本日の「譜代大名のお城シリーズ」、「杵築(きつき)城」(大分県杵築市)に訪問します。
望楼型の模擬天守
「杵築城」は、14世紀末に当時この周辺を統治していた「大友家」の家臣「木付(きつき)家」によって築城されます。
二度も「島津家」の猛攻を受けますが、断崖絶壁の台山であったことと「豊臣方」の救援もあって落城は免れ、その後は「豊臣方」の城主が入城します。
関ケ原の戦い時には、当時この辺りを統治していた「細川家」の家臣が居城していて、旧国主だった「大友家」に攻められましたが、「黒田軍」の救援によって「大友軍」を排除しました。
1615年の「一国一城の令」によって廃城となっていた「木付城」に、「小笠原忠知」が入城、その後1645年に「松平(能美)家」が入城し、 1712年には「杵築城」と改名して、幕末・維新まで統治します。
「杵築城」は、海に面する断崖絶壁や川に守られた堅城で、「台山」と呼ばれる台地上に海側から西側に向けて「主郭」である「本丸」「二の丸」「三の丸」が続く「連郭式」の縄張りを持っていました。
断崖絶壁に建つ模擬天守
城縄張り絵図(館内に掲出分)
しかし「本丸」に建てられた天守を落雷等で失ったことや政務が執りずらいこともあったので、「台山」の北西方向に「御殿」を設けて拡充していきました。
更には、「御殿」の西側の高台である「西台」に重臣を中心とした「武家屋敷」や「藩校」を配備し、その次には、「酢屋の坂」を下った辺りに商家を集め、「塩屋の坂」を上がった南側の高台である「南台」の方へ、城下を拡大していきました。
現在は、「本丸」跡には、江戸時代初期に建っていた「天守」が、模擬の望楼型天守として昭和45年に建築され、模擬の門も再築されています。
模擬天守(昭和45年築、西側二の丸跡より)
天守最上階内部
模擬門
模擬天守からの周囲を見渡すことができる眺めは絶景で、東側からは「八坂川」が海に合流する広大な光景を目の当たりにすることができ、西側から南西方向には、「西台」と「南台」の急峻な崖の姿が良く解ります。
天守から海を眺める
北台武家屋敷(天守より)
南台武家屋敷(天守より、河岸段丘の絶壁が見える)
「二の丸」跡は現在「城山公園」となり、「三の丸」跡には「青筠神社」が建ちます。「三の丸」跡西側の入口付近には「大手門」が建ちその両脇には「堀」があったようで、一部「堀」の遺構が見られます。
三の丸跡入口で大手門跡付近
大手門跡脇の堀跡
「主郭」の北側山麓に建てられた「西御殿」「御馬屋」「御殿場」「御武具方」の跡地は、現在「杵築中学校」の敷地となり、「堀」跡との間には「御殿庭園」跡が残ります。
藩主御殿跡(現 杵築中学校裏敷地)
「主郭」から西側にかけて上る「勘定場の坂」沿いの土塀や、上りきった道沿いには多くの「武家屋敷」や「藩校」の一部が残り、江戸時代の風情をしっかりと味わえるエリアとなっています。
勘定場の坂
勘定場の坂沿いに並ぶ土塀と長屋門
藩校「学習館」の現存門
藩校「学習館」の一部が残る
特に、「磯矢邸」と「大原邸」は立派な建造物が残ります。
「磯矢邸」は、1800年頃に建造され、藩主の休憩所として使用された御用屋敷でその後「加藤家」200石の武家屋敷になりました。藩主の御用屋敷に相応しい造りとなっていて、書院造りの御成りの間やそこから障子窓越しにのぞむ庭は絶品です。
磯矢邸の門
磯矢邸(1800年頃築、御用屋敷・武家屋敷の母屋)
磯矢邸、障子窓越しにのぞむ庭
また、「大原邸」は、藩の上席家老を務めた屋敷で、立派な茅葺屋根で、長屋門や回遊式庭園も素晴らしいものがあります。
大原邸(玄関、入母屋造りの茅葺屋根)
大原邸(御用屋敷から家老屋敷に、回遊式庭園から主屋をのぞむ)
大原邸の書院
大原邸の長屋門(中は、厠、湯殿、馬小屋、蔵、門番部屋)
「大原邸」の西側にある「酢屋の坂」は「北台」を下る石畳みの坂で、降り切った所にある十字路は「谷町」という商人の街として道路沿い商家が並びます。
酢屋の坂と御案内箱
谷町付近の商家
「酢屋の坂」を降りながら正面に見える「塩屋の坂」を上り切った所が「南台」となり、現在はこちらにも家老であった「中根邸」の武家屋敷や藩医を代々務めた「佐野家」の建物等が並んでいます。
酢屋の坂から塩屋の坂を見る
塩屋の坂の石畳みと中根邸の長屋門
中根邸の主屋
佐野医院邸、藩の代々御典医
南台にある武家屋敷跡土塀と門
「杵築城」は、32,000石の小大名「松平(能美)家」が支配する拠点でしたが、戦災にも遭わなかったことから広い範囲で古い街並みを堪能でき、江戸時代を身近に感じることができる素晴らしい城下町であります。
小大名のお城でさえ、これだけの範囲に歴史あるモノが存在することから、もし太平洋戦争がなかったならば、今頃は全国あちらこちらで杵築のような街並みを楽しむことができたんだろうなーと、無念さを覚えます。
どうぞ下記バナーのクリックをよろしくお願いいたします。