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著者:沢木耕太郎
発行:新潮社(2002年11月)


海音寺潮五郎の『酒と女と槍と』という短編にヒントを得て
映画と書物とスポーツについて書いてみたということです。
ちなみに、著者の場合は4番目に酒だそうです。

発行されてから7年も経っているので、もちろんスポーツに関しては
長野五輪、サッカー日韓ワールドカップと、もう忘れかけていたトピックでした。
しかし今読んでもそれなりに楽しめました。

特に長野五輪に関しては、本書でも結構辛らつな意見がありましたが
「そうそう冬季五輪ってそうなんだよな」と共感しました。

『私たちはサーカスを見るために来たのだろうか?』では、オリンピックのサーカス化を嘆き
「スポーツの領域にとどまっているのはスピードスケートとクロスカントリーだけ」と切ります。
おそらくバンクーバーで最も注目されるのはそのスピードスケートでもなくクロスカントリーでもなく
フィギアスケートなのでしょうね。清水と堀井みたいなライバルの構図も今はないのでしょうか。

『子供たちがこの大会で記憶するもの』では、
「冬の競技は肉体そのものの輝きが表にあらわれることが少ない」
「選手が本来持っているオーラが見ている者に届きにくい」
といったことから、東京オリンピックの強烈な印象が記憶にある著者は
子供たちはこのオリンピックをどのように記憶するのだろうというのです。

長野オリンピックで唯一その肉体美?を見せていたのは
第64代横綱・曙太郎だけだったかもしれない・・・
しかし貴乃花の代役・・・オーラはないし、めっちゃ寒そう。


書物についても触れておくと、フレデリック・フォーサイスの『神の拳』について
書かれた『魂を売ったのはジェリコばかりではなかった』はかなり手厳しい。。。

「これがあのフォーサイズが5年もの歳月をかけて書き下ろしたものなのだろうか」
そして「あるインタビューで、自分が『神の拳』を書いたのは金のためだと明言していた」といいます。

やっぱり『ジャッカルの日』の印象があるので、それと比較してどうなのか
読んでみたい気もしますが、こうもはっきりと「金のために書いた」といわれるものに
手を伸ばすのがためらわれます。