身分証明書代わりの杖を貰って一旦大学を出る。
「あぁ!いたいた、やっと見つけたよ」
そこでアミューゼイと出会う。よもや偶然と言うことはないだろう。
…と言うことはグレイフォックスからの伝令か。

「最後の大仕事だ。準備は良いか?」
「大丈夫よ」
「これはとてつもない大仕事だ。成し遂げれば長年に渡り語り継がれる伝説になるだろう!」
グレイフォックスも何だか興奮気味に熱く語る。
「で、最後に盗むのは何かしら?」
「星霜の書の一つを盗み出す!」

星霜の書!?
この世の全てが記されていると言われるあの伝説の書を!?
グレイフォックスが三つの品を寄越して説明を始める。
「この計画は十一年にも渡り練り上げられたものだ。それに必要な情報があの宝玉によって判明した」
星霜の書は王宮の開けることのできない扉の向こうにあるのだけど、その開かずの扉を迂回して忍び込める道を探り当てたと言う。
「その為にはまず王宮地下の大きな砂時計を起動しないといけない」
そしてその後に…さっき渡された品の一つ、帝都下水道の鍵で地下道を行くことになる。
その地下道は太古の時代に避難路として使われていたものだと言う。

「その古い避難路ってどんなところなのかしら?」
「それは分からん。宝玉で必要な物は分かったが、何が潜んでいるのか、どんな危険があるのかは分からん」
そこまで言うとスプリングヒールジャックの靴を指し示す。
「この靴があれば普通では辿り着けないような場所にも到達できるだろうし、また高所から飛び降りる時にお前の身を守ってくれるはずだ」
まったく割とノープランな感じね。
必要な物が分かってもそれをどこで使うのか、どう言うルートを取れば安全なのかが全く分からない。

そして最後の品、解放の矢を指す。
「この解放の矢が最後の扉を開くカギになる。これをお前に託す」
「侵入はともかく、星霜の書はどこに隠してあるのか分かるの?」
それ程の重要な書物だ。おいそれと目に付くような場所には置いてないだろう。
「王宮の閲覧室で盲目の僧がお前に書を閲覧できるように手配してある。だが、お前は絶対に声を出すなよ?」
何でもわたしはセリア・キャモランの代わりに閲覧室に入ることになってるそうな。
だから無言で訪れ、椅子に座るだけで後はあの聖蚕会の盲目僧が持って来てくれるそうだ。
それを取って出てくればいいのか。

そこまで聞いたわたしはグレイフォックスと別れ、準備にかかる。
今回は並みならぬ難易度になるだろう。
わたしは一旦レヤウィンの自宅に戻ると錬金術の設備と薬の素材を準備する。
造るのは暗視の霊薬と透明化の霊薬だ。
どのくらい必要なのかは分からないので、わたしの予想する量の倍を造っておく。

「さて、と。それじゃ行ってみますか」
わたしは帝都に戻りまずは白金の塔を目指す。
地下の宝物庫にある大きな砂時計…これが一体何なのかは分からない。
砂時計の形をしているのだから、恐らく時間に関する何かを制御しているんだろうと思う。
色々調べてみたいけど、そんな悠長なことをやってられるような場所ではない。
わたしは足早に宝物庫を去り、指定された下水道にこっそりと滑り込む。

下水道を通り抜けた先には太古の避難路…。
そこはまるでアイレイドの遺跡の様になっていて、亡者達の巣窟になっていた。
わたしは暗視の霊薬と透明化の霊薬で亡者達の隙間を抜けていく…が、扉に行く手を阻まれる。
扉は直接開けるのは難しそう…辺りを見回して仕掛けを探すと…あった!かなり高い所にスイッチが二つ。
行く手を阻む格子戸も二枚。
でもどうする?普通では手が届きそうも無い。
わたしは靴をスプリングヒールジャックに履き替えると
「せーのっ!」
助走をつけて一気に飛び上がる。
成程ねぇ…あの宝珠でこう言う場所を調べていたのか。

二枚の格子戸を抜けた先には…大きな彫像が置かれた広間だった。
如何にも何かありますと強く自己主張する大きな彫像。
アレをどうにかすると先に進めるのだろう。
わたしは広間の隣にある小部屋とその先にある通路をつぶさに調べる。
何だか良く分からないけどスイッチが幾つか。
動かせるところを余さず起動して広間に戻ると…広間入り口付近に会った大きな柱が無くなっており、祭壇の様な場所に行けるようになっていた。

「何の祭壇かしら?」
祭壇には感圧板が設置されていて、そこに乗るとがごん!と音を立ててあの大きな彫像が動き出す。
そしてこっちを振り向いた彫像の胸元には光り輝く鍵穴。
解放の矢を放つ! 
あれか…と思い感圧板を降りると彫像は元の様にこちらに背を向けて鍵穴を隠してしまう。
「…」

つまりそう言う事か。
わたしは感圧板に乗り、解放の矢を弓に番える。
「当たってよ…?」
彫像の胸元までかなり距離がある。相当な遠的だ。
じっくりと狙いを定めて…射る!
開放の矢は胸元の鍵穴に吸い込まれるように突き刺さり…彫像の下に道が現れた。