前回…→共鳴する宙7


プロフェッサーT

「シルフィー、ブレード何回出せる?」


シルフィーⅡ

「うーん、と。…6回分あるよ!(^-^)」


プロフェッサーT

「予定よりだいぶ溜まったな…なら、こっからでもいけるか」


シルフィーⅡのHDM、エンジェルブレード。

それを通常のまま6回連打しただけでは威力も当然6回分にしかならないが、今回は1本のブレードに6倍の結合粒子を収束させることで、その効果が6乗になると言う。


つまり、この小惑星ごとヴァイスミディアムを木っ端微塵に出来るエネルギー量を叩き出せる計算になるらしい。


シルフィーⅡ

「それじゃ…いくよーーー!!!(。>д<)」



宵闇に眩しい光刃が眼下の空へと振り下ろされ…!

閃光と爆音。
遅れて衝撃。

「くっ………やりましたか?」

「楓さん!それ言っちゃダメ!!」

普段は物静かな舞が強い語気で楓をたしなめる。

「え!?」

何時にない迫力の舞に困惑する楓。



小惑星は千々に破壊され、残骸がアステロイドとして宇宙空間に漂う。

肝心のヴァイスミディアムは…

プロフェッサーT
「うし、ヴァイスミディアムも破壊できたが…ちと遅かったか」

観測データからもその存在が確認出来なくなった…つまり、破壊は成功したのだが…。


あの破壊の渦からどうやって生き延びたのか。

ヴァイスミディアムが最後に産み落としたヴァイスの群がこちらを睥睨している。

「あぁ…あんなこと、言うから…」

「え?え??わたし、何かよくない事を言ってしまったのですか?」

がっくりと項垂れる舞。
意味が分からず狼狽する楓。

確かにあれはフラグではあったが…。

今はそれどころではない。

あのエンジェルブレード6乗の衝撃を生き延びたヴァイスだ。
面構えが違う。

対してこちらは楓と舞は戦闘続行不能。
シルフィーⅡも疑似エミッションジェネレータが焼けてしまい、こちらも戦闘参加は不可。

困憊した明日翔だけがこちらの戦力。


…絶望的な状況。
撤退したとして、あのヴァイス群はどうする?

観測された陣容は属性型ケプリ、ヘケト、ヴェスピナエ、ガーデン。
新型で強力なものが揃っている。

何か手は………。
………まだある!

ガーデンを見ていて、ふと閃いた。

通信端末からホットラインでスクランブル要請。

???
「分かりました、ご指名の2名すぐに手配します。輪島"先生"」

プロフェッサーT
「イイネ!輪島ちゃん!その最後まで足掻く姿勢、見込んだ通りだ!ならチャン僕もひとつやってやろうじゃないの!」

プロフェッサーTも何か策があるようだ。
シルフィーⅡを通じて明日翔に呼び掛ける。

プロフェッサーT
「文島ちゃん!チャン僕からのプレゼントだ!受け取りな。出来立てホヤホヤのエニグマシステム、ダウンロード!」

シルフィー達を介して明日翔のドレスギアにエニグマのアップデートが送られる。


ドレスギアが明日翔のエミッションと共鳴を始める。

プロフェッサーT
「ハッ!ハハッ!!結合深度264だって!?計測間違いじゃないよな…成る程成る程!道理で強いわけだ!!とんだ怪物ぶりだ!チャン僕が鍛えた吾妻ちゃんと二子玉ちゃんですら87だぞ!?その3倍超なんて信じられるか!?」

明日翔の更新されたギアのデータを見てお祭り騒ぎで小躍りするプロフェッサーT。

プロフェッサーTが言うに、結合深度はどれだけドレスギアを使ってきたか…つまり戦闘経験に由来するものだと言う。

そしてそろそろ…。

??1
「もうっ!成子坂当番、この前終わったばっかりなんだけど!?」

??2
「また先生のお役に立てて嬉しいです」

私の奥の手も転送された。


Codeブルー。
星守アクトレスによる成子坂当番。

私が明日翔と並んで信頼を寄せる、神樹の加護を受けた少女達。


これなら、いける!

あんこ
「アンタが明日翔?先生からアンタの事はよく聞いてたけど…当てにしてるわよ?」

明日翔
「は~い、よろしくお願いします~」


明日翔
「それじゃ~いきますよ~」

エニグマをダウンロードした事で明日翔の戦力がどこまで向上したのか。

フェアリーハート隊にも何人が導入例があり、そのいずれも劇的な変化を遂げてきた。

だがそれでも明日翔には誰も届かなかったのだが、その当の本人が劇的に変化したのなら…。


先鋒の属性型ケプリは…見る間に爆散することになった。

こちらの被害は無し。
正に圧倒的。

あんこ
「何よ、めちゃくちゃ強いじゃないのよ。明日翔ひとりでも大丈夫なんじゃないの?」

くるみ
「あんこ先輩、まだ始まったばかりです。気を抜かずにいきましょう」



爆散したケプリの残骸を蹴散らして、間髪入れずヘケトが襲いかかる。

巨大な爆雷を散布する、空間制圧能力の高い種だ。


だが明日翔は怯みもせずに挑みかかり、爆雷諸ともヘケトに銃弾を撃ち込んでいく。

だが明日翔のレールガンは貫通力こそ高いが、広範囲に配置された爆雷に対処するのは難しい。

あんこ
「危ない!」

撃ち漏らした爆雷に取り囲まれてしまった明日翔を突き飛ばすように、あんこが割って入る。


あんこ
「ま、こんなもんかしらね?」

明日翔
「助かりました~」

くるみ
「お二人は少し休んで下さい。わたしが道を拓きます」


くるみはそう言うとアネモネを携えて大立ち回りを見せる。

くるみ
「ごめんなさい。通してください」

獅子奮迅の戦いぶりで敵陣を叩き潰していく。


明日翔
「ありがとうございました~」

くるみが明日翔に道を譲り、明日翔がレールガンを構える。


ヴェスピナエ。
ほんの先日確認されたばかりの新型中の新型。

兎に角素早く、一定距離内に捉えると即座に後退する挙動の為、近接戦闘に持ち込むのは至難。

つまり射撃で撃ち落とすしかないのだが、それは明日翔にとっては望むところだ。

くるみ
(なんだろう…嫌な感じ)


ヴェスピナエがエネルギーを収束させて放つビーム砲の凪払いに対して、くるみが身を挺して明日翔を庇い、捨て身の一撃を叩き込む。

くるみ
「あとをお願いします」


くるみの拓いた血路を無駄にする明日翔ではない。

あんこ
「くるみ、アンタ無茶しすぎよ。次はあたしが行くから」



最後に控えるはガーデン。
ヒュドラ種に並ぶ巨体には圧倒される。

あんこ
「何あれ?ズングラ?」



…やはりあんこもそう思ったか。
そのお陰で神樹ヶ峰に救援することを思い付いたのだが。


あんこ
「ん?バリア張ってない?グラトニーとか聞いてないわよ!」


何故植物型のクリーチャーはバリアを張るのだろうか。

ヴァイスは生命体を補食して、その特性を取り込む等と言う噂話がアンダーシャードに出回った時期もあったが、まさか本当にヴァイスがイロウスを補食したのだろうか。

Codeブルーではイロウスがヴァイスを乗っ取ったファラエナを相手にしたが、これはその逆パターンなのか。

ガーデンに対しては明日翔とあんこが役割分担して、攻略を進めている。

より身軽な明日翔がスプラウトを刈り取り、本体にあんこが撃ち込む。


だが本体のバリアを解除しても、周囲のスプラウトが完全に沈黙する事はない。

本体を守ろうとあんこに向けて全方位から熱線が殺到する。

明日翔
「今度はわたしが~」

ヘケトの時に庇ってもらった恩を返そうと、明日翔が熱線の焦点に飛び入り、レールガンを放つ。


ガーデンの撃破を確認。

明日翔ひとりではどうなっていたことか。

有難う星守クラス。

物思いに耽る私の隣ではプロフェッサーTが狂ったように喝采を挙げている。

プロフェッサーT
「星守ちゃんのデータも取れるとは、今日は人生最良の日だ!」

…少しはシャードの無事を安堵したり、奮闘しまアクトレスと星守に感謝を示したり出来ないのだろうか。

次回…→共鳴する宙 終幕