道のりは順調に進み、次の目的地はブラヴィル。
でもコロールからブラヴィルと言うのはかなり距離があり、途中で何泊もしないといけない。
そんな中での話。

まだ頃合いは昼なんだけど、ここから先ブラヴィルまで宿場は無い。
だから日はまだ高くても何時もここで宿を取っている。
明日の早朝に発てば日が暮れる前にはブラヴィルに着けるはずだ。

でも今日はちょっと何時もと様子が違う。
この宿で振る舞ってる自慢のポテトパンが無い。
そして奥の方でカジートの女の子、シジーラがめそめそしてる。
あの子は確か…この宿でポテトパンを焼いてる子だったはず。
何かあったのかな?

「どうしたの?」
「ジャガイモが盗られちゃったんです。これからパンを焼こうと思ってたのに、酷いです」
何でもポテトパンの材料を誰かに盗まれたと言う。
「ジャガイモを天日干ししてたんですけど、取りに言ったら無くなってて…その時森に入っていく人影が見えたんですけど、追いかけるのも怖くて」
ふぅむ、それは困った奴もいたものね。
ここのポテトパンは結構美味しいから楽しみにしてたんだけど…。

…行ってみますか!
普段なら面倒臭いと知らん顔するところだけど、何故か今日は興が乗ったのでジャガイモ泥棒を追ってみることにした。
森に入って行ったって言うけど…ボズマーに森で勝てると思ってはいけない。

宿の隣にある畑をまず見てみる。
…なんだかやたらと大きな足跡が森に向かって伸びている。
この大きさだと人間では無さそうね。
その足跡を追って森の木々を分け入っていく。

すると…いた。
人間に形は似てるけど大きさが段違い。
オーガだ。
大きな人影…? 
しかも何かもしゃもしゃ齧ってる…まずいわね。多分ジャガイモだわ。
急がないと全部食べられちゃう。

わたしは急ぎ矢に毒を塗って素早く打ち込む。
食事中を邪魔されて怒髪天を突くオーガ。
まぁオーガに髪の毛は無いんだけど。

「あ!ジャガイモ!取り返してくれたんですね!」
わたしが戻ると目敏くジャガイモに気付いたようで、シジーラが駆け寄ってくる。
「ありがとうございます!もうキスしちゃいたい気分です!」
シジーラは大喜びで厨房にジャガイモを持っていくと手際よく準備をしてパンを焼いていく。
夕飯の食卓にはポテトパンが並ぶ。
うん、やっぱりここに泊まるならこれが無いとね。