「まさか本当にゲートを閉じるとはな!」
喜色満面でわたしを出迎えるサヴリアンを初めとするクヴァッチ衛兵の面々。
「よし、今ならいけるぞ!お前も手を貸してくれ!」
ゲートが閉じた今こそ好機とクヴァッチ奪還に挑む。
結果がどうであれマーティンの安否は確認しないといけないので、わたしも同行することにする。

鬨の声を上げて正面から突入!
ゲートは閉じ、敵の増援はもう来ない。
士気の差は歴然としていた。
いくら不死のデイドラと言え、体を破壊すればその魂は剥離し、オブリビオンの次元に戻って新たな受肉の時を待たねばならない。
街の中に残っていたのが頭の回るドレモラだったら厳しい戦いになったかもしれない。
でも今残っているのはスキャンプやクランフィア…お世辞にも賢いとは言えないのばかりだ。
好き勝手に方々で暴れているのを1匹ずつ集団戦法で崩していく。

「よし、ここは制圧したな」
周囲を見回して敵の全滅を確認したサヴリアンはすぐそこに見える聖堂へと向かった。
中には何とか非難して籠城していた数人の衛兵と数多くの住人がいた。
サヴリアンはその立てこもっていた衛兵から状況を聞くと、住人を難民キャンプに避難させた。
わたしもマーティンを探したんだけど、よくよく思えば人相も分からないし、脱出の機会を得た住人が我先にと雪崩を打って外に走る中、人を探すのは無理があった。
取り敢えず今できることはマーティンの無事を祈ることくらいか。

「よし、次だ。このまま城を奪還するぞ!」
正直この先まで付き合う必要は無いんだけど…ここで降りるのも何となく後味が悪いわね。何かすっごい期待した眼差しでわたしのこと、見てるし…。
けど事はそうすんなりとは運ばなかった。
城門は固く鍵で閉ざされていて流石に突破は無理…ね。
でも何時までもこうしているわけにもいかない。どこかよじ登ったりできないかしら?そう思って周りを見ていたんだけど…。
「裏口から回り込んで鍵を開けてきてくれないか?」
あろうことかサヴリアンがわたしに向けて提案する。
裏口?何それどこにそんなのあるの?わたし全然道なんて知らないんだけど。
聖堂に後詰として残った衛兵が道を教えてくれるから、と何故かわたしに大役を押し付ける。
普通勝手知ったる衛兵の誰かが行った方が手っ取り早いと思うんだけどなぁ。

しぶしぶ聖堂まで戻ると残っていた衛兵に裏口と鍵の事を聞く。
「あぁ、確かにそっちから回れば何とかなりそうだな。鍵は俺が持っていくが…もし万一の事があったら頼むぞ」
縁起でもないことを言うものじゃないと思うんだけど…。
でもたった二人で城門の裏取りかぁ…そこはかとなく不安を感じた、その時だった。
「話は聞かせてもらった!」

巡回兵 


クヴァッチの衛兵とは違う重厚な黒塗りの鎧に身を包んだ3人組が…。
街道の巡回中に街から上がる煙を見て様子を見に来たと言う巡回兵達が加勢してくれると言う。
有難い話ね。頭数が多くて困ることは無い。
わたし達は聖堂の地下を経由して城の地下道を目指す。
…しかしまぁ危ういところだったわね。
聖堂の地下まで敵が忍び込んでいたのを見た時は肝を冷やしたわ。
もう少し遅かったら立て籠もってた人達もやられていたかもしれない。

それはともかく、巡回兵の助けもあって裏取りは成功!
城門を開くと雪崩れ込むサヴリアン以下クヴァッチ衛兵。
城の入り口を制圧して一気に城内へと踏み込む。
入ってすぐの謁見の間も勢いのまま押し切る!

「よし!ここだ!退路は我らが確保する。お前は伯爵の救出を頼む!」
は?今何と?わたしが救出に行くですって?
…この人案外他力本願なところあるわよね。普通、衛兵隊長の貴方がイの一番に乗り込むものじゃないのかしら?
それにわたし、伯爵の顔も知らないんだけど…。
まぁ流石にわたし一人で行けとまでは言うつもりは無いらしく、何人か衛兵も付いてきてはくれるけど…。
何か釈然としないまま謁見の間を踏み越えて、その裏にある居住エリアに突入する。

………
……


「そんな…我々は遅すぎたと言うのか」
居住区を隅々まで調べて、敵を掃討して帰っては来たんだけど…伯爵は既に落命の後だった。

クヴァッチ伯落つ 


せめても、と思いクヴァッチ印の入った指輪だけは持ち帰ったけど、それで伯爵の代わりになるわけも無く。
サヴリアンはがっくりと肩を落として落胆した。そしておもむろに鎧を脱ぐとわたしに寄越す。
「ここまで力を貸してくれて有難う。大した礼も出来んが…せめてこの鎧を貰ってくれ。戦いに疲れた私にはもう重過ぎるんだ」
渡された鎧は歴戦の傷が刻まれていたけど、衛兵隊長の鎧だけあって立派な造りをしている。
「あまりお力になれなかったようでご免なさいね」

わたしはそれだけ言い残すとクヴァッチを離れ、難民キャンプへと向かった。
本来の目的はこっちにある。
マーティンが無事生き残っててくれれば良いんだけど…。