処にもでも平凡な公立高校だった。前年、東大や京大に合格者が出た事で学校を上げての騒ぎをするほどの平々凡々な学校だった。

学校から駅に向かう道を外れると川原があり、その川原で、野球部やソフトボール部が練習をしている。時々、陸上部も部活動に使っていたような気がする。

友達に誘われて恋心を寄せる男子生徒の部活動の光景を眺めた帰りだった。

駅から数十メートルほど西に寄ったところにある高架下。そこで数人の学生服に囲まれた一人の学生服がいた。それが琢磨裕樹を認識した初めての日だったかもしれない。よくよく考えれば、3年間クラスもずっと一緒だった。時には、横の席に座っていた気もする。

成績優秀、スポーツそれなり、なのに目立たない。影が薄いといえばそこまでなのだろう。

何がどうなっているのか解らないが、囲んでいるのは同じ駅を利用する私立工業高校の生徒。それも腕力に自信ありというタイプばかりに囲まれている。

(あれ…)

高架下に入らずに自転車置き場の脇でしゃがみ込んで泣いているのは、確か生徒会書記を務める2年生だった。

「どうしたの?」

夕凪は、とりあえずハンカチを差し出しながら聞いてみた。

「えっ……先輩…」

夕凪は、学校ではそれなりに目立つ存在だ。ミスコンは無いが、一応内外にファンクラブがある程に有名だった。夕凪が知らなくても相手が知っていると言う事は、結構ざらである。お陰で高校生活に恋人を作る事はできなかったが…。

「何かあったの?」

「わかりません…ただ、足を踏んじゃって…」

「ン…」

「謝ったんだけど…」

「…絡まれて、恋人君が困っていると…」

「えっ…?」

「琢磨さんなら、通りすがりに助けてくれたんですけど…絡まれたんです…」

「……そう…(首を突っ込んで危険な目にあっていると…)」

「先輩…あたし、どうしたら…」

「逃げればいいのに…」

「えっ…?」

「琢磨がボロボロになるところを見たら、琢磨が可愛そうでしょ…」

「………そんな」

「どうみても勝ち目なさそうだけど…」

「………」

「琢磨が、武道の達人でもない限り…」

夕凪は、溜息をつきながら、後輩に手を貸し、駅の方へと向かう事にした。どういう事情があるかは知らないが、首を突っ込んだ以上、解決まで責任を持つのは、男の務めだろう。そこにどんな結果があるかは別として、どんな意図があるかも別として…。

せめて助けられた方にできる事は、やられる様を見ないくらいだろう。

たぶん、相手が一人の時にしゃしゃり出て、大勢に囲まれた。そういうパターンだろう。

自分可愛さに、思量の無い行動をとった結果だ。

ガシャッ。ガシャガシャガシャガシャン。

「えっ…」

勢いよく、自転車置き場に並べられていた自転車が倒れた。派手な喧嘩だ。どちらかといえば一方的に殴られているだけだろうが。

「先輩…」

「解ったわよ……先に連れて行ってあげて…」

夕凪は、友人に頼むと件の場所へと振り返った。