「標的の島 風かたか」 | 土方美雄の日々これ・・・

「標的の島 風かたか」

「標的の村」「戦場ぬ止み」に続く、三上智恵監督作品最新作。那覇の桜坂劇場における上映に続き、東京でも、ポレポレ東中野での上映が、先週の土曜日から始まった。土日は、生憎、所用があったので、昨日の12:30の回に行ったが、30分前に着いたのに、すでに満席で、立ち見・・という状況。万全を期し、1時間前に劇場に着くように、家を出るんだった。失敗(涙)。

観客は、いつものように、私と同世代の、ジジ・ババ(今はシニア世代・・というんだそうだが)が中心ながら、若い人の姿も、結構、目につき、少し、安心。

高江におけるヘリパット建設反対運動をテーマにした「標的の村」や、辺野古の新基地建設を巡る激しい攻防を描いた「戦場ぬ止み」に対し、今回の新作は、わりと「地味」な、現在、宮古島や石垣島で押し進められている、自衛隊によるミサイル基地建設に反対する地元住民の闘いを、いわばメインテーマに据えた作品。もちろん、高江や辺野古のその後も、ストーリィにおり込み、クライマックス・シーンは、国家権力を総動員した、文字通り、「沖縄の民意」圧殺ともいうべき、高江における(昨年)7.22の激闘だ。

しかし、三上監督は、沖縄の闘いを、決して、単なる「武勇伝」として描くのではなく、常に、「本土」の風かたか(防波堤)とされてきた沖縄の悲しみと苦しみ、しかも、何度も、文字通り、重圧に押しつぶされそうになりながらも、それをはね返してきた、ごくフツーの、沖縄の人々の歴史として、それを描いこうとしているのである。だから、そこには、当然、人々の日常生活があり、歌や伝統文化や、笑いもある。そして、虐げられてきた沖縄の悲しみや苦しみは、決して、反対派の中にのみあるのではないという、至極、自明のことも・・。

もちろん、三上作品への「ないものねだり」を、ここで書き連ねることは、容易だろう。しかし、そんなことよりも、私はまず三上作品を、ひとりでも多くの人に観てもらいたいと、切に、そう願う。三上監督は、いう。「標的の島」とは、それは決して、沖縄のことではない。それは、今、あなたが暮らす日本列島のことでもあるのだ・・と。そして、最後の希望、それを踏みつぶす側に、あなたは加担するのか・・と。

上映終了後、三上監督とTVジャーナリストの金平茂紀さんによるトーク・ショーもあって、充実した上映会であった。