溜息を道連れにゼディリアンに到着。
貰った解説書を読むにクリスタルを所定の場所に設置し直したら音叉で共鳴させると再起動できるそうだ。

門番が置かれるようになってから長い事放置された施設だと言うことで中がどうなってるのかは分からない。
わたしは溜息と共に門を押し開ける。
…こうも立て続けに人を殺してしまったことが、どうしても心に重くのしかかる。
あちこちに「グラマイト」と呼ばれる二足歩行の蛙の出来損ないみたいなのが闊歩している。
丁度タムリエルで言うゴブリンに相当する連中で、強さはピンキリ。
あと種族的な特徴で、結構すばしっこく、かなりの距離をひとっ跳びで詰めてくる。
そう言えばあのカマキリもどきや、水場で見かけるスケイロンって奴も結構ジャンプ力があったわね。
シヴァリングアイルズではジャンプ力が一種のステータスみたいなところがあるのかしら?

まぁそれはともかく、どうやらここはグラマイトの巣になってるみたいね。
これだけうじゃうじゃいると忍び足でこっそりと抜けるのにも限界がある。
割とあちこちでグラマイトと相対する羽目に…。
そんな中、時折ヘンな杖を持ってるのが居る。
やたらと高出力の雷撃魔法がその杖からばんばん飛んでくるんだけど…どこでこんな杖作ったのかしら?

グラマイトを見ていると魔法はそんなに得意そうには見えない。
多分自力で作ったものじゃないと思うんだけど…わたしはその杖を奪うと先端に付けられた石をしげしげと観察する。
うん…やっぱり高濃度のマジカが結晶化してるんだわ。
それに形も随分と綺麗にカットが施されていて、一種の工芸品とも言えなくない。
やっぱりこれをグラマイト達が作ってるとは思えないわね。

…杖をいじくり回しているとそのクリスタルがぽこんと外れる。
わたしはゼディリアンの解説書を引っ張り出し、もう一度読み返す。
”フォーカスクリスタルを裁定のネクサスに設置する”か。
恐らくこれがそのフォーカスクリスタルだろう。
となるとわたしの予想が正しければ、これが収まる台座みたいなのがあるはず。
照明の魔法で辺りを照らしながら砦の中を探し回る。
まったく解説書なら挿絵とか図解くらい入れときなさいよね。文字ばっかりじゃ分かりにくいじゃないの。

長い事歩き回るって漸くそれっぽい物を見付けた。
真ん中に細いくぼみのある台。わたしはそのくぼみにクリスタルを差し込んでみる。
…当たりみたいね。
台がクリスタルから力を得てどこかに伝達してる。
なるほど、これが三か所あるのね。

そうと分かれば話は早い。
杖を持ったグラマイトを探し出してはクリスタルを台座に収める。
そして最後の仕上げに”狂気の共鳴石”とやらを調律しないといけない。
なんでも見ればすぐにそれとわかるだろう、ってことだけど…。

………
……


探し回る事しばし。
やっとそれっぽい物を見付ける。
確かに如何にも何かあるって雰囲気の結構大きなモニュメント。
わたしは預かった音叉を軽く叩く。
音叉から何とも表現しがたい響きが生じる。
調律って言うけど…どうするのかしら?解説書にも肝心なところが書いてない。
わたしは取り敢えず、響いている音叉をモニュメントに近付ける。
共鳴って言うくらいだから何か反応してくれると思うんだけど…。
するとモニュメントが真ん中から割れて、奥からマジカが溢れだす。
ゼディリアン起動 
どうやらこれで大丈夫そうね。

解説書通りならこれでゼディリアンは動き出したはずだ。
それじゃ帰るとしますか。
わたしは共鳴石のすぐ傍にあった転移門を起動する。
「あれ?」
ここはどこかしら?砦の出口付近に出てくるのかと思ったけど、何だか良く分からないところに送り込まれてしまった。
「おぉ!漸く王が助けを寄越してくれた!」
きょろきょろするわたしの耳に人の声が聞こえた。