副題は“英国王妃の事件ファイル11”。
20世紀初頭のイギリスを舞台にした、英国王族でありながら、貴族とは名ばかりの貧乏生活を送る公爵令嬢のジョージアナ(ジョージー)が主人公の “英国王妃の事件ファイルシリーズ”の第11作です。
婚約者のダーシーの生まれ育ったアイルランドのキレニー城で、ダーシーと2人で結婚式の計画を立てながら、夢のような時間を過ごしていたジョージーでしたが、ダーシーは仕事で旅立ってしまいます。
また、その少し前に同じく城に滞在していたポーランドのゾゾ・ザマンスカ王女も世界一周の飛行機レースに出ると言って城を去っていたので、ジョージーはダーシーの父親のキレニー卿と2人だけになってしまいます。
残されたジョージーのもとに、ラノク侯爵の兄のピンキーから手紙が届きます。
その中には、兄一家がニースに行って留守の間に届いたジョージー宛ての2通の手紙が同封されていました。
1通は、ジョージーがカトリック教徒のダーシーと結婚するために王位継承権を放棄しようとしていることについて、話をしたいというメアリ王妃からのものでした。
もう1通は、未婚まま子どもを産むためにイタリアへ旅立った親友のベリンダからで、ジョージーにイタリアに来てほしいと書いてありました。
ジョージーはイギリスを経由して、イタリアへ向かうことを決めますが、新しいメイドのキャスリーンは外国へ行くのを嫌がり、ダーシーの大叔父夫妻であるサー・ドーリーとレディ・ホワイトのもとで料理を学んでいるクイーニーにも同行を断られたジョージーは、一人でロンドンへと向かいます。
メアリ王妃に会い、ダーシーとの結婚の意思を伝えたジョージーが、この後イタリアのストレーザの近くにマッジョーレ湖に向かうと伝えると、
メアリ王妃はマッジョーレ湖畔のマローラ・アンド・マティーニ伯爵家のヴィラで開かれるハウスパーティに出席し、そのパーティに出席する予定のデヴィッド王子とシンプソン夫人を観察してほしいとジョージーに頼みます。
メアリ王妃の頼みを断れず、そのヴィラに向かったジョージーでしたが、パーティにはデヴィッド王子の他にヒットラーにも近いドイツの将軍や、ムッソリーニの相談役を務めるイタリア貴族も出席していました。
そして何と、母のクレアとその婚約者でドイツの実業家のマックスもそのパーティに招待されていたのです。
さっさとメアリ王妃から頼まれた任務を済ませ、ベリンダのもとに行きたいジョージーでしたが、ある朝、パーティの招待客の一人、ロスコフ伯爵が死体で発見され、ヴィラに足止めされてしまいます。
第二次世界大戦の足音が聞こえはじめたヨーロッパで、ジョージーは歴史を揺るがすかもしれない重要な場面に遭遇することになります。
舞台がイタリアということもあり、これまでのレギュラーメンバーはほとんど登場しません。
一人でヨーロッパを旅するジョージーは殺人事件だけではなく、脅迫事件や政治的陰謀にも巻き込まれ、そのスピーディの展開は読者を飽きさせません。
この作品は、前作『貧乏お嬢さま、駆け落ちする』ほどミステリ色は濃くありません。
第二次世界大戦前夜の時代の様子がしっかりと描かれていて、歴史小説のような趣きが感じられ、読み応えがありました。
このシリーズのサイドストーリーでもあるジョージーとダーシーの恋愛は、結婚を前に一休みといた感じです。
次作での展開が楽しみです。
貧乏お嬢さま、イタリアへ (コージーブックス)
1,058円
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表紙のイラストは、これまでの10作と同様にイラストレーターの190(ichikyumaru)さんです。
マッジョーレ湖畔のジョージーが描かれています。
190さんの公式ウェブサイトはこちらです。→http://190ikuo.jimdo.com/
[2019年8月1日読了]
“英国王妃の事件ファイルシリーズ”のこれまでの作品を紹介したページは次のとおりです。
第1作『貧乏お嬢さま、メイドになる』(http://ameblo.jp/hiikun-book/day-20150504.html)
第2作『貧乏お嬢さま、古書店へ行く』(http://ameblo.jp/hiikun-book/day-20150505.html)
第3作『貧乏お嬢さま、空を舞う』(http://ameblo.jp/hiikun-book/day-20160124.html)
第4作『貧乏お嬢さま、吸血鬼の城へ』(http://ameblo.jp/hiikun-book/day-20160128.html)
第5作『貧乏お嬢さまと王妃の首飾り』(http://ameblo.jp/hiikun-book/day-20160130.html)
第6作『貧乏お嬢さまのクリスマス』(http://ameblo.jp/hiikun-book/day-20181012.html)
第7作『貧乏お嬢さま、恐怖の館へ』(http://ameblo.jp/hiikun-book/day-20181018.html)
第8作『貧乏お嬢さま、ハリウッドへ』(http://ameblo.jp/hiikun-book/day-20181023.html)
第9作『貧乏お嬢さまと時計塔の幽霊』(http://ameblo.jp/hiikun-book/day-20181029.html)
第10作『貧乏お嬢さま、駆け落ちする』(http://ameblo.jp/hiikun-book/day-20190213.html)