平成24年9月9日、シンポジウム『放送大学と私』
(放送大学福井学習センターにて)
(スピーチ:笠島希実也)
こんにちは。
私は今までに、大勢の方々の前で話をしたことがないので、
原稿を読ませていただきたいと思います。
宜しくお願いいたします。
まずは、自己紹介からさせていただきます。
私は鯖江市に住む笠島希実也と言います。現在23歳です。
私は軽度発達障害児として生まれ、色々な病気を併発する中、
育ちました。
小学校・中学校は地元の特別支援学級で過ごし、
その後福井南養護学校の高等部を卒業しました。
今も障害の程度がB2の療育手帳を所持しております。
【大学で学ぼうと思った理由】
そんな私が、なぜ大学で学ぼうと思ったかといいますと、
養護学校卒業後、一般就労したのですが、
職場でのコミュニケーションがうまく取れず、
またそれ以上に
「自分は、あまりにも社会の事を知らない無知な人間だ!」
と痛感したからでした。
【しかし中卒という壁に阻まれる】
その後、家業の豆腐屋に入り、
今一度、“自分が生きているこの社会”をしっかり学びたいと思い、
東京の産能短期大学の通信課程に入学することを希望しました。
がしかし、私の卒業した養護学校は
「知的障害系/養護学校」ということで“中卒扱い”になるため、
入学させてもらえなかったのですが、産能短期大学には
『入学資格取得生』という、中卒者・高校中退者が、
将来入学可能な制度が用意されており、この制度を活用して、
正規の入学を目指して、家業に必要なマーケティングから
学び始めました。
産能短期大学のスクーリング・単位修得試験会場は、
全国の主要都市で行われていますが、
福井に住む私にとって仕事をしながら継続するには、
かなり無理があると感じ始めていた頃、
父から放送大学にも『入学資格取得生』制度らしきものがあるらしい
と聞き、昨年の10月ごろ福井学習センターにお伺いし、
産能短期大学と同じような『入学資格取得生』制度があることを
確認いたしました。
【放送大学へ進路変更】
放送大学のスクーリング・単位修得試験会場は、
ここ“アオッサ”で行われているので、私の生活圏内ですし、
これなら“無理せず生活の一部としての学び”を続けていけると思い、
「産能短期大学進学への当初の計画」を、来年2013年4月、
放送大学へ正規入学を目指して、今年4月から1年間、
選科履修生として『入学資格取得生』制度を活用して、
学び始めるように進路変更しました。
ところが、入学にあたり、父が再度放送大学の本部に
『知的障害系/養護学校の学校区分』を問い合わせたところ、
文部科学省と協議され、文部科学省からは、
「最終的には放送大学の判断に任せる」との返事があったそうで、
協議の結果、「“准高卒者”として、全科履修生での入学を
許可しますので、無理せず確実に単位を修得してください!」
との連絡を、放送大学本部からいただき、
この春、全科履修生として放送大学に入学しました。
結局、1年前倒しで、“学ぶチャンス”を与えていただいた放送大学に
対して、少しでも報いるために、今学期の単位修得を目指し
努力した結果、1科目だけですが、無事合格をいただきました。
たかが1科目ですが、私にとって今後の人生を変えていく
大きな単位修得となりました。
ほかの大学では、中卒扱いという壁に阻まれていた私に、
門戸を開いていただいた放送大学には深く感謝しています。
【父の大学院進学】
また、私には、現在養護学校高等部1年になるダウン症の弟がいます。
父は私と弟、2人の障害児を育ててきた経験から、
知的障害児・障害者が
『たったこれだけの言葉を覚えれば、人生を渡っていける!』
といった「言葉の単語帳」を作る夢を持っており、
体験知・経験知はあっても、理論知がないということで、
この10月から放送大学大学院で『障害者の言語発達』に関して
学ぶことになり、親子共々お世話になることになりました。
【今後の抱負】
今後の抱負としては、まだまだ始まったばかりですが、
『放送大学で学ぶことによって、人生を変えてやる!』
ぐらいの気概を持って、自分に「足りない部分」また
「知らなければならない世界」を、300科目の中から選び、
じっくりと学んで卒業を目指したいと思っています。
そして自分自身の学びは勿論ですが、
私と同じように学ぶことを欲している
全国の知的障害系/養護学校出身者、
また色々な事情で高校進学を断念されたり、中退された方々に、
ぜひ“放送大学の『入学資格取得生』制度の存在”を
知ってもらえるよう、伝道していきたいと思っています。
先ほど、配りましたチラシは、父から放送大学に対する
『入学資格取得生』制度に関する提案のデモです。
ほかの大学では『入学資格取得生』制度、
または『特修生』制度の名称で、
しっかりと入学案内のパンフに別枠で書かれていますが、
放送大学の入学案内には、その固定した名称すらなく、
質問コーナーに、ほんの少し掲載されているだけで、
とてもわかりづらいです。
来学期以降の入学案内に、父が作成したデモのようなページで、
大々的に告知すれば、全国は勿論、福井県内だけでも
入学される方は、かなりの数で増えてくると思います。
是非本部に提案していただきたいと思います。
長くなりましたが、
本日はご清聴いただきまして、誠に有難うございました。
<鈴木福井学習センター所長>
最後の笠島君の提案については、本部の方に話してみたいと思います。
我々の広報担当も資料を沢山作って色々なところに配布しているの
ですが、笠島君の話された観点が抜けていたと思います。
有意義なご指摘をありがとうございました。