「…汝は不浄なる者に関心があるようですね」
一見穏やかな口調ではある…あるんだけど、そこはかとなく寒気がする。
わたしが呼び出されたのはメリディアの祠。
メリディア 
さっき熊を退治する時に生霊を使役していたのを見られていたようで、それがメリディアの癇に障ったらしい。
しかもわたしも咄嗟の事で怒鳴り返したりしてるものだから、その怒りは頂点に達しているようだ。

このメリディア、デイドラの王ではあるけどアンデッド系の怪物を目の敵にしている。
何でも生命力を司るデイドラ王だと言うことはモノの本で読んだことはあるけど…なんだかデイドラと言うよりはエイドラっぽいタイプなのかしらね?
「亡者は穢れに満ち、摂理に反したもの。私はその汚れた者達の根絶を望みます」
一通りわたしへのお説教が済むと反省を示すために死霊術師を叩きのめしてこいと仰る。
「とある洞窟に死霊術師達が潜んでいます。彼らは亡者の軍勢を築くために墓地を荒らし続けているのです。その冒涜を止めて下さい」
だそうで。

わたしはメリディアに指定された洞窟に足を運ぶ。
洞窟と言っているけど要は墓地の地下霊廟…とまではいかないか。
埋葬の為に掘られた墓穴の代わりになる地下道に忍びこむ。
しかし死霊術師、ねぇ。
時々わたしも生霊を呼び出したりするせいで誤解されているけど、呪術師とはまったくの別物だ。

わたし達呪術師はあくまでも「霊」を呼び出して自分に憑依させたり、霊そのものを使役して何かやる術が幾つかあるけど、死体そのものをどうこうすることはない。
その呼び出す霊も人間のものに限らない。この前の鍵矢探しの時みたいに長く潜水するときは魚の霊を憑依させて素潜りしたり、早く走りたい時は狼の霊を憑依させたり…。
結構動物霊を使う機会が多いのが呪術だ。

魔術師ギルドも今は死霊術を禁呪指定して取り締まっているけど…。
死霊術そのものは生命魔術の一派で本来は崇高で立派な流派なんだけどね。まぁ死体をいじくり回したりするのでイメージが悪いのは確かだけど。
そんなイメージがあるせいで魔術師の中でも邪術と勘違いしてるのがいたり、自分をダークヒーローと勘違いしている様な中二病の連中が好んで扱う流派になってしまっている。
そのため、魔術師としては犯罪率が高く世間からも嫌われる傾向にある。
そのお蔭でシロディールでは禁呪扱いされてしまったようね。
本来は何らかの理由、例えば毒が充満した室内とか、人が踏み入れないような場所で何か作業させる時とかに活用する術でちゃんと扱えば利用価値はかなり高いはずなんだけどね。

それはまぁ良いや。
わたしのやることは死霊術師と一戦交えること。
はぁ、面倒臭いなぁ。
それにもう毒矢も数が少ない。
一体何人いるのか知らないけど、厳しい戦いになるだろうな。
アンデッドには毒、効かないし。
まぁそっちは生霊に相手してもらおう。

そう結論すると墓穴の奥に踏み込む。
…いるいる。
ゾンビやリッチに混じってうろうろしている死霊術師が何人か。
人数自体はそう多くは無さそうね。
死霊術師の一人に毒矢を放つ。
「ぐぉ!?」
その悲鳴が開戦の合図になった。

「何だ!?」
「どうした!」
「敵だ!」
「何だと!?」
「このブラックブラッドクロス(黒き血の十字団)を敵に回す愚か者が居ようとはな!!」
浮足立つ死霊術師達…どうも中二病タイプの一団らしいわね。

そしてアンデッドに号令が出されこちらに向かってくる。
だがわたしは慌てることなく弓を構える。
相手が中二病軍団となれば魔術師としては二流、三流と見てお釣りがくる。
…だってあいつら魔法をファッションか何かと勘違いしてるだけで、まともに術なんて使えないんだもん。
多分死体を動けるようにするのが関の山だろう。

「良くやってくれました。汝の手により生命を冒涜する輩はその対価を払ったのです」
メリディアの祠に戻り、わたしが死霊術師では無い事も理解して貰えた。
誤解したお詫びにと魔法の指輪を添えて。