Runner 16 | 気紛れな心の声

気紛れな心の声

気がついたこと 不意に感じたこと とりあえず残してみようって^^…最近は小説化しているけれど、私の書き方が上手くなるように感想くださいね

「ねぇ…抱いて…」

「……男は、身体が反応するけど…女は、心が大切なんだろう?」

「…莫迦……」

夕凪は、裕樹の胸に頭をトサッとぶつけて泣いた。

裕樹は、夕凪の頭をソッと抱きしめ、落ち着くまでの少しの時間を待った。

「女は……心を埋めたい時にも…抱かれたいの…」

「…男よりは、良い理由だよね…」

「裕樹君が、あたしを嫌いじゃなかったら…」

「……ん、嫌いじゃないよ…」

「莫迦…」

夕凪は、裕樹をベットに押し倒した。

「愛しているよ…って言ってくれないんだ…」

「そんな嘘は無理だよ…」

「……『好きだよ』くらいはいいじゃない…」

「ん……」

「……莫迦…」

夕凪は、そのまま、裕樹の上で吐息を立て始めた。

それが嘘なのか本当なのか、心臓が高鳴りきっている裕樹にはわからなかった。

(どうして……)

どうして、言葉だけの「好き」を口にしないのだろう。それを口にすれば、目の前の女を抱けるのに。据え膳食えば…と、言う言葉が男にはあるだろうに。何故だろう。自分の事を大切に思ってくれているのだろうか。それとも、好きな人との思い出がそれだけ大きいのだろうか。

でも、この人は、どうしてこんな仕事をしているのだろうか。聞いて教えてくれるんだろうか。

(ん…吐息……本当に寝たの?……もう…)

 

「どんな感じ?」

藤代美紗は、パソコンを通じて裕樹の様子を確認している久瀬真一に缶コーヒーを刺し出しながら尋ねた。仕事もひと段落という雰囲気が漂っているが、実際はこの一瞬とも言うべき瞬間が危険に満ちている事を二人は知っていた。

表面上は、全てが解決とも言うべき収束に向かって動いている。実際、あるべきところにあるべきものを戻し、多額の報酬を得ている。あとは、結果を見届けるだけのはずだった。

起きた問題の全てを解決する事は仕事屋の領分ではない。

冷たいかも知れないが、自分達に与えられた仕事以上のことは基本的に行わない。それが暗黙のルールでもあった。まぁ、どんなときにでもTPOに合わせてということは前提だが……。

今回は、イレギュラな仕事だ。言わば降りかかってきた火の粉を払うだけの仕事のはずだった。だから、情報が少ないままに動き、情報を集める羽目になった。と、いっても、報酬的には良い仕事なので文句を言う気も失せるのだが……。その分、訳の解らない危険だけがまだ周囲に漂っている匂いがしていた。

「とりあえずは……問題らしいものはおきていませんよ…」

「そう…」

「ええ…二人が抱き合って寝ている以外は…」

「……そう」

いつまでも受け取らない缶コーヒーを再度指しだしながら美紗は、苦笑を漏らした。依頼者と仕事人が肉体関係になるのはあまり進められる事ではない。男と女という組み合わせ上、仕方がないこともあるが、時折、交わした情が最終的な判断を狂わせ、チーム全体に迷惑を掛ける事もある。最悪の場合、全滅させられる事にもつながる。

「他の人のときは、一言多いのに…琢磨さんの時は、あんまり何もいいませんね」

「そう?」

「ええ……」

「たぶん、久瀬君の言葉足らずの説明と判断している所為でしょ…」

「え~っ」

「裕樹は、相手の子とSEXしてないでしょ…」

「……どうして解るんですか?」

「琢磨裕樹の今までの仕事から……」

「そういえば、いつも、二人は同じチームですね…」

「……そうね、多いね…」

美紗は、苦笑しながら、ベットに腰を掛けた。

美紗と真一は、裕樹の使っている部屋の真上の部屋を借りていた。あまり部屋番号を指定する事は出来ないが、その辺は、ちょっとお願いをすれば、してくれる。無論、他の人に見えないように握手をするのを忘れてはいけないが…。