「雪の夜は小さなホテルで謎解きを」ケイト・ミルフォード  | ひいくんの読書日記

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ひいくんが、毎日の通勤電車の中で読んでいる本を紹介します。
通勤時間は30分ほどなので、軽い読物がほとんどです。

12歳のマイロの両親が営む小さなホテル“グリーングラス・ハウス”に、ある冬の日、5人の奇妙な客が現れます。
彼らは全員が滞在予定日数を告げず、他の客がいることに驚いていました。
なぜ雪に閉ざされたホテルに来たのか、マイロは彼らの目的を探ることにします。

この作品は、2015年のアメリカ探偵作家クラブ賞(エドガー賞)ジュブナイル部門を受賞しています。

主人公の12歳のマイロ・バインの両親は、ナグスピークという港街で、
客室12部屋だけの小さなホテル“グリーングラス・ハウス”を営んでいます。
このホテルは、緑色のガラスの家という意味の名前だけあって、綺麗なステンドグラスが目玉の築200年の元お屋敷です。

クリスマス休暇に入ったある冬の日、派手な靴下の男青い髪の女性白髪の老婦人小柄で尊大な大学教授赤い髪の女性という5人の奇妙な客がホテルに現れます。

一癖もふた癖もありそうな彼らは、なぜか全員がホテルに滞在予定日数を告げず、他の客がいることに非常に驚いていました。


彼らが、なぜ雪に閉ざされた時期にホテルに来たのか不審に思ったマイロは、お客の誰かが落としたと思しき、古い紙に描かれた海図を手がかりに彼らの目的を探ることにします。
しかし、客たちの謎と巻き起こる数々の事件は、なんとホテルに隠されたとんでもない秘密に繋がっていました。

この作品は、港と丘の上のホテルを結ぶ、遊園地の乗り物のようなケーブルカー、ホテルを包み込む雪景色、両親の思い出と宝物がつまった屋根裏部屋、クリスマスのごちそうの数々とどこか懐かしい世界が舞台にさまざまな要素が盛り込まれたクリスマスストーリーです。

ミステリとしてみると、謎解きは結構しかっりしていて、5人の客のそれぞれの目的を、マイロが一つずつ解決していき、それらの情報を組み合わせることで大きな謎が解決するプロットは秀逸です。

マイロの成長物語としてみると、中国人の両親から生まれたのに赤ん坊のときに養子となったマイロが、自らのアイデンティティに悩みながらもその悩みを乗り越えることによって成長していく姿が描かれており、現代性が感じられます。

そして、もう一つの側面もなかなかいいのですが、こちらについては申し訳ありませんが、ネタばれになるため説明できません。

全体としてみれば、謎が解かれることによって、客たちや主人公に幸せがもたらされるというストーリーは、クリスマスストーリーにぴったりだと思います。

 


表紙のイラストは、イラストレイターの河合真維さんです。
まさに雪の夜の“グリーングラス・ハウス”が描かれています。
河合真維さんのウェブサイトはこちらです。→http://kawaimai.com/

 [2018年1月6日読了]