修道院を出ると…夕焼け…じゃないわね。日の方向からして朝焼けか。
昼頃入ったんだけど、思いの外探索に時間がかかっていたみたい。
わたしはブルーマに戻ろうと思って一路西を目指そうとした時に何者かに呼び止められた。
この直接思念で語りかけてくるパターンは…嫌な予感がしたけど、無視するともっとマズイ連中だ。
デイドラ王。
どうもこの修道院のすぐ傍に祠があるらしい。
「そなたの事は知っているぞ。薄明かりの中で囁かれているのを聞いた事がある」
わたしに語りかけてきたのはアズラだった。
何だか知らないけど何時の間にかわたしはオブリビオン次元でも有名になりつつあるのかしら?
確かにデイゴンのゲートを一つ閉じたし、シヴァリングアイルズにも踏み込んだ。
不本意ながらこうした祠でデイドラ王と対話した事も何度かある。
わたしはアズラに呼び寄せられ、祠まで導かれる。
「そなたに頼みがある。吸血鬼討伐に向かった我が信徒を救ってやってくれ」
何でも数年前にアズラの信者が吸血鬼の討伐をしたのだけど、その際に討伐隊全員が呪いに感染して吸血鬼になってしまったんだとか。
そのアズラの信者達は鉱山に閉じこもり自ら封印して外との交流を絶っているんだけど、その苦悶の念が今もアズラに届いていると言う。
それを取り除くのがアズラからの頼みだった。
この吸血鬼と言うのは一応は病人だ。呪いを伴った病に罹患することで吸血鬼になってしまう。
これがまたややこしい構成になっているせいで発症してしまうと魔法でも薬でも治せない不治の病となる。
わたしも呪術と錬金術を得意としているけど、この発症しきった吸血鬼を治す方法はいまだに確立出来ないでいる。
もし特効薬なんかが創れたら一生遊んで暮らせるくらいの大儲けができるんだけどなぁ。
まぁそれはともかく、だ。
わたしはアズラが教えてくれた鉱山に赴く。
今回は吸血鬼が相手だから気を付けないと。
わたしまで発症したらたまったものじゃない。
幸い初期の潜伏期間ならこの吸血病は治せるんだ。
すぅ…と大きく息を吸い込み覚悟を決めると鉱山に踏み込む。
連中はカジートと同じように暗視ができるから、余程注意しないとすぐ見付かってしまう。
わたしも暗視の霊薬を一口煽る。これで視野としては互角になる。
予め矢に毒を塗って慎重に歩を進める。
…居た。こちらが先に見付けることが出来た。向こうはまだわたしに気付いていない。
まぁそれもそうか。本当なら誰も入ってこれないように内側から封印されているんだ。誰か入ってくるなんて夢にも思っていないだろう。
まずは一人か。
全部で五人いるって聞いているけど、出来るだけ一人ずつ相手するようにしたいわね。
わたしは弓を構え息を軽く止める。
狙いをつけて毒矢を放つ。
「うぉ?何だ!?」
いきなり刺さった矢に驚く吸血鬼その一。
まず矢を見て視線を上げる。
わたしと目が合う。
♪目と目が逢う瞬間好きだと気付いた♪
…何だか前もこんなことあったわね。確かウェザーレアでオーガと出くわしたときだったかしら?
この歌、わたし結構好きなのよね。
アカヴィリ地方で有名な如月千早って歌い手の歌なんだけど、皆知ってるかしら?
おっと、そんなこと話してる場合じゃないわね。
吸血鬼が物凄い形相で剣を抜いて走り寄ってくる。
わたしは立て続けに矢を速射する。
できれば接近はさせたくない。
「くそ…」
毒も回り吸血鬼はわたしに反撃する機会も得られずに崩れ落ちる。
「おい、どうした?」
「何だ?騒がしいな」
倒れた時に鎧が立てた音を聞きつけたのか、更に二人。
これはまずいか?
わたしは新たな毒矢を番えると姿が見えるなり射かける。
「何だお前は!」
「このアマ!舐めんな!」
狭い坑道で二人を相手に立ち回る。
わたしも惜しげも無く毒矢を連射する。
相手が相手だ。出し惜しみ何てしてられない。
「げはっ…」
「毒かよ…汚ねぇやつめ…」
何とか二人を毒漬けにして沈めるけど…ちょっと気分が悪い。
わたしは念の為用意しておいた吸血病の初期用の薬を飲んでおく。
多分これで発症はしない…はず。そう信じたい。
とにかくこれで三人。あと二人。
わたしは坑道の奥まで進むと、何やら話声がする。つまり残りの二人が一緒にいるってことか。
最早やるべきことは変わらない。
「これで…解放される」
倒した吸血鬼の最後の一人が安堵するように崩れ落ちる。
「なぁあんた…もし頼めるなら、これを、アズラ様の祠に」
わたしに一枚の紙切れを寄越すとそこで事切れた。
紙に目を通すと吸血鬼達の思いが記されていた。
吸血鬼を倒しに来たはずなのに自分達までもが吸血鬼になってしまったこと。
自分達を外の世界と隔絶し、長い時をひっそりと…最後の時を迎えるまで隠れ過ごすこと。
そんな苦しみからいち早く開放するためにアズラはわたしを送り込んだんだけど…何だかやりきれないわね。
わたしは受け取った遺書を祠に持ち帰る。
「感謝するぞ、小さき者。彼らの魂は解放された。その犠牲を讃えこの祠に五つの灯を絶えず灯そう」
そう言うとアズラの像の後ろの崖に五つの輝きが灯る。
そして感謝の証として一つの宝石を受け取った。
昼頃入ったんだけど、思いの外探索に時間がかかっていたみたい。
わたしはブルーマに戻ろうと思って一路西を目指そうとした時に何者かに呼び止められた。
この直接思念で語りかけてくるパターンは…嫌な予感がしたけど、無視するともっとマズイ連中だ。
デイドラ王。
どうもこの修道院のすぐ傍に祠があるらしい。
「そなたの事は知っているぞ。薄明かりの中で囁かれているのを聞いた事がある」
わたしに語りかけてきたのはアズラだった。
何だか知らないけど何時の間にかわたしはオブリビオン次元でも有名になりつつあるのかしら?
確かにデイゴンのゲートを一つ閉じたし、シヴァリングアイルズにも踏み込んだ。
不本意ながらこうした祠でデイドラ王と対話した事も何度かある。
わたしはアズラに呼び寄せられ、祠まで導かれる。
「そなたに頼みがある。吸血鬼討伐に向かった我が信徒を救ってやってくれ」
何でも数年前にアズラの信者が吸血鬼の討伐をしたのだけど、その際に討伐隊全員が呪いに感染して吸血鬼になってしまったんだとか。
そのアズラの信者達は鉱山に閉じこもり自ら封印して外との交流を絶っているんだけど、その苦悶の念が今もアズラに届いていると言う。
それを取り除くのがアズラからの頼みだった。
この吸血鬼と言うのは一応は病人だ。呪いを伴った病に罹患することで吸血鬼になってしまう。
これがまたややこしい構成になっているせいで発症してしまうと魔法でも薬でも治せない不治の病となる。
わたしも呪術と錬金術を得意としているけど、この発症しきった吸血鬼を治す方法はいまだに確立出来ないでいる。
もし特効薬なんかが創れたら一生遊んで暮らせるくらいの大儲けができるんだけどなぁ。
まぁそれはともかく、だ。
わたしはアズラが教えてくれた鉱山に赴く。
今回は吸血鬼が相手だから気を付けないと。
わたしまで発症したらたまったものじゃない。
幸い初期の潜伏期間ならこの吸血病は治せるんだ。
すぅ…と大きく息を吸い込み覚悟を決めると鉱山に踏み込む。
連中はカジートと同じように暗視ができるから、余程注意しないとすぐ見付かってしまう。
わたしも暗視の霊薬を一口煽る。これで視野としては互角になる。
予め矢に毒を塗って慎重に歩を進める。
…居た。こちらが先に見付けることが出来た。向こうはまだわたしに気付いていない。
まぁそれもそうか。本当なら誰も入ってこれないように内側から封印されているんだ。誰か入ってくるなんて夢にも思っていないだろう。
まずは一人か。
全部で五人いるって聞いているけど、出来るだけ一人ずつ相手するようにしたいわね。
わたしは弓を構え息を軽く止める。
狙いをつけて毒矢を放つ。
「うぉ?何だ!?」
いきなり刺さった矢に驚く吸血鬼その一。
まず矢を見て視線を上げる。
わたしと目が合う。
♪目と目が逢う瞬間好きだと気付いた♪
…何だか前もこんなことあったわね。確かウェザーレアでオーガと出くわしたときだったかしら?
この歌、わたし結構好きなのよね。
アカヴィリ地方で有名な如月千早って歌い手の歌なんだけど、皆知ってるかしら?
おっと、そんなこと話してる場合じゃないわね。
吸血鬼が物凄い形相で剣を抜いて走り寄ってくる。
わたしは立て続けに矢を速射する。
できれば接近はさせたくない。
「くそ…」
毒も回り吸血鬼はわたしに反撃する機会も得られずに崩れ落ちる。
「おい、どうした?」
「何だ?騒がしいな」
倒れた時に鎧が立てた音を聞きつけたのか、更に二人。
これはまずいか?
わたしは新たな毒矢を番えると姿が見えるなり射かける。
「何だお前は!」
「このアマ!舐めんな!」
狭い坑道で二人を相手に立ち回る。
わたしも惜しげも無く毒矢を連射する。
相手が相手だ。出し惜しみ何てしてられない。
「げはっ…」
「毒かよ…汚ねぇやつめ…」
何とか二人を毒漬けにして沈めるけど…ちょっと気分が悪い。
わたしは念の為用意しておいた吸血病の初期用の薬を飲んでおく。
多分これで発症はしない…はず。そう信じたい。
とにかくこれで三人。あと二人。
わたしは坑道の奥まで進むと、何やら話声がする。つまり残りの二人が一緒にいるってことか。
最早やるべきことは変わらない。
「これで…解放される」
倒した吸血鬼の最後の一人が安堵するように崩れ落ちる。
「なぁあんた…もし頼めるなら、これを、アズラ様の祠に」
わたしに一枚の紙切れを寄越すとそこで事切れた。
紙に目を通すと吸血鬼達の思いが記されていた。
吸血鬼を倒しに来たはずなのに自分達までもが吸血鬼になってしまったこと。
自分達を外の世界と隔絶し、長い時をひっそりと…最後の時を迎えるまで隠れ過ごすこと。
そんな苦しみからいち早く開放するためにアズラはわたしを送り込んだんだけど…何だかやりきれないわね。
わたしは受け取った遺書を祠に持ち帰る。
「感謝するぞ、小さき者。彼らの魂は解放された。その犠牲を讃えこの祠に五つの灯を絶えず灯そう」

そう言うとアズラの像の後ろの崖に五つの輝きが灯る。
そして感謝の証として一つの宝石を受け取った。