良い歯医者を見つけるために賢い患者になりましょう

国民生活センターが2019年におこなったアンケート調査によると、インプラント治療で最も不満な点は「治療費が高額」で37%を占めています。確かにインプラント治療は費用が高額です。

「週刊ダイヤモンド」という雑誌の2019年11月30日号でも歯科の医療費について「歯医者のホント」と題して特集記事を組んでいました。その記事によれば、インプラント治療にかかる原材料費の合計は7万円から10万円と述べています。そう考えれば、平均で1本35万円から40万円ともいわれるインプラントの治療費用は、かなり高額に思えてしまいます。人によっては「ボッタクリ」と罵るようなこともあるかもしれません。

しかし、冷静になって考えてみましょう。例えば飲食店。薄利多売の大手のチェーン店は別にして、個人のお店の食材原価は約30%といわれています。焼肉定食1000円を食べれば、300円の食材原価になるのです。ただ、これに驚く方は少ないでしょう。人件費や家賃、光熱費などがかかっていることを皆さん知っているからです。実は、歯科の世界でも同じことがいえるのです。

インプラントの費用構造について

では、インプラントの費用構造を見ていきましょう。まず、光熱費はもちろん、人件費や家賃など、営利活動をしていれば、当然かかる必要経費です。それに加えて、歯科医院では医療機器の負担があります。

例えばよくある診療用の椅子ですが、ユニットと呼ばれる医療機器です。シンプルなものでも1台200万円前後はかかります。インプラント手術に使用する高機能のものであれば更に高額です。また、歯科用CTスキャンは2千万円から3千万円です。そのほかにも器具を消毒するシステム、専用手術室の設置など医療機器を揃えるには多大な費用が必要になります。また、インプラントの技術取得にも、講習会への参加は数万円、学会への年会費、専門医への認定を受けるためにも数万円程度の手数料がかかります。

このようにインプラント治療の設備や人的資源には多大な投資が必要となっているのが現状です。そして、医科と比較して歯科の保険診療点数は抑えられているため、多くの歯科クリニックがインプラントや矯正治療のような自由診療をおこなっています。だからといって、インプラントの治療費を引き上げることは、あってはならないことです。一部の人は低価格を売りにする格安インプラントに興味を示すこともあるでしょう。しかし、一定の利益が確保できない「格安インプラント」のなかには、必要なものを削って利益を確保しているものもあります。他ならぬ冒頭に紹介した「週刊ダイヤモンド」は数年前に、そのような格安インプラントを問題視していました。

大事なことは、「良い歯医者を見つけるために賢い患者になること」インプラントの費用が高いのには、それなりの理由があります。そして、同じように格安なインプラントにも理由があるのです。費用と設備、そして人的資源を比較して適正価格かを判断し、賢い患者になりましょう。