「鬼の祝言」小松エメル | ひいくんの読書日記

ひいくんの読書日記

ひいくんが、毎日の通勤電車の中で読んでいる本を紹介します。
通勤時間は30分ほどなので、軽い読物がほとんどです。

明治初頭東京の街を舞台に、強面で人間嫌い周囲からも恐れられている喜蔵と、不思議な力を持つ小生意気な少年の姿をした小春の2人が活躍する“一鬼夜行シリーズ”第5弾です。

物語は、序章と6章からなる長編です。

一 縁は異なもの
二 鬼と氷人
三 迷い家
四 終世の誓い
五 華燭の典
六 告白


前作〔『枯れずの鬼灯』(http://ameblo.jp/hiikun-book/day-20130717.html)〕で“じゃあ、またな”と小春荻の屋を去ってから9日後のお話です。

物語は、喜蔵が長屋の大家又七が持ってきた縁談を勘違いするところから始まります。
縁談の相手が両親を亡くしたばかりの由緒ある家の跡継ぎと聞き、この縁談、果たして深雪のためになるのかと喜蔵は悩みますが、実はその縁談深雪への話ではなく、喜蔵への話でした。

驚いた喜蔵は、縁談の相手の縁談を断るように言いいますが、縁談を進めます。
喜蔵深雪、さらに小春綾子彦次といつもの面々での屋敷を訪ねますが、そこで待っていたのは無数の妖怪たちでした。
そして、から自分の先祖の血が入っていること、先祖による子孫を守るための呪いに変わってしまい、妖怪縁談を迫られていることを聴きます。

また、祖母の血を飲んでしまったことから呪いにかかり、を陰から守っていた桂男は、が初恋の男である喜蔵と婚礼をあげるよう画策します。

このシリーズのテーマは、“人が他者と共に生きることの哀しみと喜び”だと私は思っています。
これまで、作者はこのテーマを、小春喜蔵というと人間の関係を中心に語っていましたが、前作でそれに加えて、人間の男女の関係も並行して描き、物語は深みを増しました。
この作品では、さらにと人間の関係も加わり、物語は一層味のあるものになっています。
それにしても、この物語は毎回どうしてこんなに切ない終わり方をするのでしょう。

一方、としての小春はどんどん強くなっています。
そして、それでも小春より段違いに強い猫又の長者との対決の時も迫っているようです。
このシリーズ、まだまだ続くようですので、小春喜蔵の今後がさらに楽しみになりました。


一鬼夜行 鬼の祝言 (ポプラ文庫ピュアフル)/ポプラ社

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表紙のイラストは、第1作の『一鬼夜行』(http://ameblo.jp/hiikun-book/day-20111011.html)、第2作の『鬼やらい』(http://ameblo.jp/hiikun-book/day-20120412.html)、第3作『花守り鬼』(http://ameblo.jp/hiikun-book/day-20120507.html)、前作『枯れずの鬼灯』と同様にイラストレーターさやかさんです。
青い空と赤い婚礼用台(こちらは帯の下で見えませんが…)のコントラストが美しいイラストです。
さやかさんのブログは、こちらです。→http://blog.livedoor.jp/u_guresuiren/

[2013年12月28日読了]