途中で一泊したものの、アンヴィルに到着したのは結局夕方になってしまった。
これじゃ今から推薦状、と言うわけにもいかないわね。
わたしは港の酒場に繰り出すとバカンス気分でお酒を頼む。

どうもこのアンヴィルと言う街は何時来ても観光みたいな気分になる。
シロディールの都市でもかなり趣が違う街だからだろうか?
レヤウィンも海に面しているはずなんだけど、ここアンヴィルの様な潮の香りと言うのは感じられない。
この潮の香りと言うのが曲者で、これを嗅ぐとどうも気分が浮き立ってしまう。

そんな浮かれた気分で楽しく飲んでいると、何時の間にか女が二人連れだってわたしのテーブルまで来ていた。
「こんばんは!」
「?こんばんは」
知らない顔ぶれに挨拶されてわたしも釣られて挨拶を返す。
「見かけない顔ね」
女盗賊団の頭 
女達は図々しくテーブルの空いた椅子に座るとわたしに話しかけてくる。
「こっちにはあんまり来ないからね」
わたしは胡散臭げに返事する。
「…ふぅん」
何だかしげしげと見られている。
「腕は立ちそうね?見た目も結構良いし…どう?一緒に稼がない?」

一体何の話かしら?
腕が立ちそうってことは荒事があるんだろうけど…見た目まで関わってくるとなると…?
ただ冒険仲間を探している、と言う風では無さそうね。
「…何の話しかしら?」
わたしはグラスを傾けながら目の前の女達に問いかける。
「そうねぇ…ここは人が多いからちょっと話し辛いわね」
そう言うと郊外にある打ち捨てられた農場を指定してきた。
そこで細かい話をすると言う。

…間違いないわね。犯罪のお誘いだ。
でもどうする?盗賊ギルドの仲間だろうか?まさか闇の一党のアンヴィル聖域の連中ってことはまず無いだろう。
盗賊ギルド内ではもはやわたしの地位に及ぶ者はそう居ない。何せ今やグレイフォックスの片腕にまでなっている。
何かあってもこっちの方がまず格上だと思う。
なら話だけでも聞いてみるか。
わたしはその女達に案内されるまま農場に着いていく。

そこで彼女達が何をしているのか教えてもらう。
何でも酒場で酔った男を誘い出しては身ぐるみを剥いでるそうな。
だから見た目も重要なのか。
被害に遭った男の方は面子を気にして通報しないのが多いからかなり安全に稼げると豪語している。

一応念の為に盗賊ギルドのことを確認してみると、どうもギルドとは関係無いフリーの盗賊団らしい。
なら手を貸す理由も無い。
わたしはすっぱりと断ると女盗賊団は逆上してわたしに襲い掛かる。
「残念だわ…あんたを殺すしかないわね。通報されても困るし」
わたしは溜息を一つ吐くと床を踏み鳴らす。
「な!?」
「ちょっと何なの!」
突然現れたおぞましい霊に怯んだ女達は瞬く間に祟り殺される。

わたしが農場を去ろうとしたその時だった。
「動くな!」
衛兵が数人、踏み込んできた。
…なんてタイミングで来るのよ。
わたしは関係者としてあれこれ職務質問され、解放された頃には日が昇り始めていた。