シェイディンハルに到着したのはお昼時だった。
思ったよりかかったわねぇ。
まさか宿場に泊まる度に厄介事に巻き込まれるとは思いもしなかった。
まぁそれも過去の事。
…お腹も空いたしまずはお昼を食べよう。

そう思って安宿のニューランド山荘の扉をくぐったところだった。
…レイナルドがいる。
いきなり見付けてしまうとは…。
本人の言葉を信じるなら目の前のこの人は他人の空似ってことになるんだけど、念の為。
「こんにちは」
まずは挨拶代りに挨拶。…と言うかただ無難に挨拶しただけか。
でも取り敢えず反応は無し。ここまではコロールで噂になってる通り。
「こんなところでどうしたの?レイナルド」
わたしがここまで言ったところで目の前のレイナルドもどきが鋭く反応する。
「あんた今…レイナルド、と言ったかい?」
わたしは頷く。
「何であんた、弟のことを知ってるんだ?」
「弟…?」

わたしはコロールでの事情をレイナルドもどきことギルバードに伝える。
「なってこった!まさか弟が生きているなんて!」
ギルバードからも話を聞くに、どうもレイナルドとは双子の兄弟でかつてはコロール近くの山小屋に住んでいたそうだ。
でもその山小屋が怪物に襲われ一家離散。ギルバードは父親と共に移住を強いられることになった。
で母親と弟のレイナルドはその時に怪物にやられたものだと思っていたんだそうな。

「こうしちゃいられない!早速弟に会いに行くとするか!」
ギルバードはそう言うやわたしの手を引いて走り出す。
「え?ちょっと?何でわたしの手を引っ張るの?」
「あんたも一緒に来てくれ。弟との再会を取り持ってくれたんだ。二人揃ってお礼が言いたいんだよ」
かくしてわたしはそのままシェイディンハルからコロールへ取って返すことになった。
…うぅ…お昼まだ食べてないのに。

しかしこのギルバード、かなりの猪突猛進だ。
お腹も空いたし、疲れたから途中で休もうと言ってもまったく聞いちゃくれない。
ただひたすらに一路コロールへと突き進む。
結局わたしは飲まず食わずで日付が変わる頃、ようやくコロールに辿り着いた。
…疲れた…お腹空いた…。
同行するのは別に構わないんだけど、もう少し女性に対する配慮が欲しかったよ…。

「で、レイナルドはどこに住んでるんだい?」
わたし達はコロールの表門を潜ったところ。
何時もなら安宿で酒盛りの真っ最中かな、と思い案内しようと思ったんだけど、その手間は省けた。
宿から引き揚げてきたレイナルドが正に千鳥足で目の前を歩いていたのだ。
慌ててレイナルドを呼び止める。
再会 
「レイナルド!お客さんよ」
「んぁ?きゃく…だって?」
赤ら顔でふらふらと振り向く。
感動の再会にしてはちょっとどうかな、と言う状況だけど、ギルバードは気にしていないようだった。

「俺、俺、俺だよ、俺」
まるで最近流行してる詐欺師の様にレイナルドに呼びかけるギルバード。
「んぉ?なんだ?おれが…いる?どうもきょうはほんきでのみすぎたみてぇだな…はやくかえってねよ」
酔ってるせいでとんちきな事を言い出すレイナルド。

………
……


結局泥酔したレイナルドに理解させるのに1時間かかった。
「まじかよ、まさかあにきがいきてるなんてなぁ!きょうはめでてぇ!のもうぜきょうだい!おぅ、あんたもいっしょにこいよ!」
上機嫌になったレイナルドはわたしの手を引いてまた安宿に引き返す。
本当に兄弟なのね。やることがまったく一緒だわ。
何はともあれ兄弟は無事再開。
わたしもやっとご飯とお酒にありつける。しかもお礼に奢ってくれると言う。
折角だから御馳走になるとしますか。
そしてコロールの夜は賑やかに更けていく…。