オーキッシュバイウェイ。
人間の国でも最も西にある都市。
そしてその名の通りオークの国に最も近い都市でもある。
わたしは今、その街にやってきていた。

本来の目的はリオシラスが派遣した調査隊の行方を調べることなんだけど、ちょっとした成り行きでもう一つ目的がある。
奴隷商人への奇襲。
だが…この街は今それどころの話ではない。
何でもこの街のすぐ側にある谷から大きな岩の化け物が現れて街存亡の危機に晒されていると言う。

「頼む助けてくれ!あいつを何とかしてくれるなら何でも言う事を聞く!」
わたしのその情報をもたらしたのはあろうことかわたしが攻撃対象にしていた奴隷商人その人。
普通に考えたら何かの罠か時間稼ぎと見るべきなんだろうけど、困ったことに岩の化け物と言うのは本当にいるらしい。

この奴隷商人だけでなく街全体が慌ただしく、化け物から街を守ろうとする人、避難しようと荷物をまとめる人やらでかなり混乱している。
中には諦めて酒場で大酒煽ってるようなのもいるみたいだけど…。
まぁそれはともかく。

「ほんっとうに何でも…言う事を聞くのね?」
「あぁ誓う、誓うから!だから頼むセラフィム様!お慈悲を!」
…この龍姫がセラフィムと言う種族で天使の様な存在だとは聞いていたけど…正に神様仏様と言わんばかりの態度ね。

「わかったわ…じゃぁ奴隷商人から足を洗いなさい」
「な!?…いや、分かりました。もう悪事からは足を洗いますので何卒!何卒!!」
これで奴隷商人も大人しくなるだろう。
あとはその話に聞いた岩の化け物だ。

街のすぐそこにある小高い丘を登るとその中心部が抉れていて、この底にいると言うのだけど…。
わたしは戦う準備を整えるとトラで一気に逆落としを仕掛ける!
かなり急な斜面をもはや転がり落ちるような感じで駆け下りると…確かに何か岩男みたいなのがいる。
あれだけ街を混乱させるからどれだけ大きいのかと思っていたけど、実際見てみるとそれほど大きくないわね。
見たところ身の丈6~7m程度かしら。
わたしの勝手な想像では15mくらいあるものかと思っていたけど、そこまでのものでは無かったみたい。
ガルコロッサス! 
これなら充分に戦える相手だろう。

わたしはトラで谷底まで降りると問答も無くBFGを撃ち放つ!
…が、BFGから撃ち出されたマジカ弾は命中する直前で何かに弾かれてしまう…。
(ふむ、どうやらバリアを張っておるようじゃの)
龍姫の見立てでは向こうもマジカによるバリアを展開しているらしい。
中々小癪なヤツね。
…まぁわたしも龍姫の使える防御魔法の一つとして防護フィールドを張り巡らせているからお互い様と言えばお互い様なんだけど。

兎にも角にも逆落としからの奇襲は失敗。
後は正面切ってのバリアの削り合いになる。
わたしのBFGに対して、向こうはその大柄な体を生かしてそこかしこに転がっている岩をブン投げてくる。
けどわたしと向こうで圧倒的に違う物が一つ。

それは機動力。
どんな攻撃も当たらなければ無意味、とは誰が言った言葉だったか。
わたしはトラで縦横無尽に駆けながらBFGで岩男のバリアを減衰させていく。
…そして。
バリアを打ち破られた岩男の辿り着く末路は…瓦礫の山。

終わったわね。
わたしはトラをぺたぺたと撫でると…うんざりするような急斜面を登り始めた。
まぁ実際登ってるのはトラなんだけどね。