「アンコール・ワットと癒やしの旅 カンボジアへ」 | 土方美雄の日々これ・・・

「アンコール・ワットと癒やしの旅 カンボジアへ」

最近のガイドブックや紀行本は、たいてい、その主要なターゲットを、若い女性に絞っている。だから、美しいカラー写真をふんだんに使い、居心地のよいホテルやレストラン、カフェ、そして、お洒落なショップやスパ等の紹介は、その必須アイテム。しかし、私はそれらのいずれとも、ほとんど無縁なので、要は私の紀行本は、時代遅れなのだ。それは以前から感じていたが、最近、特に、強く、そう感じる。

カンボジアに関しても、私は「アンコールへの長い道」(新評論)と「アンコールに惹かれて」(社会評論社)という2冊の本を書いたが、いずれもたいして、売れていない。

昨日、ネットで検索し、中身を見ることなく購入した、矢羽野晶子さんの「アンコール・ワットと癒やしの旅 カンボジアへ」(イカロス出版、1600円+税)という本を読んでいて、彼女が紹介する遺跡以外の場所に、私はほとんど行ったことがないことに、愕然とした。大病をして、3度の手術をしてからは、行っていないが、ほぼ毎年のように通い続けてきたカンボジアにして、そうなのである。

この本で紹介するホテルやレストラン、ショップ等は、私のよく知っているシェムリアプやカンボジアとは、まるで、別世界だ。もちろん、シェムリアプなどの、発展途上の観光地は、1、2年行っていないだけで、ガラリと変わる。しかし、それだけでなく、たとえ今年行ったとしても、私は彼女が紹介するような場所には、まず、行かないだろう。相も変わらず、かつては老舗だった、老朽化して水回りに難のある、時代遅れのタ・プロームホテルに泊まり、オールド・マーケット周辺の、小汚いレストランで、雑踏を眺めながら、飯を食っているに、違いない。それが、所詮、私という人間に染みついてしまった、旅のスタイルであり、今さらそれを変えようとも思わないのだ。

しっかし、そんな私が評するのもおかしな話だが、同書はよく出来た旅のガイドブックである。矢羽野さんは、長く、現地に在住し、「クローマーマガジン」の編集長をつとめてきた人である。そうした人が書くガイドブックだから、駆け出しの女性ライターが書く類書とは、ものが違う。お薦めです。

しかし、私は、相も変わらず、たいして売れない時代遅れの紀行本を、これからも、きっと、書いていくことになるのかなぁ・・。何だか、悲しい。