昨年11月、低血糖で救急搬送された。

 

もちろん、わたしのことではない。大叔父のことだ。

ゴーフルを食べながら聞かされたいろんな話の中に、救急搬送されたときの話も含まれていた。

 

大叔父自身は意識障害を起こしていたので、救急搬送されたときの記憶がない。

したがって、そのときのことは大叔父の嫁さんである大叔母から聞いた。

大叔母も気が動転していただろうから、おそらく記憶違いなどがあるだろう。

それを踏まえた上で、聞いた通りのことを書いてみたい。

 

* * * * *

 

昨年11月初めの夜中のことだ。

大叔父と大叔母が寝ていたところ、大叔父が急に声を出し、手をばたつかせた。

大叔母は怖くなって、屋敷の離れたところに住んでいる長男夫婦のところに行き、長男を呼んできた。

二人でしばらく大叔父の様子を見ていると、数時間後(?)には落ち着いて、また静かに寝息を立て始めた。

まあ大丈夫だろう、ということで長男は戻り、大叔母もまた少し寝て、いつもと同じ時間に大叔父より先に起きた。

 

いつもなら大叔父が起きてくる時間になっても起きてこない。

心配になって見に行くと、まだ寝ているようだ。声をかけて起こそうとしたが、起きる気配がない。

また慌てて長男を呼んできた。

目を覚まさないが、呼吸はしている。亡くなってしまったわけではなさそうだ。

そこで、救急車を呼んだ。

 

この次の点が大叔母の話では曖昧だ。

わたしが聞き取った限りでは、救急隊に対し、どうやら家族の方から「大叔父は糖尿病でインスリンを使っていること」だから「低血糖ではないだろうか」と伝えたようだ。

すると、すぐに救急隊はブドウ糖の点滴を始めた。

点滴が半分ほどすんだころに、大叔父は目を開けた。

その後、総合病院に搬送され、10日間入院した。

 

退院時に渡された用紙を見せてもらうと、疾患名(?)入院目的(?)だったか、そのような項目のところに「低血糖」と表記されていた。

 

大叔父は「わし、低血糖で意識障害を起こしたんや。この間もな、便所に行こうと思うて立ち上がったらクラクラ〜となってな、思い切り腕を壁にぶつけて大きいに擦りむいたんや。痛かったわ」と、低血糖症状がしょっちゅう出ているようなことを話し、「低血糖は怖い」と言った。

 

うーん… 大叔父が低血糖に?

たしかに、大叔父はインスリン治療を始めた。

このブログでも書いたことがある。それによると、2019年の春ごろからのようだ。

HbA1cが常時10%を超えるようになり、とうとう90歳になってからのインスリンだった。

とは言え、1日1回の持効型インスリン。超速効型ではない。

(お薬手帳を見せてもらったらトレシーバだった)

 

認知機能はまだまだばっちりな大叔父は、毎日自分で打っていた。几帳面な性格なので、インスリン単位数を間違ったり、打ったことを忘れてまた打ったりのミスをする可能性は低かったように思う。(もちろん、絶対ではない)

 

あれだけ嫌がっていたインスリンだけど、インスリン治療を始めるとHbA1cが10%から7%台後半までスルスルと下がったことに気をよくして、「インスリンを使えば何でも食える!もう節制せんでもいい!」と勘違いし、またHbA1cが9%近くまで上がった大叔父。

まあ、2型糖尿病患者アルアルだw

 

「医者に怒られた〜」と言う大叔父の話を聞きながら、わたしは(大叔父はもう90歳の超高齢者だし、医師はHbA1cは7%台後半を目標にしてインスリン単位数を調整してるんだな)と感じた。

ひどい高血糖状態が続くのも怖いが、インスリン治療による低血糖の方がもっと怖い。特に超高齢者の場合、それが簡単に命取りになる。

 

気になったのは、血糖自己測定をしていなかったこと。

本来であれば、インスリン治療をしている患者は、SMBGによる血糖自己測定をするべきだ。

しかし、超高齢者の場合、手技を教えるのも大変だ。

大叔父はインスリン注射は自分でできるものの、血糖測定までおこなうのは負担が大きかっただろう。かと言って、同居の長男夫婦にも頼みづらい。

医師もその辺の事情を分かった上で、低血糖を起こさない程度にインスリンの単位数を決めていたのだと思う。

 

という背景があったので、大叔父が低血糖で救急搬送されたという話は、にわかには信じがたかった。

なので、大叔母に「救急隊員は大叔父の血糖値を測定していたか?」と聞くと、「いや、血糖値なんか測定してなかった。こっちが『低血糖や』言うたら、すぐブドウ糖の点滴をした」と言う。

 

うーん、本当だろうか?

血糖値を測定せずに、いきなりブドウ糖点滴をするものなんだろうか?

意識障害の原因は、もしかしたら低血糖以外かもしれないのに?

大叔母が気づかなかっただけで、救急隊は血糖値を測定し、本当に低血糖を起こしていると確認したのだろうか? だとしたら、そのときの血糖値はいくらだったのだろう?

 

今となっては分からない。

そして、大叔父が言うには、入院中はただベッドにいるだけで、脳の検査などは全くなかったらしい。

 

これは、やっぱり低血糖が原因だという確信があったからか?

それとも、超高齢者だし、すでに意識ははっきり戻っているし、積極的な原因究明の必要はないと判断されたからなのか?

 

わたしも、超高齢者に積極的な原因究明は必要ないとは思うものの、「本当に低血糖による昏睡だったのかな?」という疑問は残った。ブドウ糖点滴の結果、意識が戻ったという現象だけを見ると、低血糖だった可能性はある。けれど、たまたまのタイミングだった可能性もあるだろう。

 

退院するときに、この総合病院から最近独立して開業した糖尿病内科医のクリニックを紹介され、退院後はそのクリニックに通っているとのこと。

インスリン製剤は、以前のトレシーバからノボラピッド30ミックス注に変更されていた。これは超速効型と中間型が3:7の割合で混合されている。これを以前と同じように朝食前に1回打っているらしい。

夜中に低血糖を起こしたことから、医師は持効型のトレシーバよりもインスリン作用時間が短いタイプを選択した、ということだろうか。

 

そして、今のクリニックではSMBGのキットを貸し出してもらい、早朝空腹時に血糖値を測定しているようだ。これは長男が担当していて、大叔父は数値の管理だけをしているようだ。見せてもらうと、高い日は200オーバー、低い日でも150以上だった。

 

血糖値を測定しているものの、大叔父も長男も、どのくらいの血糖値ならいいのかはよく分かっていないようだ。医師が詳しく説明していないのか、説明してくれたけど理解できなかったのかは不明。

 

早朝空腹時で200オーバーというのはかなり高いけど、まあ、これくらいなら夜間に低血糖にはならないだろう。

 

退院後、年末にクリニックで受けた血液検査を見せてもらうと、HbA1cは7.7%だった。

 

うーん、本当に低血糖を起こしていたのか、やっぱり疑問だなぁ…

 

わたしは医師でも何でもないので、話の途中で、以前使っていた薬のことや過去の血液検査の結果などを尋ねはしたものの、基本的には大叔父や大叔母の話をうんうん、それは大変やったなと聞いていた。

 

大叔父は几帳面なので、今までクリニックで受けた血液検査の結果を、日付順に整理して綴じていた。ページがいっぱいになったお薬手帳や糖尿病連携手帳も保管していた。

なので、過去の経緯がよく分かった。

大叔母や、一緒にいたわたしの母親は「そんなん置いとっても邪魔になるだけやから、せいぜい1年分くらい残して、あとは捨ててしもたらええのに」と言っていた。

 

実際のところ、クリニックから帰宅するとすぐにゴミ箱にポイっとする患者が多いんだろうな。保管していたとしても、二度と見ることはないだろう。←うちの両親のことだw

 

ところがどっこい! 残しておいた方がいいこともあるんだよ。

滅多にそんなことはないとは思うけどね。

 

続く。