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著者:沢木耕太郎
発行:新潮社(2005年9月)
ソロクライマー・山野井泰史氏のヒマラヤ・ギャチュンカン単独登頂を追ったドキュメントです。
まるで著者が経験したかのような迫力で、高度7000メートルなんて
想像もつかない部分もありますが、読者も追体験できるような内容でした。
凍傷になっていく様など、読んでいる自分の指先も冷たくなっていくような感覚がありました。
ギャチュンカンを下りてくるところなどでは、自分だったら何回死んでいるだろうと
思わずにはいられません。
前々から、山だったり壁だったりを登るのは確かにそれはそれで大変なんだろうけども、
垂直に近いような壁を下りてくることのほうが大変なんじゃないかと思っていましたが、
やはりクライマーが事故にあう危険性が高いのは、どちらかというと下りのほうだといいます。
クライミングの範疇には入らないと思いますが、私自身も富士登山をしたことがあります。
それでも素人には大体登り下りのペース配分などできるわけもなく、
登りは目標があって元気に登りきりましたけど、
下りは膝が笑い足の爪が割れ、結構つらかったっす。
クライマーの心理として理解できないのが、「あえて冬山」ですね。
ゼロメートル地帯に住んでいても寒いのに、まして高度7000、8000メートルですから
それこそ「バナナで釘が打てる世界」ですよね。
クライマーとしては「寒い」ということの数倍「面白い」という気持ちが強いのだと思います。
有名な登山家が「なぜ山に登るのか」と聞かれて「そこに山があるから」と答えたはなしが
有名ですが、山野井氏に言わせると、たぶん「難しい壁を登りたいから」というように
なるのでしょうね。
山野井氏は夫婦揃ってクライマーなのですが、このギャチュンカンなどでの
凍傷により夫婦合わせて20本以上の手足の指を失っています。
それでも毎年のように壁に挑んでいくのにはただ拍手です。
山野井氏は昨年日本でクマに襲われ顔面70針の重症を負ったそうですが、
日記には「生きているクマに触れられるなんて・・・感動」と書かれています。
拍手は訂正、やっぱりバカか。