「思い出のマーニー」 | 土方美雄の日々これ・・・

「思い出のマーニー」

米林宏昌監督の「思い出のマーニー」の主人公、杏奈は、心に深い「闇」を抱えた、12歳の少女。

その杏奈が、持病の喘息の療養のため、短期間、滞在することになった家の近くにある、美しい湿地の対岸には、古い石造りの洋館が建っていた。杏奈は、その洋館に何故か、強く心惹かれる。一見、誰も住んでいないかに見える洋館だったが、ある日、その一角に明かりが灯り、そして、それに引き寄せられるように、洋館にやって来た杏奈の前に、ひとりの少女が現れる。彼女の名前は、マーニーといった・・と、まぁ、そんなストーリィ。

物語は、その杏奈とマーニーの交流を軸に、大きな心の傷から立ち直っていく杏奈の物語。しかし、杏奈の前だけに現れるマーニーは、そもそも、実在の少女なのか???あるいは、杏奈の孤独な心が生み出した幻影に過ぎないのか???

「思い出のマーニー」は、少女の成長と再生の物語であると同時に、謎の少女、マーニーの正体をめぐるミステリィでもあるので、ここで詳しい内容を明かすことは出来ないが、おそらく、観る者の誰もが納得出来き、深い感動に包まれる結末であると思う。

文句なしの秀作。米林監督は、宮崎・高畑という両巨匠「卒業」後のジプリを、文字通り、背負って立つひとりになるという大役を任され、見事にその期待に応えた。そういう意味で、新生スタジオジプリの方向性を示す作品。

もう、そこには、宮崎駿の描く、凜々しい、孤高の戦闘少女はいない。ただ、心に傷を持ち、しかし、それでも前を向こうとする、等身大の、ごくフツーの少女が、いるだけである。

美術監督をつとめる種田陽平のつくり出した、北海道の美しい自然と、その中に建つ洋館等の造形も、素晴らしい。