シェイディンハルを出てブルーマに続く道を行く。
とは言ってもわたしは道中、山に分け入って薬草を摘むのであまりちゃんとした街道を通ることは無いんだけどね。
今は降霜の月。結構寒い。寒さの原因は季節だけじゃない。ブルーマが近い事も影響している。
ぽつりと額に水滴が落ちる。
「あ…降ってきた?」
何とも巡りあわせの悪い。雨が降り始めてきた。
やだなぁ。薬草摘みもそこそこに藪を分けて街道に戻ろうと急ぐけど、天気は待ってくれない。
結局雪交じりの雨に降られ、ずぶ濡れの泥まみれになってしまった。
そして巡りあわせの悪い時と言うのは往々に悪いことが重なるもので。
「お前は…ふむ、中々良いぞ。薄汚れたその姿はナミラ様に仕えるに相応しい」
一直線に街道を目指していたら、あろうことかナミラの祠に出くわしてしまった。
しかも泥まみれのわたしを気に入ってしまったらしく、司祭がわたしをご神体の前まで引きずって行く。
「光の子が我が祠に近寄るか。ならば我が加護を受けるに相応しいことを示してみよ」
問答無用でわたしの意識に語りかけるその存在はデイドラ王の一人ナミラその人。
「物乞い王子」の物語に出てくるあのデイドラ王だ。
あぁぁぁ…何でこうなるかなぁ。
わたしは無理やりヘンな術の刻印を与えられ、この近くにあるアイレイド遺跡へと出向くことになってしまった。
そこで危機に晒されているナミラの信者を助けろと言うけど…。
しかし何だろう、この術。
術の組成からして変性魔法みたいだけど、試し打ちしても何が起こる訳でも無い。
この術で何をどうすればナミラの信者を助けられると言うのか。
まぁ良いや。
雨宿りも兼ねてアイレイド遺跡に入るわたし。
中ではアーケイの神官が浮浪者達に教えを説いている。
この浮浪者がナミラの信者みたいね。
「やめろ!やめてくれぇ!」
「ひぃぃ…俺を見るなぁ」
松明を片手に暗がりに潜む浮浪者へ語りかける神官。
そしてそれに怯える浮浪者。
一体何をどうしろと?
わたしは術の刻印をどこに向ければ良いのか見当もつかなかったので、取り敢えず松明を持っているせいで一番目立ってるアーケイの神官に打ち込んでみた。
「なんだ!?」
すると急に松明の「光」が消えた。
わたし自身も発光術で明かりを取ってるので、いきなり真っ暗とはならなかったんだけど、アーケイ神官からはちょっと距離があるので、神官はいきなりの暗闇に動揺していた。
しかし面白い術ねぇ。
松明の「光」が消えたと言ったけど、実際に火は灯ったままなのよね。これが。
その火が辺りを照らすことが出来なくなっている。あんまり実用性は感じないけど面白い。
でも面白がってばかりもいられない。
急に暗くなったとたん、浮浪者がアーケイの神官に殴りかかる。
今まで怯えていたのが嘘のよう。
何が怖かったのかは分からないけど、今までの仕返しとばかりに神官に殺到して…ついにはその命の光まで消してしまった。
「え…?」
それを遠目で見ていたわたしはただ唖然とするばかり。
ナミラには信者を助けろと言われたけど…この結果がその「助け」なの?
遺跡の中ではあちこちからアーケイの教えを説く声が聞こえている…。
まさか神官を全員、こうしろと?
…どうしよう?
このまま続けるのはちょっと躊躇われるけど、途中で放り出したりしたら祟られたりしないかしら?
うーん…迷うことしばし。
ナミラの性質を考えるに祟られるとロクな事が無いのは火を見るより明らか。
わたしは薄らと吐き気を覚えながらも術の刻印を神官に向ける。
「アーケイ!お守りくだ…!」
「うわ!なにをする!」
神官の断末魔が響き、何時しか遺跡の中は暗闇が支配し、静寂だけが横たわる。
わたしは逃げるように遺跡を後にした。
雨は上がり空は晴れていたけど…わたしの心は土砂降りのまま。
「我が信徒を闇の下に戻してくれたか。これで忘れられし者達も惨めなまま過ごすことが出来よう」
ナミラはそう安堵すると「褒美だ」と指輪をわたしの指にはめる。
指輪そのものはデイドラ王の逸品と言うだけの品だけど…こんなことをしてまで欲しくは無かったよ。
わたしは足早にブルーマへと向かった。
とは言ってもわたしは道中、山に分け入って薬草を摘むのであまりちゃんとした街道を通ることは無いんだけどね。
今は降霜の月。結構寒い。寒さの原因は季節だけじゃない。ブルーマが近い事も影響している。
ぽつりと額に水滴が落ちる。
「あ…降ってきた?」
何とも巡りあわせの悪い。雨が降り始めてきた。
やだなぁ。薬草摘みもそこそこに藪を分けて街道に戻ろうと急ぐけど、天気は待ってくれない。
結局雪交じりの雨に降られ、ずぶ濡れの泥まみれになってしまった。
そして巡りあわせの悪い時と言うのは往々に悪いことが重なるもので。
「お前は…ふむ、中々良いぞ。薄汚れたその姿はナミラ様に仕えるに相応しい」
一直線に街道を目指していたら、あろうことかナミラの祠に出くわしてしまった。
しかも泥まみれのわたしを気に入ってしまったらしく、司祭がわたしをご神体の前まで引きずって行く。

「光の子が我が祠に近寄るか。ならば我が加護を受けるに相応しいことを示してみよ」
問答無用でわたしの意識に語りかけるその存在はデイドラ王の一人ナミラその人。
「物乞い王子」の物語に出てくるあのデイドラ王だ。
あぁぁぁ…何でこうなるかなぁ。
わたしは無理やりヘンな術の刻印を与えられ、この近くにあるアイレイド遺跡へと出向くことになってしまった。
そこで危機に晒されているナミラの信者を助けろと言うけど…。
しかし何だろう、この術。
術の組成からして変性魔法みたいだけど、試し打ちしても何が起こる訳でも無い。
この術で何をどうすればナミラの信者を助けられると言うのか。
まぁ良いや。
雨宿りも兼ねてアイレイド遺跡に入るわたし。
中ではアーケイの神官が浮浪者達に教えを説いている。
この浮浪者がナミラの信者みたいね。
「やめろ!やめてくれぇ!」
「ひぃぃ…俺を見るなぁ」
松明を片手に暗がりに潜む浮浪者へ語りかける神官。
そしてそれに怯える浮浪者。
一体何をどうしろと?
わたしは術の刻印をどこに向ければ良いのか見当もつかなかったので、取り敢えず松明を持っているせいで一番目立ってるアーケイの神官に打ち込んでみた。
「なんだ!?」
すると急に松明の「光」が消えた。
わたし自身も発光術で明かりを取ってるので、いきなり真っ暗とはならなかったんだけど、アーケイ神官からはちょっと距離があるので、神官はいきなりの暗闇に動揺していた。
しかし面白い術ねぇ。
松明の「光」が消えたと言ったけど、実際に火は灯ったままなのよね。これが。
その火が辺りを照らすことが出来なくなっている。あんまり実用性は感じないけど面白い。
でも面白がってばかりもいられない。
急に暗くなったとたん、浮浪者がアーケイの神官に殴りかかる。
今まで怯えていたのが嘘のよう。
何が怖かったのかは分からないけど、今までの仕返しとばかりに神官に殺到して…ついにはその命の光まで消してしまった。
「え…?」
それを遠目で見ていたわたしはただ唖然とするばかり。
ナミラには信者を助けろと言われたけど…この結果がその「助け」なの?
遺跡の中ではあちこちからアーケイの教えを説く声が聞こえている…。
まさか神官を全員、こうしろと?
…どうしよう?
このまま続けるのはちょっと躊躇われるけど、途中で放り出したりしたら祟られたりしないかしら?
うーん…迷うことしばし。
ナミラの性質を考えるに祟られるとロクな事が無いのは火を見るより明らか。
わたしは薄らと吐き気を覚えながらも術の刻印を神官に向ける。
「アーケイ!お守りくだ…!」
「うわ!なにをする!」
神官の断末魔が響き、何時しか遺跡の中は暗闇が支配し、静寂だけが横たわる。
わたしは逃げるように遺跡を後にした。
雨は上がり空は晴れていたけど…わたしの心は土砂降りのまま。
「我が信徒を闇の下に戻してくれたか。これで忘れられし者達も惨めなまま過ごすことが出来よう」
ナミラはそう安堵すると「褒美だ」と指輪をわたしの指にはめる。
指輪そのものはデイドラ王の逸品と言うだけの品だけど…こんなことをしてまで欲しくは無かったよ。
わたしは足早にブルーマへと向かった。