必殺仕事人Ⅴ 旋風編
飾り職人の秀 演-三田村邦彦
劇場版に秀は登場したけど、テレビ版には……と疑問に思われるのは当然です。
なんと第一話で主水と順之助が出会う場面では、背景に道具箱をかかえた秀が通っているのです。
その時のシーンなのですが、一瞬だし、言われないと絶対にわかりませんよね。
右側の青い衣装がそうです。
っていうか、これ、制作側でないと、視聴者にはわかりっこないです。
エンドロールにも名前が出ない超特別出演で、なんとも粋な計らいです。
映画史・時代劇研究家による週刊ポスト連載において、三田村邦彦が飾り職人の秀役を引き受け、続けると決めたときの葛藤について語った言葉があります。
「最初は『必殺』は辞めたかったんです。
お金をもらって人を殺して正義面をするというのが、嫌で。
それでマネージャーに『できない』と言ったのですが、2クールだけやることになって。
でも、それが延びると聞いて、プロデューサーに直接『できません』と言いました。
そうしたら、藤田さんが『ちょっと話そうか』って。
それで僕は自分の思いを話しました。
そうしたら、藤田さんはこうおっしゃるんですよ。
『わしは中村主水を正当化しようとは思わない。正義面しているわけでもない。でも、あの時代には悪い奴がいるのに、お上が袖の下を貰っているから裁かれることなくノウノウと生きている。コイツを生かしていたら、また犠牲者が増える。それなら、主水はこれを命にかえてでもやっつけなあかん。
主水もいいことしているわけじゃあない。人を殺しているんだから、いつかは自分も殺される。下水掃除でどぶ板を外したら主水がネズミに食われながら死骸になっている。そんな死に方がええと思っている。秀という役もそういうふうに考えてみたらどうだ』と。
カッコいいと思いました。
『娯楽作品なんだから楽しもうや』くらいに馬鹿にされると思っていたら、凄く真面目に考えている。
素敵な生き方をしていると思って藤田さんが好きになり、出続けることにしたんです」