「南南西」に進路を取れ!」守護神ゴーレス第3話ルート58 後編 ② | 高い月のギター

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沖縄で活動中のギタリスト、マルチ?アーティスト
みかつきなお(ぐしなおき、旧パンチポンチ)の活動報告。
小説の掲載が最近のおもな文面

現代のプログレ的なアプローチを考えたり、
時々適当なつぶやきを載せるブログ

鹿児島では作業がだいぶ進んでいた。
 「八幡さんのおじいちゃん疲労で倒れたみたい。しばらく様子見らしいよ。
 「あららー、元気になるといいね。でも不思議で、なにか心があたたまります。なんていうか、昔の人だったような人がすぐ近くに感じられて、おじいちゃんの友達がいきなり登場して、自分のおじいちゃんみたいに心配してるし。」
 「そうか、私みたいに連絡ばかりとってるとそんな新鮮な感動が薄れてしまってるかもしれない。私たち、時間を越えた旅をしているのかもしれないね。」
 「そう考えると、なんか今の時間が楽しく思えます。」
 「さて、茂敏さんの手帳、最後に近くなってきた。左手で書いたはずなのに、カタカナなのかそんなに乱れてない。しかも細かい字。二人の代筆ではない。本人ががんばって左手で書いた字だ。『中将閣下に面会かなった』すごい。沖縄戦の一ページを書き換えている。この手帳をちゃんと届けてくれた八幡さん、上運天さん、みんなにドラマがあるのね。」

 六月二十日の戦果。上運天伍長、的確な遠距離狙撃で敵侵攻を阻止。
 敵小隊に手榴弾による奇襲で戦力をかく乱。我、劣勢なれど最後まで『敵侵攻阻止』の中将の命を守らんと奮闘す。

 六月二十三日 出撃す。・・・・・・・ ここで一行おいた後。
 葦原茂敏軍曹名誉の戦死  敵軍に投降す。恥ずかしながら米英の捕囚となることで、我らの戦闘は終了した。のちに中将の自決を聞く。完全なる沖縄の敗北、されど葦原茂敏の名誉ある戦死を称える。これで葦原氏の手帳の最後の一筆とす。いずれ靖国で出会うことを誓おう。さらば友よ。
昭和二十年 七月 捕虜収容所にて 上運天哲一 筆。 
 「これで終わりか・・。」

 葦原氏のかたられない壮絶な最後、無念の同胞の姿を間近かに見届けた気になった今日子はメガネを取って傾いた日影を見た。涙が落ちないように。

 みずきはおばあちゃんの書簡を整理していた。
 上運天さんとの文通は、上運天さんが沖縄で出会った女性と結婚することの報告で終わりかあ。 ちょっと上運天さん思わせぶり、ずるい。
 その後、落ち込んだおばあちゃんを励ますつもりなのか八幡さんから手紙がいくつかあるのね。 
 そして上運天さんがなくなった1972年の手紙。ショックだっただろうな。
 そして八幡さんからの手紙は1980年で終わり。七回忌で区切りのつもりだったのかな。
 年賀状だけは八幡さんから続いてきてたんだ。気がつかなかったー。八幡さんの年賀状は八幡さんの奥さんがなくなった10年前でいったん切れて。そのまま連絡なしか。やはりなくなると縁が遠くなるのか。おばあちゃんはずっと寂しかっただろうな。笑顔の裏には悲しい気持ちがあったんだろうなあ。
 「私の仕事も大体まとまったよ。」
 みずきはおばあちゃん宛の手紙を表とグラフでまとめていた。
 年代ごとに誰が送ってきたかがわかる。
 「みずきちゃんさすが、商業高生」
 「最初が上運天さん。1967年、上運天さん結婚報告後は八幡さんが多くなる。」
 「みずきちゃん、史学、考古学の道もいいかもよ。分析力あるし、」
 「へへへ、ちょっとした遊び心ですよ。」
 「さて、そろそろ私も今日は一旦終わりかな?明日古文書の先生呼びたいけどいいかな?」「うん、大丈夫。おとーさーん、いいかなー?」
 「いいよ、どんどんお前のやりたいようにすすめなさい。」「はーいがんばります。」
 ここで、今日子宛にメールが入る。
 「だれだろ。このアドレス。 八幡裕一、お孫さんだ。」
 <祖父は葦原さんの設計したロボットのエンジンを今日完成させました。そんな中で、倒れましたが、医師は『いまのところ過労が原因です。心臓など問題ないか数日検査入院です』ということなので、ご心配かけてすみません。あ、ロボットのエンジン、わが社の企業秘密ですよ。葦原さんのご家族によろしく。 それでは>
 「だって、よかったね。」
 「うん、それより、あのロボットのエンジン作っちゃったんだ。すごい。」
 今日子はメモを確認して、
 「よし、今日はこれでおわり。 」西日が傾いてきた。
 「一緒にドライブしようか?」
 「うん、いこう。お母さん、南さんと一緒にでまーす。」
 玄関に向かった今日子は振り返って
 「じゃあ、今日は本当にお世話になりました。」
 「あら、もうお帰り?会社の方にどうぞ」お菓子セットを手渡した。
 「どうもすみません、小さい会社なので重宝します。」
 「それではまたあしたもお騒がせいたしますが、失礼します。」

 二人はジープに乗った。
 中古のジープのギアは動かしにくそうだった。
 甲突川沿いを下って市街地へ向かう。
 カセットプレイヤーからかかってきたのはイーグルスの「ホテルカリフォルニア」だった。
 「これ、昔の名曲ですよね。」
 「この曲は私がいちばん好きで嫌いな曲。」
 「どうして?」
 「青春の終わりと、それが思い出だけに変わったことを伝える歌だとおもうの。いろいろ解釈のある歌詞だけど。
 戦友三人とウメさんを思うとなんかこの曲を聴きたくなったのね。
 この曲は1969年に青春を感じた人がまたあの感動を求めてもそれはもうない。ホテルカリフォルニアは時が止まったホテル。あの時代の夢だけをみるならここにとどまればいい。そんな意味だと思う。」
 
 ♪Welcome to the Hotel Callifornia .....♪サビが聞こえてきた。

 「ふうん。私はまだまだこれからだし。・・・恋もまだだし。 私は本当は埼玉に行きたくない。もし沖縄にいけるなら、商業高校だし、同じ商業なら転校できるし。 沖縄に居場所があるような気がする。」
 今日子は強い口調で言った。
 「君の夢のかなうように私は手を考えてみる。」
 「いまはもういない三人の青春を忘れずに八幡のおじいちゃんが夢を追っている。こんどはあなたたちが夢を引き継ぐ番だわ。沖縄は君を必要としているよ。きっと。」
 「ありがとう・・・。」
 曲はギターソロに入った。目の前に桜島が見えてきた。
 市街をすこしぐるっと回ってあと、車は鹿児島の市街にある西郷隆盛像の前に止まった。
上野の西郷さんと違い、この西郷さんは軍服だ。
 「ここで質問。西郷さんは何を見ているでしょう。」
 「それは桜島でしょ?」
 「それも答えのひとつ。でも向こうの道、港までつながるたった数百メートルの国道。ルート58を見ていると思うんだ。」
 「そういえば、なんでたった数百メートルしかない国道があるんだろうね。」
 「あの国道58号線はまだ続きがあるの。種子島を通って、奄美大島、そして沖縄本島へつながっているんだ。 西郷さんはこの道を見て南西諸島をみて思いをはせていると思うんだ。西郷さんは沖永良部島に恋人を残してきている。 58号線は沖永良部島は通ってないけど、でも西郷さんの思いが南につながってるような気がするんだ。」
 「ルート58を走って。南さん。」
 「いくよ。」車は強引に右折してルート58に入った。
 どこにでもある普通の道。でも本当はとてつもなく長い海の道。この道は港に入って途切れた。
 岸壁に停車して二人は車を降りて、桜島と、右手に停泊している沖縄行きのフェリーを見た。 「わたしフェリーに飛び乗りたい!」かごしま←→なは と書かれたフェリーに車が入っていく。
 二人はさけんだ。
 「沖縄、まってろよー。もうすぐいくからー。」

 ----僕にはできるんだ。僕の声をだれかきこえるかい----
       上運天舜の思念が伝わってきた。
 「うん、聞こえるよ。君の声が。」桜島に向かってみずきはつぶやいた。
 [ウォド]を通じて感じる、寂しそうな人、私と同じくらいの男子。孤独に耐えてきた。
 でも、もう彼は一人ではないんだ。ウォドの空間で共感しあっている。
 彼が見た物質の複雑な音符。すべては音楽。すべては時間と空間。
 それに気がついたんだね。 みずきはやさしい気持ちを送った。 
 「誰に言ってるの?」
 「私を呼んでいる人がいる。そんな気がした。」
 これも、自分の能力?自分の可能性を感じたみずきだった。

 同じ時、夕日の慶良間諸島を病院から見ていた裕一も「声」を聞いた。
 声を聞く。これは自分の『能力』なのか?とても強い力を感じた。恐ろしい爆発の予感も秘めた力。物体をいかようにもあやつれる力。
 これは不安定な爆弾のようなものだ。だいじょうぶか? 彼の能力はその力を解析した。

 ジープにもどった二人はラジオで地震情報を聞いた。
 <さきほど、静岡県東部で震度5弱の地震を観測しました。津波の心配はありません。震源は伊東市南部地下20キロ 火山性微動の可能性があるとの東海地震研究所のコメントが入りました。>

 舜の有り余るエネルギーが発動した瞬間だった。

「あー、また新聞紙面が変わる。一緒に支社にいこ。みずきちゃん。」

 次回 第4話 鍛錬と儀式