さぁて、っと。
次はどっちに行こうかなぁ。
推薦状をまだ貰ってないのは、ブルーマ、ブラヴィル、そして我が家のあるレヤウィン。
見事に南北に分かれてくれたわね。
…うーん。つまりどっちから回ってもシロディールを半周することになるのか。
わたしはしばらく迷ったけど、結局北に進路を取った。
旅慣れた道のりを行った方が良いだろう。理由はそれだけ。
「あら、初めての方…よね?新人さんは大歓迎よ」
妙に人懐っこいブレトンの女性、ジョアンがわたしを出迎える。
何でもこの人がブルーマの支部長だと言う。
わたしは早速推薦状のことを切り出すと…ジョアンはこれは好機と言わんばかりに表情を輝かせる。
「これはあたし達が共に助け合える良い機会みたいね」
そう言うとわたしに課題として人探しを言い渡す。
行方不明になったのはジュスカール。名前からしてカジートの人か。
そのジュスカールが最近姿を見かけないと言う。
そこでジュスカールと親しいヴォラナロに話を聞いてみたんだけど、どうも魔法の実験で失敗した副作用で何かあったんじゃないか、と言ってるそうな。
それ、本当ならかなりの大事なんだけど。
「もし評議会の誰かが不意に訪ねて来てこの状況を知られるとまずいのよ」
だから早い内に解決したいとジョアンは言う。
それにしても手がかりが無さすぎるわね。
副作用で何かが、と言われても…長距離転移とかだったらどこに行ったのかもわからないし、もし大怪我で動けない…ならまだしも死んでたりしたら手の打ちようも無い。
まずはそのヴォラナロにもう少し話を聞いてみないと何とも言えないわね。
「ジュスカールを探してるのかい?良いぜ。ならちょっと手伝ってくれよ」
「手伝う?何を?」
ジュスカール探しに協力する代わりにわたしに何かをやらせたいらしい。
「へへ。今から術を教えるから、それでジョアンの机の引き出しから”魔法の手引き”って本を拝借してきてほしいのさ」
「拝借、ねぇ」
要するに盗んで来いって事か。
「いやいや、後でちゃんと返すぜ?」
大体カツアゲする奴とかはこう言うのよね。返す気なんてさらさらない癖に。
まぁ良いか。
そんな初心者向けの本なんて無くても支部長も困ることは無いだろうし。
別に机の鍵を開けるくらい術なんて使わなくてもワケ無いんだけど…折角だから試しに使ってみるか。
わたしは念を込めて指先から術を放つ。
…お、本当に開いてるわ。ある意味便利な術ね。
それにしても死霊術なんかよりもこう言った術を禁止した方が良いんじゃないかしら?
こんな簡単な術で鍵が開けられると知ったら盗賊ギルドの面々はこぞって魔術師ギルドに加入するような気がする。
特にシェイディンハルの支部あたりは大人気スポットになる事だろう。
まぁそれはさておき。
指定された本を引き出しから取り出す。
これを渡せばジュスカール探しを手伝ってくれるのか。
そう思いながら何の気無しに本をぱらぱらと捲ってみる。こればかりは性分なので仕方が無い。
本を見ると読まずにはいられないのだ。
…ん?それにしても色々書きこまれてるわね。何と言うか魔法の素人でも知ってるようなことまで書き留めてある。
新米の頃に余程熱心に勉強したのかしら。
わたしはそれを持って地下の居住区に戻ってきた…ところで違和感を感じる。
誰も居ないのに部屋の扉が開いた?
…わたしは目を凝らして扉の辺りを凝視する。
…何か…いるわね。
「そこにいるのは誰?」
「しーっ!今悪戯の最中なんだから俺に話しかけてくるなよ」
やっぱりいる。
「ひょっとして…ジュスカール?」
「だから話しかけるなって」
「何してんの?」
「頼む、後生だから…話しかけないで下さい。お願いします」
敬語を使ってまでわたしの追及を逃れようとするジュスカール。
「まぁ良いわ」
わたしは追及をやめると本をヴォラナロに渡しに行く。
「お、やってくれたね。オッケー。じゃぁ夜の十時にまたこの部屋に来てくれ」
「…さっきジュスカールに会ったんだけど?」
「だぁぁ!もう!だから悪戯なんだってこれは」
何が目的か知らないけど、この二人はジョアンを困らせるのが生きがいだと言う。
…何なのかしら?ひょっとして好きな子に意地悪せずにはいられない男の子みたいな感じなのかしら?
「何なのか知らないけど、後でちゃんと説明してよね」
「分かったよ。だからあと少し…夜まで待ってくれ」
そして約束の時間。
「それじゃ種明かしだ」
そう言うとヴォラナロは解呪の術を放つ。
そして姿を現すジュスカール。
何のことは無い透明化の術だ。
「で、一体何なの?」
わたしは二人に問い質す。
どうやらこの二人は魔法をロクに使えない癖に支部長に収まってるジョアンが気に入らないらしい。
支部長が魔法を使えない?そんなことあるのかしら。
だけどそれについては思い当るところもある。
机に鍵をかけてまで厳重に仕舞っている”魔法の手引き”…そして余白に書き込まれたメモ。
この二人が言う事は…恐らく本当の事なんだろう。
夜も遅かったので、翌朝になってからジョアンにジュスカール発見の報を伝える。
「見付かったの?良かった。じゃぁ推薦状は出しておくわ」
何だか落ち着かない素振りを見せるジョアン。
わたしも用は済んだので支部を発とうとするその背後で彼女の呟きが聞こえる。
「あの本、どこに行ったのかしら?困ったわね…」
次はどっちに行こうかなぁ。
推薦状をまだ貰ってないのは、ブルーマ、ブラヴィル、そして我が家のあるレヤウィン。
見事に南北に分かれてくれたわね。
…うーん。つまりどっちから回ってもシロディールを半周することになるのか。
わたしはしばらく迷ったけど、結局北に進路を取った。
旅慣れた道のりを行った方が良いだろう。理由はそれだけ。
「あら、初めての方…よね?新人さんは大歓迎よ」
妙に人懐っこいブレトンの女性、ジョアンがわたしを出迎える。
何でもこの人がブルーマの支部長だと言う。
わたしは早速推薦状のことを切り出すと…ジョアンはこれは好機と言わんばかりに表情を輝かせる。
「これはあたし達が共に助け合える良い機会みたいね」
そう言うとわたしに課題として人探しを言い渡す。
行方不明になったのはジュスカール。名前からしてカジートの人か。
そのジュスカールが最近姿を見かけないと言う。
そこでジュスカールと親しいヴォラナロに話を聞いてみたんだけど、どうも魔法の実験で失敗した副作用で何かあったんじゃないか、と言ってるそうな。
それ、本当ならかなりの大事なんだけど。
「もし評議会の誰かが不意に訪ねて来てこの状況を知られるとまずいのよ」
だから早い内に解決したいとジョアンは言う。
それにしても手がかりが無さすぎるわね。
副作用で何かが、と言われても…長距離転移とかだったらどこに行ったのかもわからないし、もし大怪我で動けない…ならまだしも死んでたりしたら手の打ちようも無い。
まずはそのヴォラナロにもう少し話を聞いてみないと何とも言えないわね。
「ジュスカールを探してるのかい?良いぜ。ならちょっと手伝ってくれよ」

「手伝う?何を?」
ジュスカール探しに協力する代わりにわたしに何かをやらせたいらしい。
「へへ。今から術を教えるから、それでジョアンの机の引き出しから”魔法の手引き”って本を拝借してきてほしいのさ」
「拝借、ねぇ」
要するに盗んで来いって事か。
「いやいや、後でちゃんと返すぜ?」
大体カツアゲする奴とかはこう言うのよね。返す気なんてさらさらない癖に。
まぁ良いか。
そんな初心者向けの本なんて無くても支部長も困ることは無いだろうし。
別に机の鍵を開けるくらい術なんて使わなくてもワケ無いんだけど…折角だから試しに使ってみるか。
わたしは念を込めて指先から術を放つ。
…お、本当に開いてるわ。ある意味便利な術ね。
それにしても死霊術なんかよりもこう言った術を禁止した方が良いんじゃないかしら?
こんな簡単な術で鍵が開けられると知ったら盗賊ギルドの面々はこぞって魔術師ギルドに加入するような気がする。
特にシェイディンハルの支部あたりは大人気スポットになる事だろう。
まぁそれはさておき。
指定された本を引き出しから取り出す。
これを渡せばジュスカール探しを手伝ってくれるのか。
そう思いながら何の気無しに本をぱらぱらと捲ってみる。こればかりは性分なので仕方が無い。
本を見ると読まずにはいられないのだ。
…ん?それにしても色々書きこまれてるわね。何と言うか魔法の素人でも知ってるようなことまで書き留めてある。
新米の頃に余程熱心に勉強したのかしら。
わたしはそれを持って地下の居住区に戻ってきた…ところで違和感を感じる。
誰も居ないのに部屋の扉が開いた?
…わたしは目を凝らして扉の辺りを凝視する。
…何か…いるわね。
「そこにいるのは誰?」
「しーっ!今悪戯の最中なんだから俺に話しかけてくるなよ」
やっぱりいる。
「ひょっとして…ジュスカール?」
「だから話しかけるなって」
「何してんの?」
「頼む、後生だから…話しかけないで下さい。お願いします」
敬語を使ってまでわたしの追及を逃れようとするジュスカール。
「まぁ良いわ」
わたしは追及をやめると本をヴォラナロに渡しに行く。
「お、やってくれたね。オッケー。じゃぁ夜の十時にまたこの部屋に来てくれ」
「…さっきジュスカールに会ったんだけど?」
「だぁぁ!もう!だから悪戯なんだってこれは」
何が目的か知らないけど、この二人はジョアンを困らせるのが生きがいだと言う。
…何なのかしら?ひょっとして好きな子に意地悪せずにはいられない男の子みたいな感じなのかしら?
「何なのか知らないけど、後でちゃんと説明してよね」
「分かったよ。だからあと少し…夜まで待ってくれ」
そして約束の時間。
「それじゃ種明かしだ」
そう言うとヴォラナロは解呪の術を放つ。
そして姿を現すジュスカール。
何のことは無い透明化の術だ。
「で、一体何なの?」
わたしは二人に問い質す。
どうやらこの二人は魔法をロクに使えない癖に支部長に収まってるジョアンが気に入らないらしい。
支部長が魔法を使えない?そんなことあるのかしら。
だけどそれについては思い当るところもある。
机に鍵をかけてまで厳重に仕舞っている”魔法の手引き”…そして余白に書き込まれたメモ。
この二人が言う事は…恐らく本当の事なんだろう。
夜も遅かったので、翌朝になってからジョアンにジュスカール発見の報を伝える。
「見付かったの?良かった。じゃぁ推薦状は出しておくわ」
何だか落ち着かない素振りを見せるジョアン。
わたしも用は済んだので支部を発とうとするその背後で彼女の呟きが聞こえる。
「あの本、どこに行ったのかしら?困ったわね…」