まったくとんだ回り道だったわ。
闇の一党に指定された砦はマラキャスの祠すぐ近くにあった。
まったく砦って言うから頑丈な建物を探していたら、実態は朽ち果てた砦跡のようなものだ。

わたしは早速と砦跡地に忍びこむ。
しかし何でこんなところに拠点を構えるのかしらね。
傭兵団って言ってももう少し街に近いところを拠点にしても良いと思うんだけど。
こんなところじゃ依頼に来るお客さんも大変じゃないかしら?
それはともかくこの砦跡地、中はまだしっかりとしてるわね。外はぼろぼろだけど中は充分に現役だ。

そしていきなり門番が居る。
見張り 
まぁそれはそうだろう。
でもこれじゃ中に入れない。何か迂回できる道を探さないと…と思って周りを見回すと何か勝手口みたいなのがある。
こっちからいけるかしら?
わたしは小さな格子扉を静かに押し開くと奥へと忍び込んだ。

「分からねぇな。あの薬は治療になってるのか?あんな高熱を出したまま生きてるなんてよ?」
唐突に話声が聞こえてぎょっとしたけど…どうやら砦の内部に来れたみたいね。
傭兵団の団員がお喋りしている。
どうも団長の事みたいだけど…かなり病状は悪いようね。

その話声を横にわたしはさらに奥へと進む。
すると息も絶え絶えに床に伏している人が居る。
…恐らくこの人が団長か。
ならこの近くに戸棚が……あった。
そして中には情報通りの薬瓶。
わたしはそれを持ってきた毒薬とすり替える。

しかしまたこんな人か。
この前のフェイリアンと言い、ほっといても死にそうな人に限って暗殺が依頼されている。
一体何なのかしらね。
わたしは団員に出くわさないよう、来た道を引き返した。