村に帰ってサウル君に槍を買い与えたところで目が覚めた。
場所は…うん。ちゃんとスキングラードの宿だ。
でも時間は丁度日が落ちた頃。
まぁ宿に着いて眠りに落ちたのが昼頃だから仕方が無いか。
でも随分とこう、何と言うかはっきりとした夢だったわね。
こう言うのを明晰夢って言うのかしら?

時間も時間だし…今日は折角高級宿に泊まってるんだ。
美味しい物を食べて、お酒飲んでまた寝よう。
そう決めるとわたしは食堂に降りて行った。
「それじゃまた寝るとしますか」
わたしはほろ酔いのままベッドに潜り込む。
さっきの今でまた眠れるのか?と思ったけど、お酒のせいで瞼が重くなってくる。

「よし、気を取り直してロロンを探しに行こうぜ、先生」
サウルが先を急かす。
まぁ確かにゆっくりはしていられないだろう。谷の怪物に襲われでもしたら…小柄な種族のロロンではひとたまりも無いはずだ。
そう言えば、ロロンやボーノンの様な犬耳の人達はここではミグミィと呼ばれているらしい。
タムリエルでは聞いた事も見たことも無い種族ね。流石夢世界だわ。

それはともかく、わたし達は再び谷に踏み入る。
現地民のサウルが居てくれるので、ある程度道も教えてもらえる。
「ここから先が…ゴブリンの砦だ」
サウルの声に緊張が滲む。
その時だった。
「お待ちしていました」
砦の門のところで一人の少女。あの耳の長さ、尖り様から見て…わたしと同じボズマーだろうか?
エルサ 
その少女が恭しくわたしに頭を垂れる。
「円卓の騎士様が蘇ることは予言されていました」
円卓の騎士?わたしの事?
わたしが戸惑ってることに不安を覚えたのか、ボズマー少女はわたしをじっと見つめる。
「円卓の騎士って何?」
「…え?あ、済みません。まさか女の方とは思ってませんでしたので…」

何だか良く分からないけど、このエルサリアと名乗る少女(愛称はエルサらしい)は気を取り直して話を続ける。
「騎士様をお迎えにあがりました。では城を探しに参りましょう」
また意味の分からないことを言い始める。
「おいおい、こんなところに城なんてないぜ?あるのはゴブリンの砦だけさ」
サウルが口を挟む。
「それに城なんて探してる場合じゃないんだ。ロロンを探さないといけないし」
エルサは困惑する。
どうもわたしがその「円卓の騎士の生まれ変わり」として何か使命を帯びていて、それを果たす為にここに来たと思ってるようだ。
何だか皆思惑がそれぞれずれている様なので、一旦落ち着いて状況を整理した方が良いわね。

わたしは二人にそう提案して、立ち話を始める。
流石に村までまた戻って宿か何かで一服しながら、と言う余裕は無い。
「そう言う事情でしたか。騎士様もまだ全ての記憶を取り戻してらっしゃらなかったのですね」
取り敢えずエルサに現状を理解して貰う。
「それじゃ急がないと…時間が経つほどにロロンちゃんが怪物に襲われる可能性が高くなるし」
エルサには悪いけど、今は付き合ってられない。事が済んだらその時にまた話をすれば良い。
「では私も同行させて下さい。魔法の心得はありますし、少しはお力になれるかと思います」
エルサは騎士であるわたしに付き従うのが使命だと言って同行を願い出る。
まぁこんな状況だから、人手が多いに越したことは無い。

エルサも伴って三人でゴブリン砦の探索に向かう。
砦と言っても所詮はゴブリンが住み着いている廃屋みたいなものだ。ちょっとした櫓がある程度でそこら辺の原っぱとそう大差は無い。
ロロンの姿を求めて少しずつ奥へと探索を進めていく。
それにしても驚いたのは、あの二足歩行の齧歯目がゴブリンだと言う事だ。
シロディールのゴブリンともアカヴィリ地方のゴブリンとも全く違う。あんなふさふさなゴブリンが居るとは夢にも思わなかった。
…ってこれは夢だったか。

それにしても砦のかなり奥の方まで来たわね…。
その時だった。
「ロロン!」
サウルがそう言うなり走り出す。
その先には大勢のふさふさゴブリンが一人の犬耳少女を抱えていた。