修道院に辿り着いたのはもう日も沈んだ後だった。
「ご免下さい、ジョフリー師はいらっしゃいますか?」
修道僧に尋ねると2階の書斎に通してくれた。
書物を読みふけっていた初老の僧が顔を上げる。
この人か。
わたしはジョフリーに皇帝の死を告げると
預かった物を差し出す。
「何と…」
しばし驚愕していたが、アミュレットが本物であることが
分かると、わたしを見据える。
「事情を聞かせてくれないか。今すぐに、だ」
わたしは牢の地下であったことを順を追って伝える。
話を聞いたジョフリーはしばし黙考してから口を開く。
「お世継ぎのマーティン様を迎えに行ってくれないか?」
何とわたしに後継者を保護してここまで連れて来いと言う。
正直これ以上関わりたくなかったわたしは、何とか断ろうと
したのだけど…。
「我らブレイズが表だって動けば敵に察知されるやもしれん。だが
お前なら気取られること無くことを運べるはずだ。これは国の一大事なのだぞ?」
そう言われると断りにくい…。
しかも自由に使ってくれ、とあれこれ物を都合した上に馬まで用立ててくれた。
…正直気は乗らないけど…明確に断る理由も見付からない…。
わたしは観念して引き受けることにした。
もうこれっきりだと心の中では思っていたけど…嫌な予感しかしない。
きっと状況に流されてこのままずるずると関わり続けることになりそう…。
何でこうなるかなぁ…心の中で溜息を一つ。
今日はもう遅かったのでコロールで一泊してクヴァッチに行こう、そう思い宿を取った。そして翌日。
晴天。絶好の旅日和が恨めしい。わたしの心には重く暗雲が垂れ込めてると言うのに。
そしてその暗雲を更に厚くすることが起こった。
「助けてくれ!」
血相を変えたブレトンの老人がわたしに縋り付く。
「え?え?」
狼狽するわたしに構わず勝手に話を進める老人。
何でもコロール郊外で農家をやってるそうなんだけど、その畑に化け物が度々押し寄せてくるらしい。
衛兵に助けを乞うても相手にしてもらえず、進退窮まった老人の息子二人が化け物退治を計画していると言う。
けどその息子達は別に戦いに慣れてる訳でも無く、余りに無謀な計画。
そこでわたしに白羽の矢を立てて助太刀を、と言うのだけど…こっちもやることがあるのだと
言っても聞いてくれない。
しかも「頼む!助けてくれ!」と大声で喚いてわたしに縋り付く…。
ふと気付いて周りを見ると野次馬が寄ってきて何事かと人だかりが出来てる。
居心地が悪くなったわたしはつい引き受けてしまった…。
はぁ…もう何でこうなるかな…。
わたしが引き受けると老人は安心したのか、騒ぎは収まったけど
「うぅ…酒でも飲まねば落ち着かん」
とか言って朝から酒盛りを始める始末…子供が心配なら聖堂でお祈りでもしなさいよね…。
かくしていらん揉め事に関わることになってしまったわたし。
一体マーティンを迎えに行けるのは何時の事になるやら。
「ご免下さい、ジョフリー師はいらっしゃいますか?」
修道僧に尋ねると2階の書斎に通してくれた。
書物を読みふけっていた初老の僧が顔を上げる。
この人か。

わたしはジョフリーに皇帝の死を告げると
預かった物を差し出す。
「何と…」
しばし驚愕していたが、アミュレットが本物であることが
分かると、わたしを見据える。
「事情を聞かせてくれないか。今すぐに、だ」
わたしは牢の地下であったことを順を追って伝える。
話を聞いたジョフリーはしばし黙考してから口を開く。
「お世継ぎのマーティン様を迎えに行ってくれないか?」
何とわたしに後継者を保護してここまで連れて来いと言う。
正直これ以上関わりたくなかったわたしは、何とか断ろうと
したのだけど…。
「我らブレイズが表だって動けば敵に察知されるやもしれん。だが
お前なら気取られること無くことを運べるはずだ。これは国の一大事なのだぞ?」
そう言われると断りにくい…。
しかも自由に使ってくれ、とあれこれ物を都合した上に馬まで用立ててくれた。
…正直気は乗らないけど…明確に断る理由も見付からない…。
わたしは観念して引き受けることにした。
もうこれっきりだと心の中では思っていたけど…嫌な予感しかしない。
きっと状況に流されてこのままずるずると関わり続けることになりそう…。
何でこうなるかなぁ…心の中で溜息を一つ。
今日はもう遅かったのでコロールで一泊してクヴァッチに行こう、そう思い宿を取った。そして翌日。
晴天。絶好の旅日和が恨めしい。わたしの心には重く暗雲が垂れ込めてると言うのに。
そしてその暗雲を更に厚くすることが起こった。
「助けてくれ!」
血相を変えたブレトンの老人がわたしに縋り付く。
「え?え?」
狼狽するわたしに構わず勝手に話を進める老人。
何でもコロール郊外で農家をやってるそうなんだけど、その畑に化け物が度々押し寄せてくるらしい。
衛兵に助けを乞うても相手にしてもらえず、進退窮まった老人の息子二人が化け物退治を計画していると言う。
けどその息子達は別に戦いに慣れてる訳でも無く、余りに無謀な計画。
そこでわたしに白羽の矢を立てて助太刀を、と言うのだけど…こっちもやることがあるのだと
言っても聞いてくれない。
しかも「頼む!助けてくれ!」と大声で喚いてわたしに縋り付く…。
ふと気付いて周りを見ると野次馬が寄ってきて何事かと人だかりが出来てる。
居心地が悪くなったわたしはつい引き受けてしまった…。
はぁ…もう何でこうなるかな…。
わたしが引き受けると老人は安心したのか、騒ぎは収まったけど
「うぅ…酒でも飲まねば落ち着かん」
とか言って朝から酒盛りを始める始末…子供が心配なら聖堂でお祈りでもしなさいよね…。
かくしていらん揉め事に関わることになってしまったわたし。
一体マーティンを迎えに行けるのは何時の事になるやら。