「私は、着替えてきます」と、レスリーが光の肩をポンと叩いた。
「あっ、はい…」
光は、牧師を見送ると空を見上げた。空を見ていると自分の小ささを感じてしまう。
何故、誰にも言わずにここに来たのだろう。
拘っているのは、たぶん、自分なのだろう。結婚を反対された事の抵抗なのだろうか。認めたくないという真情が全くわからないわけではない。だからこそ、その事で文句を言われる事に対して何も言わない。何もいえないし、何も言うつもりもなかった。だから、今回の事も、自分達家族だけだった。でも、今更ながらにしてちっぽけな自分を感じてしまう。
「こんぐらちれーしょん!」
「えっ?」
突然掛かった声に光は声のほうを見た。
男性が、親指をつきたててこっちを見て微笑みかけた。二人揃っているときに声を掛けられるとは聞いていたが一人でも声を掛けてくれるのだ。実にフレンドリーな性格な人種は、お国柄だろう。
「さんきゅー」
光は、ニヤッと笑みを溢して、親指をつきたてて返事をした。
それにしても…光は自分の服装を見た。
純白のタキシード。ミッキー柄のベストに、ミッキー柄の蝶ネクタイ。実に一人でいると恥ずかしい格好である。アメリカに着いたばかりの衣装合わせ、その時、紗智が白を選んだ。スタッフは、それをとても喜んでくれた。日本人は、実に白を着たがらないそうだ。その所為もあってか、用意されているタキシード5セットのうち白は一つだけだった。差別だ~~~という気持ちになった。
昨日。
衣装合わせを終えた光と紗智は、MGMスタジオへと向かった。
ここでは毎夜人気のショーが行われている。ファンタズミックがそれだ。
アメリカの地を踏んだ第一日目のイベントはこれだけだった。台風の都合で…。
フロリダのこの時期は雨期。ファンタズミックは、水と炎を使ったショーの為に風と雨が大敵だ。実にこの日も雨が降り、少し風も出ていた。
結婚式を明日に迎えて少し複雑な気分になった。
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