「パンプルムース氏と飛行船」マイケル・ボンド | ひいくんの読書日記

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ひいくんが、毎日の通勤電車の中で読んでいる本を紹介します。
通勤時間は30分ほどなので、軽い読物がほとんどです。

代休に編集長からの電話で呼び出されたパンプルムース氏を待っていたのは、英仏間を結ぶ飛行船就航記念機内食メニューを考える仕事でした。
食の国フランスの威信がかかっているため、パンプルムース氏はわれらが愛犬ポムフリットとともにブルターニュへ飛びます。
折しもサーカスが興行中でゴム女、おまけに彼を追い回す謎の老婆も出現します。
グルメ珍コンビのシリーズ第5作です。

主人公のアリスティード・パンプルムース氏は、パリ警視庁の元刑事で、フランスで、最も伝統と権威あるグルメ・ガイドブックル・ギード』の覆面調査員です。
パンプルムース氏は、年齢は50代で大変な美食家ワイン通、男性的魅力にもあふれ、“女にかけては凄腕の刑事”と呼ばれていましたが、今はドゥーセットに頭が上がりません。
そんなパンプルムース氏は、元警察犬ブラッドハウンドの愛犬ポムフリットと一緒に、調査のために各地のレストランを訪れています。
ポムフリットは体重40~50キロの大型犬で、老犬ホーム送りになりそうなところを、パンプルムース氏に引き取ってもらったことから、主人にはきわめて忠実でした。
ちなみに、フランス語でパンプルムースとはグレープフルーツのことで、ポムフリットとはフライドポテトのことです。

物語は、パンプルムース氏が編集長からブルターニュイギリスとを結ぶ飛行船定期便の就航式の後の両国の要人が乗る初飛行で供されるメニューを考えてほしいというものでした。
パンプルムース氏ポムフリットは、ポール・サン・トーギュスタンという小さな港町に向かい、編集長の予約した“タイ・コズ”という小さなホテルに向かいます。
ところが途中、道路の左右を間違えたような尼僧を満載した車と事故を起こし、車は動けなくなってしまいます。
そんなパンプルムース氏ポムフリットを救ったのが、ちょうど通り合わせらヤスミンという若い娘の運転する車でした。
ヤスミンポール・サン・トーギュスタンで興行中のサーカス空中ブランコ乗りでした。

ようやく“タイ・コズ”にたどり着いたパンプルムース氏ポムフリットでしたが、ホテルの食事は散々なもので、おまけにパンプルムース氏ポムフリットの鼻に傷を負わせてしまいます。
さらに翌日、チケットを買いにサーカスに行くと、ヤスミンが昨夜の興行で空中ブランコから落下し、意識不明であること、救急車で運ばれる際にパンプルムース氏の名前を口にしていたことをサーカス団長ヤスミン母親マダム・カウチューから聞かされます。

ショックを受けたパンプルムース氏は、ヤスミン事故の真相を探り始めます。
しかし、怪しげな尼僧パンプルムース氏を追い回す謎の老婆も登場し、謎は深まるばかりです。

ミステリとしては、前作に引き続き、サーカスで何が起きたのかというを解くホワットダニット〔Whatdunit〕のミステリです。
前作(『パンプルムース氏のダイエット』)以上にミステリ色は濃厚で、謎解きミステリとしての完成度も上がっています。
さらに、終盤に入り飛行船をめぐる陰謀の存在も明らかになり、サスペンススリラーとしての要素も加わります。


パンプルムース氏は相変わらず思い込みが激しく、その推理も思い付きが多いのは変わりませんが、今回は、その推理もそれほど的外れではありません。
しかし、何といっても大活躍なのはポムフリットで、その真意はなかなかパンプルムース氏に伝わりませんが、事件が無事に解決したのは、ほとんどポムフリットのおかげと言っても過言ではありません。
また、編集長も珍しく現場に登場し、パンプルムース氏に協力します。

今回、パンプルムース氏を絡む女性ゴム女ことマダム・カウチューです。
中でも、パンプルムース氏マダム・カウチューとが、マダムのトレーラーハウスで一夜を過ごすことになる顛末は抱腹絶倒です。

一方、ミステリ色が濃くなった分、パンプルムース氏ポムフリットのドタバタぶりはやや落ち着いています。
エロティックなネタも控えめでしたが、最後の最後に笑わせてくれました。
パンプルムース氏ポムフリットの今後の活躍を読むのが楽しみです。

 


表紙のイラストは、絵本作家イラストレーター上垣厚子さんです。
飛行船にしがみつくパンプルムース氏、そしてポムフリットが描かれています。
上垣厚子さんのブログはこちらです。→https://atsukou.exblog.jp/

 [2022年5月12日読了]

パンプルムース氏シリーズ”のこれまでの作品を紹介したページは次のとおりです。
第1作『パンプルムース氏のおすすめ料理』(https://ameblo.jp/hiikun-book/entry-12728851573.html
第2作『パンプルムース氏の秘密任務』(https://ameblo.jp/hiikun-book/entry-12729939153.html
第3作『パンプルムース家の犬』(https://ameblo.jp/hiikun-book/entry-12733097399.html
第4作『パンプルムース氏のダイエット』(https://ameblo.jp/hiikun-book/entry-12742272375.html