前回→…金蓮花の花束を6 




右舷側の戦闘開始からしばし遅れて左舷側のメンバーが集結した。



薫子
「久しぶりね、このメンバーで戦うのは」



フェアリーハート隊がまだ「隊」となる以前。

私が発案したアクトレスユニット、フェアリーハートのコンセプトは「回復しながら粘り強く戦う」防衛戦に主眼を置いたチームとして、SPスキルに回復機能を持つ面々を召集した。

それがこの三名である。

前衛の薫子をリーダーに後方狙撃の明日翔、そして戦術支援として愛花。

今のフェアリーハート隊内でも特に「原初のフェアリー」として一目置かれている。

フェアリーハート計画は順調に進展し、アクトレスユニットの域を超えて隊となり、様々な編成で出撃する機会が増えた事で、こうした古馴染の組み合わせも減っていた。



薫子
「隊長がこの戦闘空域に文島さんを送りこんだのは、あなたにジェズルを実際に体験させる為でしょう」

愛花
「じゃぁわたしたちは水先案内人ですね。明日翔さんを無事にジェズルまで案内しないとですね」

そして敵陣に突入する。


薫子
「ふぅ!…それじゃ後はお願いね」

VWヘヴィを瞬く間に沈める薫子。
フェアリーハート隊のリーダーはやはり伊達ではない。

重力のティタニアの座も本来は薫子に任せたかったが、本人は「後進に道を譲る」と入隊したばかりの絵美を指名した。

ティタニアの座に就く事はなかったが、それと比べても全く遜色の無い、見事な戦運びは流石の一言に尽きる。

薫子本人の後進の指導に当たりたいと希望もあったので、隊内に軋轢を生むことはなかったが…やはり勿体無いと思うところはある。

愛花
「次はわたしの番ですね」


愛花
「明日翔さん!お願いします!」

ここまでの道中、露払いからジェズルに機能不全プログラムを送り込む独特なHDMを解放し、お膳立てを整えた上で明日翔に場を譲る。

明日翔
「ありがとうございます~」

チームメイトから支援を受けて、ジェズルの動きを、パターンをひとつずつ確認するように明日翔は翔ぶ。


そしてジェズルを撃破。
かなり激しい猛攻に曝されながらも、三人とも損害は微々たるもの。

全員が回復用のHDMを持つ「原初のフェアリー」、フェアリーハートの真髄とも言える見事な戦いぶりだった。

これで中層の制圧も完了となる。

光里
「1日で片が付いたわね」

浅層のフェアリーの活躍を魅せる進行とは違い、中層は軍略的な運用を主とした結果だろう。

そして表向きにはこれでパルミラ宙域の脅威は排除された事になる。

だが本番はここからだ。


深層。
強力なヴァイスが息づく、あまりにも危険な領域。

東京シャードが恐慌に陥るのを危惧したのか。
はたまたSINの活動を助長しかねないと判断されたのか。

Aegisは常に深層の存在を秘匿し、極秘裏に処理している。



報道陣も引き上げ、残るは我々のみとなった翌日。

誰の目にも映らない、栄光無き戦いが始まる。