聖域でわたしは毒薬の瓶を受け取る。
これをとある砦に一軍を構える傭兵団の団長に盛るのが今回の仕事なんだけど…。
その砦はアンヴィルの郊外にあるって言うんだけど、まったく見付からない。
こっちの方は全然土地勘が無いからなぁ。

迷ってうろうろしているうちにわたしは嫌な声を聴くことになる。
その声は怒髪天を突くと言わんばかりのものだった。
「おいそこのお前!すぐそこにドラッドってやつが住んでやがる!そいつのところからオーガを助けてきやがれ!!」
まさかこんなところにあるとはね…マラキャスの祠が。
マラキャス 

そしてマラキャスその人はドラッドって人がオーガを奴隷にしていることが許せないと怒り心頭。
「ふざけやがって!オーガは俺様の弟分だろうが!!あの蛆虫野郎!俺様は認めねぇ!認めねぇぞ!!」
さわらぬ神に何とやら、とは言うけど迂闊に断りでもしたらわたしまで殴り殺されそうな勢いだ。
まぁ実際に殴られることはないだろうけど。
とにかくマラキャス本人からはまともな話が聞けないので、信者の人に要約してもらうと
すぐそこで農園を経営しているドラッドと言うダンマーが鉱山にオーガを繋いで奴隷の様に扱っていると言う。
農作業や鉱山労働をさせて優雅に暮らしているんだそうな。
しっかしまぁよくオーガに言う事聞かせられたわね。そっちの方が凄いわ。
ともかくそのオーガを助けてやってくれと言うことだ。

「いやぁここは良い土地ですね。農作物もですが、何より鉱物資源が豊富だ」
わたしが訪ねたドラッド氏はご機嫌だ。
「しかも私は働き手としてオーガの捕獲に成功しました。あの害獣もこうすれば人の役に立つわけですよ」
あんな脳みそも無さそうなヤツを捕獲して作業させられるんだから、何かノウハウがあるのだろう。
わたしもそこには興味が沸いたので、色々聞いてみたけど「企業秘密ってやつですよ」とはぐらかされた。
まぁ良いや。そう言う術なら人に聞かずともわたしが自分で作ってみるのも面白いだろう。

わたしはオーガを繋いでいると言う鉱山に向かう。
鉱山の中には完全武装した看守が詰めている。
まぁそりゃそうか。何かあったら危ないだろうし。
わたしはこっそりと看守達の隙間を抜けて牢に辿り着く。
流石にオーガ相手じゃ人間が武装していても分が悪いだろうと思い鍵を開ける。
オーガも日頃の鬱憤をはらさんと飛び出したんだけど…。

驚いたことに看守達の方が戦力で上回ってしまった。
これは参ったわね。まさかオーガの群れを制圧しちゃうとは思いもしなかった。
どうもまだオーガは捕まってるみたいだけど、これじゃ迂闊に逃がす訳にもいかない。
結局わたしがどうにかするしかない、ってことか。

わたしは鉱山の暗闇に紛れて毒矢を放つ。
毎度毎度同じことを、と言うなかれ。
わたしが手っ取り早く戦うにはこれが一番なのだ。
看守達が毒で泡吹いている間にオーガを逃がす。

「良くやった!弟分達もこれで自由の身だ!あの糞蟲野郎が今や逆に泥を食わされてると来た!こいつぁ良い!実に良い!!ぶわーはははは!!」
マラキャスはご機嫌だ。

後日風の噂でこんな話を聞いた。
「アンヴィルの北にある農園でオーガの奴隷になってるダンマーがいる」
…まぁ因果応報、ってことなのかしらね?