恐らく今日中にはニューシェオスに着くはず。
マニア領の鮮やかな林道を旅するわたし。
見る物が全て新しいのであちこち寄り道してしまうせいで旅は捗らないんだけどね。
そんなわけで道すがらで出くわした集落にも寄り道。
集落の住人は一癖ある人ばかり。
なんだか奇声を上げて延々走り続ける人も居たり、ひたすらに掃除を続ける人も居たり。
そんな中出会ったのが学者のミリリ。
ダンマーだけあって態度は居丈高だけど、かなり熱心な研究者らしい。
このシヴァリングアイルズの動植物に関する生態調査をしているんだそうな。
やってることもこの狂気の王国に居るとは思えない程のまともさだ。
「良かったら手伝おうか?」
わたしからそんな提案をする。
どのくらいこの世界に居ることになるのか分からないけど、生態学は知っておいて損は無い。
特に動植物は錬金術の素材になるものだし、怪物として相対することもある。
そんな時に物を言う知識になるはずだ。
「ふぅん。じゃぁこれを集めてきて。採取した場所も一緒に記録するのよ」
リストを見るとかなりの種類がある。
「分かったわ。ちょっと時間かかるかもしれないから気長に待っててね」
それだけ言うと集落を後にした。
この集落からニューシェオスはそれほど遠くないわね。
地図と見比べて目的地が近い事を知ると足取りも軽くなる。
辿り着いたニューシェオスは壮麗な街並みだった。
この首都はマニア側とディメンシャ側に別れ、更にシェオゴラスが居る宮殿の三区画に分かれている。
わたしが入ったのは城下町のマニア側になるんだけど、その街並みは帝都やスキングラードに劣らない。
「へぇ…思ったより凄いわねぇ」
まるでお上りさんみたいに街を見て回る。
そんな時、アルゴニアンの男に声を掛けられた。
「アンタ…持ってるな」
「え?」
「持ってるんだろ?フォークを…」
「フォーク?」
「隠してても分かる…分かるぞ…ビッグヘッドのフォークを持ってるんだろ!?」
そう言えばフォークと言えばあの野営地で拾ったヤツをまだ持ってたんだっけ。
アレの事かしら?
魔法が掛かってるからと持っていたんだけど、掛かってる魔法はかなり特殊なもので、持ち主のマジカを揮散させる…つまりマジカの回復を阻害する効能だった。
何だか意味が分からない効果だったから、それっきり忘れてたわ。
わたしは鞄からフォークを出して、ビッグヘッドを名乗るアルゴニアンに見せる。
「フォークってこれ?」
するとビッグヘッドは飛び上がって大喜びする。
「フォークだ!素敵な一日だ!目が見えない人は見えるようになって、歩けない人は歩けるようになる!フォーク万歳!!」
フォークのお礼にビッグヘッドの知識を分けてくれると言う。
どんな知識やら…あまり期待せずに聞いてみた。
「毒もポーションの一種と考えられる。どっちも瓶に入ってるけど効果は正反対だ。ポーションが歌う!ポーションが鳴り響く!!」
…実りはなさそうだ。
そんなやりとりをしていると日が傾いてきた。
観光もそこそこにわたしは宮殿に参内することにした。
果たしてシェオゴラスとはどんな人物なのか…狂気の王と呼ばれるほどだから、無茶な話になるかもしれない。
「誰かと思ったらお前か。驚いちゃうだろ!?」
開口一番そう言ってのけるシェオゴラス。威厳は微塵も感じられない。
「新参者か!我がゲートキーパーのことは残念だった。嬉しくてお前の内臓を引き裂いてその首を絞めたいくらいだ」
ただ挨拶は物騒だ。
「儂が狂気の皇帝だ。他のものの皇帝でもあるが、まぁそれはいい。お前なら既に分かっているだろう…そう願うことにしよう。さもなければ問題だな。お前の内臓で縄跳びでもしようか!」
一々物騒な物言いを言葉の端々に織り交ぜ話を一方的に進める。
「まぁそれはまたの機会に。お前はここまで到達した初めての者だ。よくやった!この宝石をやろう。お前の役に立つかもな。お前が死体になっても似合うはずだ」
そう言うと首飾りを一つ、わたしにくれた。
「それでわたしにご用とは?」
「お前が来るのを待っていたぞ。お前に似てる奴か、一時はお前以外の奴でも良かったんだが、とにかく王者が必要だ。そこで頼みがある。王国を救うのだ!乙女を助けるのだ!獣を殺すのだ!あるいはやるだけやって死ぬかもしれんが、お前の力を借りたい」
今一つ何をさせたいのか分からないが、何かの危機のようではある。
「変化がやってくる。全てが変わるぞ。デイドラの王達も例外ではない。彼らは特に変わるだろう」
「変化?」
「デイドラは変化の化身だ。変化と永遠…私にとってはどちらも同じようなものだ。未来のことはわからんがね。グレイマーチは来る。それを止めるのはお前だ」
「グレイマーチとは一体どんなものでしょうか?」
「細かい話は重要ではない…少なくとも今の所はな。永遠の期限も迫っているのだが、その話はまた今度にしよう」
「結局わたしは何をすれば?」
「今すべきことか?お前には重要なお使いを頼みたい。もちろん私のお使いは全て重要なのだがな。我が王国よ!我が統治よ!ゼディリアンに行ってもらおう。私はかつてその地で迷惑な客人どもを処分していた。アイルズでもお気に入りの場所だよ。そして何人かの客人は輪をかけて迷惑なのだ」
「ゼディリアン?」
わたしは何度も話の腰を折るが、それも仕方なかろう。何せ知らない単語ばかりで話が進むからまったく要点が分からない。
「厄介者どもを始末してくれるゲートキーパーが死んでしまった。我らもその損失を補填せねばなるまい…とにかく、他の方法で王国に入り込んでくる連中がいる。そいつらが動いているのだ。奴らは邪魔者だ。間違いない。そうかゼディリアンを復活させるんだな。手順はこの小冊子に書いてあるから持って行け。それとこいつも必要になる。狂気の音叉だ。もちろん詳しい話はいつでもハスキルに聞くが良い。奴は重箱の隅をつつくタイプだから心強いぞ。それに洒落者でもある。では行くが良い。わたしが変心…いや変身する前にな!」
そう言うとわたしに本と音叉を押し付ける。
取り敢えず分かったのは、シェオゴラスは多弁だ、と言う事くらいか。グレイマーチもゼディリアンもイマイチはっきりしない。
受け取った本を見て分かったのは、ゼディリアンがあの門番の代わりになるものらしい、と言う事くらいか。
一体何がどうなることやら。まったく予想もつかない旅になりそうだ。
マニア領の鮮やかな林道を旅するわたし。
見る物が全て新しいのであちこち寄り道してしまうせいで旅は捗らないんだけどね。
そんなわけで道すがらで出くわした集落にも寄り道。
集落の住人は一癖ある人ばかり。
なんだか奇声を上げて延々走り続ける人も居たり、ひたすらに掃除を続ける人も居たり。
そんな中出会ったのが学者のミリリ。

ダンマーだけあって態度は居丈高だけど、かなり熱心な研究者らしい。
このシヴァリングアイルズの動植物に関する生態調査をしているんだそうな。
やってることもこの狂気の王国に居るとは思えない程のまともさだ。
「良かったら手伝おうか?」
わたしからそんな提案をする。
どのくらいこの世界に居ることになるのか分からないけど、生態学は知っておいて損は無い。
特に動植物は錬金術の素材になるものだし、怪物として相対することもある。
そんな時に物を言う知識になるはずだ。
「ふぅん。じゃぁこれを集めてきて。採取した場所も一緒に記録するのよ」
リストを見るとかなりの種類がある。
「分かったわ。ちょっと時間かかるかもしれないから気長に待っててね」
それだけ言うと集落を後にした。
この集落からニューシェオスはそれほど遠くないわね。
地図と見比べて目的地が近い事を知ると足取りも軽くなる。
辿り着いたニューシェオスは壮麗な街並みだった。
この首都はマニア側とディメンシャ側に別れ、更にシェオゴラスが居る宮殿の三区画に分かれている。
わたしが入ったのは城下町のマニア側になるんだけど、その街並みは帝都やスキングラードに劣らない。
「へぇ…思ったより凄いわねぇ」
まるでお上りさんみたいに街を見て回る。
そんな時、アルゴニアンの男に声を掛けられた。
「アンタ…持ってるな」
「え?」
「持ってるんだろ?フォークを…」
「フォーク?」
「隠してても分かる…分かるぞ…ビッグヘッドのフォークを持ってるんだろ!?」
そう言えばフォークと言えばあの野営地で拾ったヤツをまだ持ってたんだっけ。
アレの事かしら?
魔法が掛かってるからと持っていたんだけど、掛かってる魔法はかなり特殊なもので、持ち主のマジカを揮散させる…つまりマジカの回復を阻害する効能だった。
何だか意味が分からない効果だったから、それっきり忘れてたわ。
わたしは鞄からフォークを出して、ビッグヘッドを名乗るアルゴニアンに見せる。
「フォークってこれ?」
するとビッグヘッドは飛び上がって大喜びする。
「フォークだ!素敵な一日だ!目が見えない人は見えるようになって、歩けない人は歩けるようになる!フォーク万歳!!」
フォークのお礼にビッグヘッドの知識を分けてくれると言う。
どんな知識やら…あまり期待せずに聞いてみた。
「毒もポーションの一種と考えられる。どっちも瓶に入ってるけど効果は正反対だ。ポーションが歌う!ポーションが鳴り響く!!」
…実りはなさそうだ。
そんなやりとりをしていると日が傾いてきた。
観光もそこそこにわたしは宮殿に参内することにした。
果たしてシェオゴラスとはどんな人物なのか…狂気の王と呼ばれるほどだから、無茶な話になるかもしれない。
「誰かと思ったらお前か。驚いちゃうだろ!?」

開口一番そう言ってのけるシェオゴラス。威厳は微塵も感じられない。
「新参者か!我がゲートキーパーのことは残念だった。嬉しくてお前の内臓を引き裂いてその首を絞めたいくらいだ」
ただ挨拶は物騒だ。
「儂が狂気の皇帝だ。他のものの皇帝でもあるが、まぁそれはいい。お前なら既に分かっているだろう…そう願うことにしよう。さもなければ問題だな。お前の内臓で縄跳びでもしようか!」
一々物騒な物言いを言葉の端々に織り交ぜ話を一方的に進める。
「まぁそれはまたの機会に。お前はここまで到達した初めての者だ。よくやった!この宝石をやろう。お前の役に立つかもな。お前が死体になっても似合うはずだ」
そう言うと首飾りを一つ、わたしにくれた。
「それでわたしにご用とは?」
「お前が来るのを待っていたぞ。お前に似てる奴か、一時はお前以外の奴でも良かったんだが、とにかく王者が必要だ。そこで頼みがある。王国を救うのだ!乙女を助けるのだ!獣を殺すのだ!あるいはやるだけやって死ぬかもしれんが、お前の力を借りたい」
今一つ何をさせたいのか分からないが、何かの危機のようではある。
「変化がやってくる。全てが変わるぞ。デイドラの王達も例外ではない。彼らは特に変わるだろう」
「変化?」
「デイドラは変化の化身だ。変化と永遠…私にとってはどちらも同じようなものだ。未来のことはわからんがね。グレイマーチは来る。それを止めるのはお前だ」
「グレイマーチとは一体どんなものでしょうか?」
「細かい話は重要ではない…少なくとも今の所はな。永遠の期限も迫っているのだが、その話はまた今度にしよう」
「結局わたしは何をすれば?」
「今すべきことか?お前には重要なお使いを頼みたい。もちろん私のお使いは全て重要なのだがな。我が王国よ!我が統治よ!ゼディリアンに行ってもらおう。私はかつてその地で迷惑な客人どもを処分していた。アイルズでもお気に入りの場所だよ。そして何人かの客人は輪をかけて迷惑なのだ」
「ゼディリアン?」
わたしは何度も話の腰を折るが、それも仕方なかろう。何せ知らない単語ばかりで話が進むからまったく要点が分からない。
「厄介者どもを始末してくれるゲートキーパーが死んでしまった。我らもその損失を補填せねばなるまい…とにかく、他の方法で王国に入り込んでくる連中がいる。そいつらが動いているのだ。奴らは邪魔者だ。間違いない。そうかゼディリアンを復活させるんだな。手順はこの小冊子に書いてあるから持って行け。それとこいつも必要になる。狂気の音叉だ。もちろん詳しい話はいつでもハスキルに聞くが良い。奴は重箱の隅をつつくタイプだから心強いぞ。それに洒落者でもある。では行くが良い。わたしが変心…いや変身する前にな!」
そう言うとわたしに本と音叉を押し付ける。
取り敢えず分かったのは、シェオゴラスは多弁だ、と言う事くらいか。グレイマーチもゼディリアンもイマイチはっきりしない。
受け取った本を見て分かったのは、ゼディリアンがあの門番の代わりになるものらしい、と言う事くらいか。
一体何がどうなることやら。まったく予想もつかない旅になりそうだ。