ブルーマの城を後にしてわたしは久しぶりにすっきりした気分で薬の行商を再開する。
今まで盗みと殺しばかりが続いていたけど、これを機に流れが変わってくれると良いわね。
それにしても何だか色々嵩張って来たわね。
いらないものとか出来るだけ処分してるんだけど、おいそれと売ったり捨てたり出来ない物が最近増えてきてる気がする。
デイドラ王のアーティファクトとか。
でも旅路の身としては身軽でいたい。
わたしは懐具合を考える。
あの皇帝暗殺事件に巻き込まれてからと言うもの、結構わたしの人生は変わってしまった。
そのせいで色々価値ある呪具にも恵まれてたし、そのお蔭でかなり懐事情はあったかい。
…そろそろ頃合い、かな?
わたしは何時か手に入れたいと思っていたアレを購入しようかな、と考えるようになっていた。
アレって何かって?
アレと言ったら家しかないでしょ。
それじゃどこに家を構えようかな、と言う話になるんだけど、これはもう決まっている。
レヤウィンだ。
あの街って何だか良いよね。雰囲気とか。本屋もあるし。
そんなわけでレヤウィンに戻った際に城に参内する。
シロディールでは不動産の取引は領主である伯爵と行うことになっている。
…が、どうも今レヤウィン伯爵は何だか取り込んでいるよう。
「何やら胡散臭いオークが居座って騎士を自称しているのだが…意味が分からん。何が目的なのか、何をしたいのか…少し力を貸してくれんか?」
使いをやって話を聞いてみようとしても全く話してくれないらしく、気味が悪くて困ってるそうだ。
わたしはその話を引き受けることにした。
これから家を買おうと言うのだから心象は良い方が良いに決まってる。
そして件のオーク。
「伯爵の使いで参りました。一体どんなご用件でしょう」
一応挨拶としてそう切り出す。まぁこれでは何も話してくれないんだろうな。話してくれるならこの件はとっくに解決してるはずだ。
だが意外な反応が返ってきた。
「伯爵の?なら話しても良いだろう。私はマゾーガ。オーク族だ。岩の下に生まれ親は居ない。よって姓も無い」
だがそれ以上話そうとしない。わたしは彼女の次の句を待つ。
「…お前は騎士と話す作法を知らないようだな。なら教えてやる。こうだ”はい、マゾーガ卿”」
え?
…あぁ、そうか。そう言うことか。
わたしは理解した。彼女もまた…中二病なんだ。自分が騎士だと思っている。
うん、分かる。分かるよ。わたしも子供の頃はそんな感じだった。
まぁわたしは自称騎士ではなく、自称魔法少女だったけど。
出来るだけ話を合わせてあげた方がスムーズに行きそうね。
「してご用件は何でしょう?マゾーガ卿」
そう答えると満足したらしく、話を続けてくれた。
何でもウィーバム・ナーと言うアルゴニアンを探しているらしい。
何だかどこかで会ったような?…あぁそうだ。ノクターナルの目を盗んだあの人だ。
「そいつを連れてきてくれ」
「分かりましたマゾーガ卿」
「何?オークの女が俺に用があるって?…俺だってそんなに暇じゃないぜ?」
「そこを何とか。何か場所を知りたがってるみたいなんだけど」
「ふぅん。まぁそのくらいなら良いか」
そんなわけでウィーバム・ナーを連れて来たは良いんだけど…。
「漁師の野営地はどこにある?」
「川沿いに北に行きな。歩きで大体六時間ってとこだな」
「そこに行きたい。案内しろ」
「何だってそんなとこに?」
「お前が知る必要は無い」
「何だと?理由は言わないが案内しろだって?大概にしてくれ」
結局ウィーバム・ナーは怒って帰ってしまった。
帰り際に「あんたもヘンなのに目付けられちまったな」と憐れんでくれた。
「あいつは駄目だ。お前が案内しろ」
いきなりわたしに話を振るマゾーガ卿。
「そこに一体何があると言うのでしょう、マゾーガ卿」
「あそこにある男が潜んでいる。そいつと話がしたい」
わたしが聞くとさらっと答えてくれる。何でそれを素直に話さないのかしら?
やっぱり事ある毎に”マゾーガ卿”って言わないと駄目ってことなのか?
結局わたしが案内してその野営地にやってくる。
「私はマゾーガ。お前はラヴィンドラを殺したな?」
到着するなりそこに居た人に問いかける。
「あ?なんのこっちゃ?」
「お前は嘘吐きの悪党だ。我が友を殺した!今度は私がお前を殺す!」
一方的にマゾーガが言い放ち、突然のことに呆ける男。
そして唐突に始まる乱闘。
野営地に居た男の仲間も入り乱れて、ついでにわたしも巻き込まれて…。
「誓いは果たした。友の仇は死んだ」
ここにきて漸く事情を教えてくれた。
今倒した男達は野党の一味でマゾーガの友人を殺したらしい。
それを機にマゾーガは復讐の誓いを立てて騎士となったそうだ。
…何で騎士にならないといけないのかは良く分からなかったけど、彼女の中では誓いを立てる人=騎士と言う図式が完成されているらしい。
「貴女は私を助けてくれた。私は決して忘れない」
急に態度が変わったわね。わたしのことを認めてくれたってことなのかしらね。
この一連の話をレヤウィン伯爵に伝える。
「敵討ちとは崇高なことですね。レヤウィンは貴女の助力に感謝します」
これで漸く家を買える…そう思っていた時期がわたしにもありました。
でも現実はそう甘くは無かった。
「その行いに対する感謝の意を表して、貴女とそのマゾーガに申し出をしましょう。騎士として仕官してみませんか?」
騎士とかそう言うのはいいから!欲しいのは家だから!
わたしの心の叫びはレヤウィン伯爵に届くことは無かった。
「レヤウィンでは先日、白馬騎士団を創設しましてね。もし黒弓団を名乗る盗賊団の首領を見事討ち果たせたら…お二方を流浪の騎士として迎え入れましょう」
はぁ…何でこうなるかな。
今まで盗みと殺しばかりが続いていたけど、これを機に流れが変わってくれると良いわね。
それにしても何だか色々嵩張って来たわね。
いらないものとか出来るだけ処分してるんだけど、おいそれと売ったり捨てたり出来ない物が最近増えてきてる気がする。
デイドラ王のアーティファクトとか。
でも旅路の身としては身軽でいたい。
わたしは懐具合を考える。
あの皇帝暗殺事件に巻き込まれてからと言うもの、結構わたしの人生は変わってしまった。
そのせいで色々価値ある呪具にも恵まれてたし、そのお蔭でかなり懐事情はあったかい。
…そろそろ頃合い、かな?
わたしは何時か手に入れたいと思っていたアレを購入しようかな、と考えるようになっていた。
アレって何かって?
アレと言ったら家しかないでしょ。
それじゃどこに家を構えようかな、と言う話になるんだけど、これはもう決まっている。
レヤウィンだ。
あの街って何だか良いよね。雰囲気とか。本屋もあるし。
そんなわけでレヤウィンに戻った際に城に参内する。
シロディールでは不動産の取引は領主である伯爵と行うことになっている。
…が、どうも今レヤウィン伯爵は何だか取り込んでいるよう。
「何やら胡散臭いオークが居座って騎士を自称しているのだが…意味が分からん。何が目的なのか、何をしたいのか…少し力を貸してくれんか?」
使いをやって話を聞いてみようとしても全く話してくれないらしく、気味が悪くて困ってるそうだ。
わたしはその話を引き受けることにした。
これから家を買おうと言うのだから心象は良い方が良いに決まってる。
そして件のオーク。

「伯爵の使いで参りました。一体どんなご用件でしょう」
一応挨拶としてそう切り出す。まぁこれでは何も話してくれないんだろうな。話してくれるならこの件はとっくに解決してるはずだ。
だが意外な反応が返ってきた。
「伯爵の?なら話しても良いだろう。私はマゾーガ。オーク族だ。岩の下に生まれ親は居ない。よって姓も無い」
だがそれ以上話そうとしない。わたしは彼女の次の句を待つ。
「…お前は騎士と話す作法を知らないようだな。なら教えてやる。こうだ”はい、マゾーガ卿”」
え?
…あぁ、そうか。そう言うことか。
わたしは理解した。彼女もまた…中二病なんだ。自分が騎士だと思っている。
うん、分かる。分かるよ。わたしも子供の頃はそんな感じだった。
まぁわたしは自称騎士ではなく、自称魔法少女だったけど。
出来るだけ話を合わせてあげた方がスムーズに行きそうね。
「してご用件は何でしょう?マゾーガ卿」
そう答えると満足したらしく、話を続けてくれた。
何でもウィーバム・ナーと言うアルゴニアンを探しているらしい。
何だかどこかで会ったような?…あぁそうだ。ノクターナルの目を盗んだあの人だ。
「そいつを連れてきてくれ」
「分かりましたマゾーガ卿」
「何?オークの女が俺に用があるって?…俺だってそんなに暇じゃないぜ?」
「そこを何とか。何か場所を知りたがってるみたいなんだけど」
「ふぅん。まぁそのくらいなら良いか」
そんなわけでウィーバム・ナーを連れて来たは良いんだけど…。
「漁師の野営地はどこにある?」
「川沿いに北に行きな。歩きで大体六時間ってとこだな」
「そこに行きたい。案内しろ」
「何だってそんなとこに?」
「お前が知る必要は無い」
「何だと?理由は言わないが案内しろだって?大概にしてくれ」
結局ウィーバム・ナーは怒って帰ってしまった。
帰り際に「あんたもヘンなのに目付けられちまったな」と憐れんでくれた。
「あいつは駄目だ。お前が案内しろ」
いきなりわたしに話を振るマゾーガ卿。
「そこに一体何があると言うのでしょう、マゾーガ卿」
「あそこにある男が潜んでいる。そいつと話がしたい」
わたしが聞くとさらっと答えてくれる。何でそれを素直に話さないのかしら?
やっぱり事ある毎に”マゾーガ卿”って言わないと駄目ってことなのか?
結局わたしが案内してその野営地にやってくる。
「私はマゾーガ。お前はラヴィンドラを殺したな?」
到着するなりそこに居た人に問いかける。
「あ?なんのこっちゃ?」
「お前は嘘吐きの悪党だ。我が友を殺した!今度は私がお前を殺す!」
一方的にマゾーガが言い放ち、突然のことに呆ける男。
そして唐突に始まる乱闘。
野営地に居た男の仲間も入り乱れて、ついでにわたしも巻き込まれて…。
「誓いは果たした。友の仇は死んだ」
ここにきて漸く事情を教えてくれた。
今倒した男達は野党の一味でマゾーガの友人を殺したらしい。
それを機にマゾーガは復讐の誓いを立てて騎士となったそうだ。
…何で騎士にならないといけないのかは良く分からなかったけど、彼女の中では誓いを立てる人=騎士と言う図式が完成されているらしい。
「貴女は私を助けてくれた。私は決して忘れない」
急に態度が変わったわね。わたしのことを認めてくれたってことなのかしらね。
この一連の話をレヤウィン伯爵に伝える。
「敵討ちとは崇高なことですね。レヤウィンは貴女の助力に感謝します」
これで漸く家を買える…そう思っていた時期がわたしにもありました。
でも現実はそう甘くは無かった。
「その行いに対する感謝の意を表して、貴女とそのマゾーガに申し出をしましょう。騎士として仕官してみませんか?」
騎士とかそう言うのはいいから!欲しいのは家だから!
わたしの心の叫びはレヤウィン伯爵に届くことは無かった。
「レヤウィンでは先日、白馬騎士団を創設しましてね。もし黒弓団を名乗る盗賊団の首領を見事討ち果たせたら…お二方を流浪の騎士として迎え入れましょう」
はぁ…何でこうなるかな。