オウム真理教で行われていたオウム特有のヨーガ行法や密教瞑想についての問題点・危険性と、その解決・改善のための方法について、ひかりの輪の考えを以下にご紹介します。

【※この記事は、上記の【2】【3】を補足するものとして、新たに2024年6月に追記されたものです】

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1,オウム真理教のヨーガ行法は、一つは、麻原が、市販のヨーガ教本などから独学で学んだものと推定されます。麻原は、最終的には、麻原が書いた著作以外の著作を読むことを出家修行者に禁じましたが、1987年のオウム真理教教団の創設期前後までは、すなわち、「オウム神仙の会」とそのもとで出家修行者のサンガを組織していた時代には、その信者・メンバー達も、『ヨーガ根本経典』『魂の科学』『あるヨギの自叙伝』『虹の階梯』などの他のヨーガ研究者・指導者・密教修行者などの著作を読むことを許されていました(奨励されていました)。

 

 そして、これに加えて、1986年前後、麻原は、インドで著名なヨーガ指導者や、インドに亡命中のチベット仏教関係者多数と面会して、その中でも、インドの著名なヨーガ指導者であるパイロット・ババに教えを請い、その下で修行し、1986年夏には、ババを日本に招きました。

 

 その中で、麻原がババから直接学んだヨーガ行法があり、具体的には、例えば「アパンクリヤ」などと呼ばれ、3つのバンダを含んだ、いわゆるムドラー・プラーナーヤーマ系の行法です。これに準ずる行法としては、ヴァヤヴィヤ・クンバカ・プラーナーヤーマなどがあります。これは一般のヨーガ書籍には掲載されておらず、知る限りでは、オウム改め現アレフ教団、アレフからその金沢支部が離脱して出来た「山田らの集団」と公安当局が呼んでいる団体、一部のヨーガ教室に見られます(他にもこれらの行法を教授しているヨーガ教室があれば情報をいただけると助かります)。

 

2,しかし、麻原とオウム真理教のその後の結果を見ると、その行法に問題があったことが推察されます。実際に、パイロット・ババは、オウム事件発生後に、元オウム信者に対して、以下のように述べています。すなわち、麻原・オウムは行法(ラジャス)に偏り過ぎており、そして、自分の教えた行法が、精神的に浄化された結果ではなく、その行法の物理的な作用によって、一時的にではあるが深い瞑想状態に導いてしまうことが、結果として、麻原らが「(自分は)悟った、解脱した」といった慢心を形成する原因となったということです。

 

 そして、ババは、その反省に基づいて、そのような危険性を取り除いた、無理のないプラーナーヤーマやムドラーといったヨーガの行法の体系をあらためて教えるようになりました。それをインドで学んだ元オウムの修行者たちが、それをベースにして作成したものが、ひかりの輪で「エンライトメントヨーガ」と呼ぶものですが、オウムのヨーガ行法の反省と贖罪も兼ねて、学びたい人にお伝えしています。

 

 ただし、その場合でも、どのように修行法を工夫したとしても、クンダリニー・ヨーガについては、正しい目的意識と十分な準備修行なく、間違った動機・興味本位で準備もなく行うと、心身の障害をもたらす可能性を否定できないことから、ネットで公開することは控えたいと思いますので、ご関心がある方は個別にお問い合わせをお願いします。

 

 なお、この一時的な体験を「解脱・悟り」と取り違える問題は、麻原が自分の前生のグルと考え、その教えを学んだチベット密教のカギュ派に所属し、生前には今の時代の中の最高の瞑想家であり、「現代のミラレーパ」ともいわれたカル・リンポチェ師も指摘しています。麻原がインドのソナダでカル・リンポチェ師の教えを受けた時も、自分の瞑想体験を語る麻原に対して、「体験は悟りではない、体験を制御できることが悟りである」とたしなめるように繰り返し述べていたことがあります(それに対して麻原は「それはわかっている」と言いながら、不服そうでした。なお、この際カル・リンポチェ師と麻原の間の通訳を行ったのが上祐史浩〈現ひかりの輪代表〉です)。

 

 また、1日会って、教えを聞いたり、法話をしたりしたというインドのヨーガやチベット仏教の関係者は、ダライ・ラマ14世を含めて他にもいますが、麻原が弟子と共に、一定の期間、その師の修行センターに滞在して、教えを学ぶことをしたのは、このカル・リンポチェ師とパイロット・ババ師の二人だけだと思われます。この二人が麻原・オウムの問題として、同じことを指摘していることは重要だと思われます。

 

 オウム真理教は、いわば、瞑想体験主義の面がありました。睡眠や食事を規制した状態で、強いヨーガ行法を集中的に長時間行い、神秘体験(客観的には変性意識体験)を達成することが、幹部信者(成就者)と認められる重要な基準となっていました。しかし、その幹部信者が、口をそろえて言うことは、その集中修行を出てしまえば、そうした体験はなくなるか、大きく減ってしまうということでした。

 

 また、麻原自身が、自らを「最終解脱者」と自称しながらの公の場での説法(1993年8月24日)において、「これが、おそらく一度経験がある最終解脱ではないかと思う」などと述べて、「最終解脱」と呼ぶ状態が、麻原の一時的な体験であったことを自ら明かしている一節があるのです。
 

 

3,麻原は、密教的な瞑想イニシエーション(秘儀瞑想)を説き、それは、オウム真理教において、それは最も重要な教え・修行の一つとなっており、現在のアレフ(旧オウム)教団においても同様であり、2023年にアレフが国によって寄付の受領や施設の使用を禁じられるまでは、数十万円の多額の布施を条件として伝授することを続けていたのではないかと思われます。

 

 そして、一般的な見方では、それらの麻原の瞑想法は、麻原が愛読したチベット密教の瞑想修行を描いた『虹の階梯』(中沢新一著)などをネタ本として、それを麻原が簡略化したり、独自の解釈を加えて表現したりしたという見方が強くあります。その中には、麻原の「グルヨーガ」「グルヨーガマイトレーヤ・イニシエーション」や、「ツァンダリー・イニシエーション」などと称した秘儀瞑想に通じるチベット密教の瞑想の解説が掲載されています。

 

 しかしながら、そのようなチベット密教系(後期密教系)の瞑想を知りたいのであれば、数十万円という布施が必要になるオウム・アレフ教団ではなくとも、「図説マンダラ瞑想法」(ツルティム・ケサン・正木晃共著)という書籍において、チベット仏教の総帥ダライ・ラマ14世配下のツルティム・ケサン師が公開伝授を行っています。

 

 チベットの瞑想イニシエーションも、普通はごく限られた準備のできた資格のある者たちにだけ伝授されるものであり、書籍で一般人に公開するなどということは、かつては決してなかったことであると同師は言います。しかし、チベットが独立を失って以来、海外に出たチベット人のグルの多くが、間違った内容の秘儀伝授を切り売りしているという問題や、オウム真理教の暴走の問題を踏まえて、このような事態に至っては、そうした間違った教えではなく、正しい教えを知らしめることが重要になったなどと判断して、公開伝授に踏み切ったということです。

 

 この書籍の中で公開伝授されているのは、チベット仏教の正統な伝統に基づいたものであり、さらに、麻原・オウム真理教の密教的瞑想に比べれは、より高度な瞑想法です。その中には、チベット密教で、父タントラというものに分類されることがあるマンダラ瞑想もあれば、オウム真理教が説いた、「六ヨーガ」「トゥモのヨーガ」「ツァンダリー」「熱のヨーガ」などに相当する瞑想も、より高度な体系となって伝授されています(究境次第の瞑想)。さらには、その中には、こうした高度な瞑想がもたらす健康障害・魔境の危険性を取り除くために、事前に行うべき準備修行も明記されています。

 

 麻原・オウム真理教の瞑想は、麻原独自のものであり、伝統に基づいたものではありませんが、こちらの方は、伝統に基づいた、正しく完全な瞑想体系ですから、その意味で関心のある方のためにご紹介しておくことにします。
 

 

4,オウムのヨーガ行法や高度な密教瞑想が関係する体内の気の流れを活性化する修行法(ヨーガのクンダリニー・ヨーガ、密教の究境次第、トゥモのヨーガ、熱のヨーガなどとされるもの)は、しばしば条件が整わない者が行うと、精神障害・クンダリニー症候群などの心身の障害をもたらしたり、強い変性意識体験によって自分が高位のステージに到達したなどと思い込む誇大妄想的な慢心(魔境・増上慢)が生じたりするとされています。

 その回避のためには、上祐個人の見解としましては、初期仏教の基礎の教学と、その基本的で最も重要な瞑想とされる四念処・四無量心の修習による無我の悟り・自我執着の浄化が事前になされることが非常に重要であって、心身の問題を回避して悟りを深める上での決め手になるのではないかと思われます。
 
 この点に関して、ご関心がある方は、個別にお問い合わせいただければと思いますが、これらの瞑想を解説・実習する
ひかりの輪の講座については、以下をご参照ください。

『仏教の思想』講義のカリキュラム
『ヨーガの思想』講義のカリキュラム 
『瞑想講座』のカリキュラム


※ご参考までに以下の関連記事もご参照ください。

 仏教・宗教の歴史の総括とこれからの思想