水を飲むといいらしい その2 の続きである。
肥満の予防は「水を飲むといい」と言う科学的理由
という記事が興味深かったのだが、イマイチ分からなかったので、「コロラド大学」「バソプレッシン」などをキーワードに論文を検索してみた。
Vasopressin mediates fructose-induced metabolic syndrome by activating the V1b receptor(ここ)
JCI Insight. 2021 Jan 11; 6(1): e140848. doi: 10.1172/jci.insight.140848
どうやら「水分を脂肪として貯蔵する」というのは、脂肪の代謝水のことを指すようだ。
東洋経済の記事にもあるように、ラクダはコブに脂肪を蓄えていて、砂漠のような過酷な環境下では、脂肪を分解することで体内で水を得ているらしい。
あ〜
電子伝達系の最後でH2Oができるから、そのことか?
うぅ… 生化学は苦手なんだよ…(注:生化学「も」が正しい)
脂肪酸のひとつであるパルミチン酸を例に、考えてみよう。
β酸化でアセチルCoAを作る反応は、
パルミチン酸 + ATP
→ パルミトイルCoA + AMP
パルミトイルCoA+7NAD++7FAD+7CoA+7H20
→ 8アセチルCoA+7NADH+7FADH2
アセチルCoAからクエン酸回路と電子伝達系でATPが作られる反応は、
アセチルCoA+ 2H2O
→ 3NADH + FADH2 + GTP
NADH + H +1/2O2 → 3ATP + H2O
FADH2 + 1/2O2 → 2ATP + H2O
以上をまとめると、
パルミチン酸 → 8(3NADH + FADH2 + GTP - 2H2O) + 7NADH + 7FADH2 - 7H2O - 2ATP
= 24NADH + 8FADH2 + 8GTP - 16H2O + 7NADH + 7FADH2 - 7H2O - 2ATP
= 31NADH + 15FADH2 + 8GTP - 23H2O -2ATP
= 31(3ATP + H2O) + 15(2ATP + H2O) + 8ATP - 23H2O - 2ATP
= 93ATP + 31H2O + 30ATP + 15H2O + 6ATP - 23H2O
= 129ATP + 23H2O
つまり、1個のパルミチン酸から129個のATPと23個の水が得られる。
…ほんまか?
合っているかどうかの自信は全くない(汗)
間違いを見つけた人、指摘してください!
ネットで脂肪の代謝水を調べると、こんな情報が見つかった。
代謝水とは、それぞれの栄養素が体内で燃焼される時にできる水のこと。
代謝水は栄養素によってできる量が違います。
1gあたりの代謝水は
糖質×0.56ml
脂質×1.07ml
タンパク質×0.41ml
わたしの計算はともかく、脂質を代謝する過程で水ができるということだねw
しかも、同じ重さだと、糖質やたんぱく質に比べて脂質は水が倍くらいできるようだ。
脂肪を蓄積すれば、同時に水を蓄積することになるということは理解した。
けど、そもそもの疑問は「水を脂肪として蓄える」という東洋経済の記事の記載だ。
「脂肪を蓄えたら、同時に水も蓄えることになる」なら納得できるんだけど、「水を脂肪として蓄える」って、脂肪を蓄えるにはその分のエネルギー源が必要だと思うんだけど、どういうことなんだろう?
ということで、論文に戻る。
砂糖の摂取、特に清涼飲料水からの摂取が、メタボリックシンドロームの発症と関連していることが知られている。特に、砂糖の成分であるフルクトースが主な原因であり、フルクトースは体内の代謝をエネルギー産生からエネルギー貯蔵に移行させることによって、メタボ発症を誘導することが示唆されている。
高グルコース摂取もメタボを引き起こすが、それは肝臓のポリオール経路を介してグルコースがフルクトースに変換されることによって起こることも明らかにされているらしい。
そういう背景から、マウスに0〜30%の濃度のフルクトース溶液を30週にわたって与えた。
縦軸はコペプチン濃度、横軸はフルクトース溶液の濃度。
すると、フルクトースの濃度が高くなるにつれて、血中のコペプチン濃度が高くなっていた。
コペプチンとは、バソプレッシンが前駆体の形から成熟バソプレッシンになるときに切り出されるペプチドのこと。
前駆体インスリンからインスリンが作られるときに切り出されるCペプチドのようなものだ。コペプチンの方が測定しやすいために、バソプレッシンの代わりに測定されることが多いようだ。
コペプチン濃度が高くなっているということは、バソプレッシン濃度が高くなっていることを示す。
実際、論文ではマウスの視床下部ではバソプレッシンのmRNAが増加していて、下垂体ではバソプレッシンが増加していることも確認している。
つまり、フルクトース投与によってバソプレッシン遺伝子の発現が誘導され、その結果、バソプレッシン濃度が高くなることが分かった。
6.5%の濃度のフルクトース溶液を与えたマウスでさえ、すでに血中コペプチン濃度が有意に上昇していた。論文によると、これは平均的な清涼飲料水に含まれるフルクトースの割合に匹敵するらしい。
つまり、ヒトが市販のジュースを飲み続けていると、同じようにバソプレッシンの分泌が誘導される可能性があるわけだ。
フルクトース溶液を30週にわたって与えると、当然ながら体重が増加する。
10%フルクトース溶液を与えて5週間ごとに測定した、体重とコペプチン濃度(G)、体脂肪率とコペプチン濃度(H)には相関がみられた。
このように、どうやらフルクトース投与〜体重(体脂肪)増加〜バソプレッシン増加に関連があることが示された。
続く。