23日(木)、夕食の時間にまたNHKのトリセツショーを見た。

前回は「血糖値」で、今回は「コレステロール」だった。

どんな新しい情報を取り上げるのかな?と思いながら見ていたら、sd-LDLコレステロールのことだった。

 

 

公式サイトではちゃんとsd-LDL-Cと書いてあるけど、番組内では「小型化したLDLコレステロール」とだけ言っていたような。

 

昨夜は、NHKのニュースのあと、Eテレのチョイスでコレステロールをやっていたので少しだけ見てみた。そしたら、こっちでもやっぱりsd-LDL-Cのことをやっていた。

 

 

斯波さん、今は大阪医科歯科大なんだね。

 

さらには、こんなネット記事もあった。

 

 

だんだん、LDL-C悪玉説からsd-LDL-C超悪玉説が一般に浸透してきたようだ。

大体、「悪玉」とか「善玉」とか、安易にこんな呼び方をするから、話がややこしくなるんだよねぇ。しかも、「コレステロールが悪い」みたいな表現が誤解を生むんだと思う。本来はコレステロールを運んでいる粒子の違いに問題があるということ、粒子にはHDLやLDLなどがあるということ、これを理解する必要がある。

 

粒子が運んでいる積み荷(コレステロール)の量を調べれば、大体は粒子の数も分かるということで、通常の血液検査ではLDL-CとHDL-Cを測定している。

 

ところが、実際には大きなダンプで運んでいたり、小さな軽トラで運んでいたりする。同じLDL-Cの数値でも、大きなダンプ数台で運んでいるのか、たくさんの小さな軽トラで運んでいるのかは区別がつかない。

そして、どうやらたくさんの小さな軽トラで運ぶことが、動脈硬化の大きな原因になっていることが分かってきたわけだ。

大きなダンプ=大きくてフワフワしたLDL粒子、小さな軽トラ=小型化したLDL粒子=sd-LDL。このsd-LDLが運ぶコレステロールのことを、「超悪玉コレステロール」と呼ぶようになってきた。

 

でも、このsd-LDLコレステロール値は、一般の血液検査の項目には含まれていない。直接測定することは、まだ保険適用されていないからだ。

 

では、どうすればsd-LDLコレステロールが多いか少ないかを判断できるのか?

 

リンク先の番組・記事で強調していたのは、中性脂肪値に気をつけろ!ということ。

これまで、LDL-C値は少しでも基準値を上回ると医師から注意を受ける一方で、中性脂肪値は基準値を超えていてもそれほど強くは注意されなかったと思う。さすがに4桁になると急性膵炎の危険性があるから注意されるけど、300 mg/dLくらいでは「食べすぎに気をつけて」くらいの注意だったと思う。

しかし、中性脂肪が基準値オーバーだと、sd-LDLが多く存在している可能性が高いのだ。

 

トリセツショーでは詳しい説明はしていなかったが、チョイスとプレジデントオンラインの記事では、non-HDLの数値をチェックしろと言っている。

non-HDLは、総コレステロールからHDLコレステロールの値を引いたもの。

ただ、わたしは糖尿病内科で8週間ごとに検査を受けているが、総コレステロールの項目はない。

この場合は、LDLコレステロール+中性脂肪/5で計算できる。

わたしの直近の検査結果(朝食1時間半後)だと、LDL-Cは101 mg/dL、中性脂肪は87 mg/dLだったので、101 + 87/5 = 118.4 mg/dLとなる。

 

non-HDLの基準値は150 mg/dL未満。

チョイスによれば、170 mg/dLで要注意、180 mg/dL以上だとsd-LDLが多いと考えられる。

 

トリセツショーでは、ドランクドラゴンの塚地と、阿佐ヶ谷姉妹の妹の検査結果が紹介されていた。

阿佐ヶ谷姉妹の方は、LDL-C 117で問題なし、HDL-C 38と低値、中性脂肪 52は基準値内のかなり低めだった。

HDL-Cが基準値外だったのが意外。なんであんなに低いんだろう? 解説していた医師は、「全体的にどれも低めなので、そういう体質なのでしょう」みたいなことを言っていたけど、そういうものなんだろうか?

 

塚地の方は、LDL-C 143とちょいオーバー、HDL-C 41とギリOK、そして中性脂肪が377とオーバーしていた。

non-HDLを計算してみると、143+377/5=218.4 mg/dL。

これはsd-LDLが多そうだ…

でも、今までの健診では、LDL-Cの数値がちょっと高い程度なので、それほど強くは指導されなかったと思う。中性脂肪が377と高くても、「お酒の飲み過ぎや脂っこい物、飽和脂肪の多いものは控えて」くらいだっただろう。

今後の健診では、中性脂肪についても厳しく指導されるようになるんだろうな。

 

トリセツショーでは、中性脂肪を下げるための食品を紹介していた。

またサバ缶か!?と身構えていたら、今回はアマニ油だった。

サバ缶は一気にブームになって、スーパーで品薄になったりしたけど、さすがにアマニ油がスーパーの棚からなくなることはないかな?

 

LDLが小型化する原因として、トリセツショーでもチョイスでも、中性脂肪が高いだけでなく、

・すでに心筋梗塞を起こしている人

・血糖値が高い人

・血圧が高い人

・肥満(内臓脂肪が多い)人

これらに当てはまる人はsdLDLが多いと説明していた。

 

これさ〜…

血糖値が高いとか血圧が高いというのは、最後の肥満も含めて、いわゆるメタボの人のことだと思うんだよねぇ。

インスリン抵抗性があると、sd-LDLが多くなると報告されている。

もし、単に血糖値が高いことがsd-LDLを増やす要因となるのなら、いくら中性脂肪が低くてもわたしはsd-LDLが多い可能性があるということになる。だとしたら、sd-LDLを直接測定する必要がありそうだ。

いずれ、検査が保険適用されるかな?

 

sd-LDLについては、何度か過去記事にしている。

たとえば、これ。

 

 

この記事で紹介した図を再掲しておく。

 

 

LDL-C値(左から2つめのグラフ)は基準値内の人を、3群に分けた。

1 中性脂肪もHDL-Cも基準値内(白いバー)

2 中性脂肪が高い、またはHDL-Cが低い(薄いグレーのバー)

3 中性脂肪が高く、かつHDL-Cが低い(濃いグレーのバー)

 

すると、LDL粒子のサイズ(一番左のグラフ)は、濃いグレーの群では小さくなっていた。実際、sd-LDLコレステロール(左から3つめのグラフ)は、濃いグレーの群でかなり増えていて、大きくてフワフワしたLDL(一番右のグラフ)はかなり減少していた。

注目すべきは、中性脂肪が高いか、またはHDL-Cが低い群(薄いグレーの群)でも、有意にsd-LDLが増加していることだ。

 

まあ、sd-LDLがどれくらい増加していればヤバいのか、その基準がまだよく分からないから、これくらいの差で動脈硬化に対する影響がどこまで違ってくるのか分からないんだけども。

 

 

チョイスでは、最後に家族性高コレステロール血症の人の例を紹介していた。

スタチンではなかなかLDL-Cが下がらないため、新しく開発された治療薬を利用しているとのことだった。

一人は、2016年に承認された、エボロクマブという自己注射薬(商品名レパーサ)。

もう一人は、2023年9月に承認された、インクリシランナトリウムという注射薬(商品名レクビオ)。

どちらも標的はPCSK9 (Proprotein convertase subtilisin kexin 9)で、エボロクマブはPCSK9に対する抗体、インクリシランナトリウムはPCSK9のmRNAに対するsiRNA。

 

なんか、すごいよなーと思う。

培養細胞でのRNA干渉技術が開発されたのをすごいなーと思っていたのに、それが治療薬にまで進化したんだもんなぁ…

培養細胞にsiRNAを振りかけて取り込ませるのはまだ簡単そうだけど、人体に注射して、目的の臓器・組織の細胞に取り込ませて作用させるなんてねぇ…

 

一人の人は、以前はLDL-C 370 mg/dLだったのが、注射薬を使うようになって37 mg/dLまで下がったので、これで安心できると喜んでいた。

いや〜、劇的に下がるもんだねぇ。

 

LDL-Cの下限はあるのか、めちゃくちゃ低くても問題ないのか、これがよく分からないんだよね。前にも書いたけど、先天的にLDL-Cが極端に低い人がいるのだけど、少なくとも大きな問題なく成人までは成長できるようなのだ。

 

 

一方、HDL-Cの場合は高い方がいいわけだけど、これだって高ければ高いほどいいわけではない。

CETP遺伝子に変異があるとHDL-Cが100 mg/dL以上になる。

アルコールを多飲しているとCETP活性が低下するため、HDL-Cが高くなる。

この場合、HDL粒子がきちんと機能していないので、いくらHDL-Cが高くても喜べない。

 

また、疫学調査からも、HDL-Cが低くても高くても死亡率が高くなると報告されている。一番死亡率が低いのは、

男性 73.53 mg/dL
女性 92.88 mg/dL

 

 

こういうことも、少しずつ一般のテレビ番組やネット記事で伝えられるようになるのかな。

 

わたしはLDL-Cが上昇してくるお年頃だから、いつ基準値をオーバーして、医師から「糖尿病もあることだし、スタチンを使いましょう」と言われるかとヒヤヒヤしている。ネット記事では、閉経後の女性は少しばかりLDL-Cが高くても問題ないという情報も目にするけど、きっと糖尿病内科の医師は「それは他にリスク因子がない人の話。あなたは糖尿病があるから、120 mg/dLを超えたら要注意」と言うんだろうな。

糖尿病があっても、肥満じゃなく中性脂肪が十分低く、HDL-Cが十分高い場合は、LDL-Cが少々高くても大丈夫であるという研究報告がどこかから出ないかな。

欧米人の場合、2型糖尿病=肥満だから、欧米からの報告はアテにできない。

やっぱり、日本か中国、韓国といった東アジアで研究が必要だ。

でも、そんな研究は手間と費用がかかるだけだし、それよりはスタチンを処方した方が簡単なんだよなぁ…

 

 

5年後には、また新しい知見が出てきてるのかな。

そのころには、LDL-C=悪玉とは言われなくなってたりして。

さすがに5年じゃ無理かな?