小野不由美「残穢」その他 | 土方美雄の日々これ・・・

小野不由美「残穢」その他

土・日は「日本美術史1b」のスクーリングで、外苑キャンパスへ。1日4コマ計6時間の授業は、教える方もヘトヘトだろうが、教えられる側も、ヘトヘト。疲れ果てて、帰宅後も、ブログの更新等の気力もなく、どーもスイマセンでした。

その行き帰りの車内で読んだのが、小野不由美久々のホラー小説「残穢」(新潮社、1600円+税)。

小野自身が語り手の実話風のスタイルで、怨みを伴う死は穢れになり、その穢れは人に伝染し、怪異となり、拡がっていく・・というのがテーマ。何か、どこかで聞いたような話だなぁ・・というあなたは、ホラー通。そう、清水崇の傑作「呪怨」とそっくりの、テーマなのだ。そういえば、小野の出世作「屍鬼」も、スティーブン・キングの「呪われた町(だったかな???)」にそっくりだったし、またかよ・・という感じだが、「屍鬼」もそうだったように、たとえ、そっくりのテーマであっても、それを完全に自分のものにしてしまう、圧倒的な筆力はさすが。

「残穢」も、「呪怨」が家につく怨みだったのに対し、こちらは土地につく怨み。ある土地の「明治大正期」にまで遡る長い歴史と、そこに住む人々の運命を綴る、文字通り、壮大なストーリィとなって、「怖さ」がどちらが上かはともかく、そのスケール感は完全に、「呪怨」のそれを上回っている。

筆力のある、本当に小説のうまい人だなぁ・・と、心底、感嘆する(プロの小説家なんだから、まぁ、当然・・かもしれないが)。畳を擦る音や、いるはずのない赤ん坊の泣き声、何かが這い回る気配等々、そういった、使い古された、どこといって、目新しさのない設定の積み重ねで、ここまで怖くできるのは、やっぱり、さすがです。