カウンセリングを学んでいた頃に
よく読んでいた本だ。
もうずっと昔、
カウンセリングを受けたことも
あるけれど、
その手法に対して疑問を持っていて、
そんな時に巡り合い、
とても共感した本だ。
カウンセラーの方にも、
そうでない方にも、
ぜひこの本の“序章”を読んで
みてほしいと思う。
『ニュー・カウンセリング』
伊東 博・著 誠信書房
“ニュー”と言っても、
この本の初版は1983年(^^;
その頃、流行っていた手法でもない。
著者が体系化した、それまでとは
異なるカウンセリングの手法だ。
著者は、
日本のカウンセリングの
草分け的な存在のひとりでもあり、
ロジャース理論による非指示的療法に
よるカウンセリングを行っていた方。
つまり、いま主流のカウンセリングを
行ってきた方だ。
たが、
もっとよい方法があるのではないかと、
そもそも、カウンセリングに
かからなくてもいいような働きかけが
できるのではないかと、
試行錯誤の末にまとめられたのが、
この『ニュー・カウンセリング』だ。
著者が従来のカウンセリングの効果を
疑問視した理由がいくつか挙げられている。
①カウンセラーの資質によって、
カウンセリングといってはいるが、
カウンセリングの体をなしていない
ものがある。
主たる要因としては、カウンセラーが「自己覚醒」できていないことと、自分にも他人にも鈍いことを挙げている。
②“ことば”の難しさ。
この著書から引用してみる。
『「コトバ」というものは、それを選んでもっとも適切に表現することが、むずかしいということと、もうひとつ、われわれの微妙な感情をあらわすために「コトバ」は足りなすぎる』
③「人の話をきく」という教育を
受けていない。
例えば、カウンセリングの演習で、
相手の言ったことをそのままかえす
“おうむ返し”というものがあるが、
これがはじめから出来る人はそう
いない。
相手のコトバを、自己流に解釈して
理解しているのである。
④言葉以外の表現の加味。
これも引用する。
『われわれのコミュニケーションは、ときには、コトバそれ自体よりも、コトバでないものの方が、より多くのことを、より正確に伝えることがあるからである。』
⑤ひとりのクライエントに時間がかかりすぎる。
私はこれらには、
いちいちすべて頷けたのですが、
どう思いますか?
著者の伊東博氏は、実際にニューカウンセリングのワークショップを年に何回か行っていました。
伊東氏が亡くなってからは、
伊東氏と共にワークショップを作って
いた方々があとを引き継ぐ形で行って
いました。
10年近く前に、その方々のワークショップに参加しました。
以前、伊東氏のワークショップに
参加したことがあったので、
久しぶりにそれをまた体験したいと
思ったからでした。
ただ、残念なことに
講師陣の、ワーク後のシェアに対する
問いには深みがなく、伊東氏のような
熱意もあまり感じられず、
これでは、導き手がいてもいなくても
あまり変わらないだろうなと感じて
しまいました。
その一方で、講師達は、
過去に伊東氏が行ったワークへの
関心は強く、
参加したことのある私に対して
どんな感じだったのか、何を言って
いたのか等の質問にはとても熱が
入っていました
ε- (´ー`*)
残念の上にも残念だったので
その後、活動しているのかどうかに
興味がなくなりました。
この記事を書くにあたって、
検索してみたところ、
ホームページが更新されていないので
続いてはいないのかもしれません。
一方、
伊東氏が行ったワークショップは
深みがありました。
問いかける質問の質が
格段に違うのです(^^)
ワークショップは、からだで感じ、
感じたことを表現(シェア)していく
だけです。
これは、心身一如の考え方(身体と心はわけて考えることができないという考え方)にもとづいています。
ふつうのカウンセリングのように、
まず心へアプローチするのではなく、
体感としてわかりやすい、身体への
アプローチを先に行うというものです。
ワークショップで体験するのは
いつもは“当たり前”として注意を
あまりはらっていないこと、
例えば、
立っている時の足の裏の感覚、
音楽を聴いて身体を動かしたくなる時の感覚
…など。
ひとりひとり、みんな違います。
同じ人でも、体調や気分なんかによって変わってきます。
ストレスがあると身体は緊張します。
身体が緊張しているほど、
そのような感覚を感じる力が
鈍くなるのです。
その微細な感覚を1番ピッタリのコトバで表し、相手に伝えるというこのワークをすることで、自分の感覚とコトバに敏感になるのだと思います。
その表現を引き出すのが、
伊東氏はとても上手かった。
質問されるほど、あぁ、そんなことも
感じてた、そんなふうにも感じてた、と
どんどん広がっていくのです。
また熱意も素晴らしかった。
カウンセリングが大好きで、人が大好きというのが伝わってくるのです。
笑顔が素敵な、気さくな優しい方でした。
技法だけを真似たところで、同じようにはとても出来ないでしょう。
個人的に教えを受けたわけではないですが、この、伊東氏との出会いも、私にとっては宝物
![ドキドキ](https://stat.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/031.gif)
最後に、問題が解決することについて
この本から引用しておきます。
『クライエントが、新しい問題処理法を発見するということは、カウンセラーの用いる技術によって起こるものではなくて、カウンセラーとクライエントが作り上げる関係の中で、その関係によって起こるものなのである。』
『すぐれたカウンセラーは、多くの治療「技術」を身につけているからすぐれたカウンセラーなのではない。しいていえば、「カウンセリング関係を作る技術」をもっているということになるのだが、そうした「関係をつくる」ものを「技術」ということばで表現するのは不適当なのである。』