「くくく…待っていたぞ」
グレイフォックスとの会合を終えてシェイディンハルの街中に戻ったところに闇の一党からの使者が訪れた。
気は進まないけど殺しの仕事だ。
聖域はこの家のすぐ隣にある。
そのままわたしは聖域に踏み入る。
「今回の仕事は抜群の潜入技術が問われることになるね」
吸血鬼のヴィンセンテがにこやかに説明を始める。
わたしが盗賊ギルドにも所属してるのをどこかで知ってこの仕事を割り振ったのだろうか?
何だか知らないけどやたらと情報収集だけは上手いのよね。
その情報網だけなら盗賊ギルドですら足元にも及ばない程だと思う。
それはともかく、今回の標的はヴァレン・ドレス。
今は帝都の牢獄に囚われてるそうだ。
帝都の牢獄、かぁ…思えばあそこがわたしの運命の転換点よね。
皇帝に出会いオブリビオンゲートを閉じて…そして今は盗賊ギルドに闇の一党と外道に身をやつすことになった、その始まりの場所。
「ヴァレンは牢獄の中で安全だと思っているだろうけど、それが大きな間違いだと言うことを教えてあげると良いよ」
「でも帝都の牢獄で暗殺なんて…そんなにうまくいくのかしら?」
わたしの不安に穏やかな笑みで答える。
「最近ある囚人が帝都の下水を使って脱獄に成功したみたいだね。そこから忍び込めば良いんじゃないかな?」
そう言って鍵を一つ寄越す。
…恐らくその脱獄した囚人ってわたしの事よね?そこまで知っててこの仕事を回してきたのか。その推測は次の言葉で確信に変わる。
「ヴァレンの独房はすぐ見付かるでしょう。それに君なら…あの中の事は良く知ってるよね」
全く一体何の因果なのかしらね?
わたしは闇の一党の黒装束に着替えると帝都の下水を目指す。
鍵を開けて踏み込んだは良いけど、前に通った道は塞がれていた。
まぁそりゃそうか。
若干ルート変更が必要だけど、基本的に牢獄までは一本道になっていて難なく辿り着くことは出来る。
問題はここからだ。
「そりゃ俺だってこの仕事に誇りを持ってるさ。だが今更ここで何を見張れってんだ?」
「まぁなぁ…暗殺者だって目的を果たしたんだ。戻ってくるこたぁねぇだろうな」
早速いる。
警備の衛兵がすぐそこで無駄口を叩いてるのが聞こえてきた。
「まったくこれじゃあのヴァレンの糞野郎を守ってるだけじゃねぇか」
「本当にやってらんねぇよなぁ。何で犯罪者のクズを守ってやらにゃならんのか。暗殺者でもなんでも来てやってくれた方がさっぱりするぜ」
…まぁ気持ちは分からないでもないけどあんまりそう言う事を言うモノじゃないわね。
本当に来ちゃうわよ?暗殺者が。…と言うかもうそこまで来てるんだけどね。
そしてその後も無駄話は続く。
一体何時まで喋ってるのかしら?
男も案外お喋りなのね。わたしならこんなに長話とか出来る自信は無い。
結局そこで三十分くらい無駄話を盗み聞きさせられる羽目になった。
話題も尽きて衛兵は漸く仕事に戻る。
やれやれ…やっと通れそうだわ。
ここまで来てしまえば後は見たことのある道だ。
生あくびをしたり、鼻歌を歌ってる衛兵の横をこっそりとすり抜けて牢獄に近付いていく。
わたしがゴブリンの巣に迂回した時の壁の穴が見えたが、木の板で塞がれていた。
と言うことはもうすぐそこか。
「寂しくなるぜ…お前にムチを打った時の悲鳴が聞けなくなる日が来るとはな」
「クソが!言っただろ?俺はここから出ていくってな!もうすぐ刑期も終わる!」
わたしがぶち込まれた独房までやってくるとまた話声が聞こえる。
この向こうってことは…ヴァレンはあのやかましいダンマーか。
そのダンマーと看守が何事かを話している。
「今に分かるさ!ここから出た暁には俺の名をタムリエル全土に響かせてやるぜ!ヴァレン・ドレス!ヴァレン・ドレスだ!!」
「そうかい。ならもう少し大人しくしててくれりゃもっと早く出してやれたんだがな」
どうもヴァレンはそろそろ刑期が終わるらしい。
お気の毒な事ね。まさか刑期よりも先に人生が終わるなんて夢にも思ってないことだろう。
看守も無駄話に飽きてきたのか、ヴァレンの戯言を適当にあしらうと牢獄から出て行った。
わたしはそっと鉄格子の隙間からヴァレンに狙いを定める。
そして静かに弦を弾く。
ヴァレンの眉間に突き立った矢。
もうあのかしましいダンマーが喋ることは無い。
「ただ一人の看守にも見付かることなく事を済ませたね。全く見事なお手並みだよ」
ヴィンセンテはわたしを手放しで称賛する。
「今回のご褒美だよ。この天秤は君の潜在能力を引き出してくれる。まあその代わりちょっとした代償がいるけどね」
今回も報酬に加えておまけの品まで貰う。
この天秤、強力な呪具だけど…あんまり使いたくないな。
暗殺仕事で貰った物を使うのって何だか気持ち悪いし。
グレイフォックスとの会合を終えてシェイディンハルの街中に戻ったところに闇の一党からの使者が訪れた。
気は進まないけど殺しの仕事だ。
聖域はこの家のすぐ隣にある。
そのままわたしは聖域に踏み入る。
「今回の仕事は抜群の潜入技術が問われることになるね」
吸血鬼のヴィンセンテがにこやかに説明を始める。
わたしが盗賊ギルドにも所属してるのをどこかで知ってこの仕事を割り振ったのだろうか?
何だか知らないけどやたらと情報収集だけは上手いのよね。
その情報網だけなら盗賊ギルドですら足元にも及ばない程だと思う。
それはともかく、今回の標的はヴァレン・ドレス。
今は帝都の牢獄に囚われてるそうだ。
帝都の牢獄、かぁ…思えばあそこがわたしの運命の転換点よね。
皇帝に出会いオブリビオンゲートを閉じて…そして今は盗賊ギルドに闇の一党と外道に身をやつすことになった、その始まりの場所。
「ヴァレンは牢獄の中で安全だと思っているだろうけど、それが大きな間違いだと言うことを教えてあげると良いよ」
「でも帝都の牢獄で暗殺なんて…そんなにうまくいくのかしら?」
わたしの不安に穏やかな笑みで答える。
「最近ある囚人が帝都の下水を使って脱獄に成功したみたいだね。そこから忍び込めば良いんじゃないかな?」
そう言って鍵を一つ寄越す。
…恐らくその脱獄した囚人ってわたしの事よね?そこまで知っててこの仕事を回してきたのか。その推測は次の言葉で確信に変わる。
「ヴァレンの独房はすぐ見付かるでしょう。それに君なら…あの中の事は良く知ってるよね」
全く一体何の因果なのかしらね?
わたしは闇の一党の黒装束に着替えると帝都の下水を目指す。
鍵を開けて踏み込んだは良いけど、前に通った道は塞がれていた。
まぁそりゃそうか。
若干ルート変更が必要だけど、基本的に牢獄までは一本道になっていて難なく辿り着くことは出来る。
問題はここからだ。
「そりゃ俺だってこの仕事に誇りを持ってるさ。だが今更ここで何を見張れってんだ?」
「まぁなぁ…暗殺者だって目的を果たしたんだ。戻ってくるこたぁねぇだろうな」
早速いる。
警備の衛兵がすぐそこで無駄口を叩いてるのが聞こえてきた。
「まったくこれじゃあのヴァレンの糞野郎を守ってるだけじゃねぇか」
「本当にやってらんねぇよなぁ。何で犯罪者のクズを守ってやらにゃならんのか。暗殺者でもなんでも来てやってくれた方がさっぱりするぜ」
…まぁ気持ちは分からないでもないけどあんまりそう言う事を言うモノじゃないわね。
本当に来ちゃうわよ?暗殺者が。…と言うかもうそこまで来てるんだけどね。
そしてその後も無駄話は続く。
一体何時まで喋ってるのかしら?
男も案外お喋りなのね。わたしならこんなに長話とか出来る自信は無い。
結局そこで三十分くらい無駄話を盗み聞きさせられる羽目になった。
話題も尽きて衛兵は漸く仕事に戻る。
やれやれ…やっと通れそうだわ。
ここまで来てしまえば後は見たことのある道だ。
生あくびをしたり、鼻歌を歌ってる衛兵の横をこっそりとすり抜けて牢獄に近付いていく。
わたしがゴブリンの巣に迂回した時の壁の穴が見えたが、木の板で塞がれていた。

と言うことはもうすぐそこか。
「寂しくなるぜ…お前にムチを打った時の悲鳴が聞けなくなる日が来るとはな」
「クソが!言っただろ?俺はここから出ていくってな!もうすぐ刑期も終わる!」
わたしがぶち込まれた独房までやってくるとまた話声が聞こえる。
この向こうってことは…ヴァレンはあのやかましいダンマーか。
そのダンマーと看守が何事かを話している。
「今に分かるさ!ここから出た暁には俺の名をタムリエル全土に響かせてやるぜ!ヴァレン・ドレス!ヴァレン・ドレスだ!!」
「そうかい。ならもう少し大人しくしててくれりゃもっと早く出してやれたんだがな」
どうもヴァレンはそろそろ刑期が終わるらしい。
お気の毒な事ね。まさか刑期よりも先に人生が終わるなんて夢にも思ってないことだろう。
看守も無駄話に飽きてきたのか、ヴァレンの戯言を適当にあしらうと牢獄から出て行った。
わたしはそっと鉄格子の隙間からヴァレンに狙いを定める。
そして静かに弦を弾く。
ヴァレンの眉間に突き立った矢。
もうあのかしましいダンマーが喋ることは無い。
「ただ一人の看守にも見付かることなく事を済ませたね。全く見事なお手並みだよ」
ヴィンセンテはわたしを手放しで称賛する。
「今回のご褒美だよ。この天秤は君の潜在能力を引き出してくれる。まあその代わりちょっとした代償がいるけどね」
今回も報酬に加えておまけの品まで貰う。
この天秤、強力な呪具だけど…あんまり使いたくないな。
暗殺仕事で貰った物を使うのって何だか気持ち悪いし。